城東
「申し訳ない」
その言葉を、何度も口にした。
共同キャプテンの一人、SH井颯太郎選手。
「継続ができず、ペナルティがかさんでしまった。自分のゲームメイクも良くなくて、チームにしんどい思いをさせてしまいました。もっと引っ張れたと思います」
唇を噛んだ。

相手から強いプレッシャーを受けることは想定していた。そのための準備も、重ねてきた。
だが、筑紫の現役生にとっては初めての花園。初舞台に懸ける想いが、プレーとして前面に表れていた。
「自分たちのプレーを出せなかった。相手に制圧されたと感じます」
昨年、同じ舞台で長崎北陽台に突きつけられたコンタクトの差。その課題を克服しようと、1年間鍛錬を重ねてきた。自信を胸に再び花園へ戻ってきたが、今回もコンタクトエリアで筑紫に屈した。

それでも、1トライ。気持ちのこもった一撃だった。
グラウンディングしたHO近藤壮一郎共同キャプテンは言う。
「ずっとフォワードで負けとったんで、フォワードで一本取ったろう、と思っていました。俺らで流れを引き寄せたかった」
井キャプテンも、その場面をこう振り返る。
「自分たちが持っているアタックをしっかり出せたトライでした。筑紫さんのような強いチーム相手でも、自分たちの形を出せば通用する。だから後輩たちには、来年もっと自分たちの形を詰めてほしいです」
信じ、貫いた城東のラグビーは、間違いではなかった。


9大会連続となった全国高校ラグビー大会出場。3年生にとっては、3度目の花園だった。
「前日練習では、不安な選手は一人もいませんでした。みんな『俺がやったろ!』という気持ちだったと思います」
そう振り返った、HO近藤キャプテン。
「チームは本当にまとまっていました。ウォーミングアップでも、筑紫より大きな声を出そうと、一体になることができた」
試合前、仲間にはこんな言葉をかけたという。
「俺たちは、筑紫よりもキツい練習をしてきた。自信をもってプレーすれば、良いことが起きる。だから、自信をもっていこう」
肌寒さを増した第1グラウンドに、定番となった『We are 城東!』の掛け声が響いていた。

◇
「申し訳ない」
その言葉の意味を井キャプテンに問うと、目に涙を浮かべた。
「3年生は、本当に成長してくれました。最初は『大丈夫かな』と思う時期もあったけど、必死についてきてくれて、ここまで来てくれた」
今大会、メンバー入りできなかった3年生もいた。
数年前までは、25人の登録どころか、スターティングフィフティーンを揃えることすら難しかった城東。他部を引退した生徒や、兼務してくれる生徒を募りながら、全国大会に立っていた。
それが今年は、ジャージーを着られない3年生が出るまでになった。徳島で、城東でラグビーをしたいと願う選手が、それだけ増えた証だ。
「先輩たちが『城東は良いラグビーをする』と広めてくれて、プレーで発揮してくれて、いろんなところから来てくれるようになって。3年生がメンバーに入れないほどになった。それだけチームが大きくなったということ。だからこそ、そんな3年生たちに結果で恩返ししないと顔が立たないと思ってやってきました。申し訳ないです」
3年生15人。2年生13人。1年生12人。マネージャー4人。
総勢44人で挑んだ、第105回全国高校ラグビーフットボール大会。
この経験を胸に、城東はまた歩き出す。来年、このチームはどんな姿へと変わっていくのだろうか。

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