「堂薗がいなくなったらどうする?」の想定。「ああ、こういう試合になるよな」桐蔭学園、サヨナラトライで決勝へ。「取られても追いついてくれる仲間がいた」大阪桐蔭、涙の逆転負け|第105回全国高等学校ラグビーフットボール大会

試合概要

第105回全国高等学校ラグビーフットボール大会 準決勝

【対戦カード】
大阪桐蔭高等学校 21-24 桐蔭学園高等学校

【日時】
2026年1月5日(月)14:30キックオフ

【場所】
花園第1グラウンド

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試合内容

先制したのは神奈川の桐蔭学園だった。14番・鈴木豪選手が右端に飛び込み、グラウンディング。5点を先取する。

「気抜くな、花園だぞ」

得点直後、桐蔭学園陣から響いたその声が、この試合が一筋縄ではいかぬことを予感させた。

前半19分、桐蔭学園は追加点を狙ってペナルティゴールを選択するも失敗。流れを完全には引き寄せきれない。それでも前半終盤、トライゾーン前のフォワード戦で3番・喜瑛人選手が押し込み、再びスコアを動かす。

0-10。桐蔭学園がリードして前半を折り返した。

後半は、大阪桐蔭のトライで幕を開ける。

スクラムからのサインプレー。一発で仕留めたのは14番・モレノ経廉ザンダー選手だった。

さらに後半17分、ラインアウトから4番・冨永竜希選手が押し込み、15番・吉川大惺選手のコンバージョンゴールも成功。

14-10。大阪桐蔭がこの日初めてリードを奪った。

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しかし、試合はまだ揺れ動く。

その5分後、桐蔭学園はトライライン前で粘り強くフォワード戦を重ね、再び3番・喜選手が押し込む。スコアは14-17。

後半26分。桐蔭学園のノックフォワードから大阪桐蔭がスクラムチャンスを得ると、12番・須田琥珀選手が鋭く切り込み、右端で15番・吉川選手が仕留めた。

コンバージョンゴールを蹴る直前、キックティからボールが落ちるアクシデントもあったが、急遽ドロップキックで対応したFB吉川選手が、角度のある位置から見事にポールの間へ通してみせる。

21-17。大阪桐蔭が再び前に出た。

迎えた最後のキックオフ。桐蔭学園の蹴り上げたボールは10メートルに届かず、大阪桐蔭ボールでセンタースクラムとなる。

大阪桐蔭はフェーズを重ね、時間を使う選択をした。

だが、ここで痛恨のノックフォワード。グラウンド中央、桐蔭学園にスクラム再開のチャンスが訪れる。

そこから重ねたフェーズは13。

大阪桐蔭陣10メートル付近で一度は大阪桐蔭がボールを確保するが、すぐに桐蔭学園が奪い返す。


一度はボールを確保した大阪桐蔭


だが桐蔭学園3番・喜選手が体を入れ込み再ターンオーバー


桐蔭学園はそのまま攻撃を続けた

フェーズはさらに重なり、20フェーズ目。

わずかな隙を見逃さなかったのは、またしても桐蔭学園3番・喜選手だった。トライゾーンへ飛び込めば、笛が鳴る。

21-24。

桐蔭学園が、激闘を制した。

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大阪桐蔭

ノーサイドの笛が鳴ると、真っ先に整列した。

相手のゲーム主将と握手を交わしてから、表彰式へ。

口を一文字に結び、顎を少し上げ、気張った表情で大阪桐蔭の主将としての務めを果たした。

応援席への挨拶を終え、綾部正史監督と手を合わせたあと、グラウンドをしばらく見つめる。

そして、深く、長いお辞儀をした。

大阪桐蔭高校主将、手崎颯志。

高校1年生のときから、花園ラグビー場の舞台に立ち続けてきた。

「3年間、出させて頂きました。最後はキャプテンとして。やっぱりグラウンドにも『ありがとう』と、深く感謝しました」

後半26分。逆転トライを決め、21-17。大阪桐蔭は4点のリードを奪った。

だが、そこからは防戦一方だった。

自陣に釘付けにされ、桐蔭学園の執念の攻撃を受け続けたが「しんどくても、立ち続けてくれる仲間がおる」。

手崎キャプテンは、仲間を信じた。

「常に仲間が横にいるんで、心配は特になかったですね」

苦しい状況でも、楽しさを失わず、仲間とともにディフェンスに全力で向き合った。

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大阪桐蔭と桐蔭学園。

歴史を振り返っても、両校の戦いは常に拮抗している。準決勝での対戦と聞いて思い起こされるのは、第97回大会の64フェーズであろう。

12-7と大阪桐蔭がリードして迎えたラストワンプレー。桐蔭学園は執念の64フェーズに及ぶ攻撃を仕掛けた。結果的にそのアタックが実を結ぶことはなかったが、最後の笛が鳴るまで分からないその時の記憶に、今年の60分間も色濃く重なった。

この日実際にグラウンドに立った手崎キャプテンは、この伝統の“桐蔭対決”を終え、迷いなくこう表現した。

「楽しかったです」

「取って、取られて。取られても追いついてくれる仲間がいて。負けていても、走り続けてくれる仲間がいて。常に声を出してくれる仲間がいて。そういうところが、ラグビーの良さで、楽しさだなと思います」

ひとりでは、ラグビーはできないことを知るキャプテン。

仲間の大切さを、誰よりも理解しているキャプテン。

ラグビーという競技の醍醐味を、全身で味わってきたキャプテン。

そのすべての務めを果たし、グラウンドを後にしようとした、その瞬間。

手崎選手は、大粒の涙を嗚咽とともにこぼした。

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