2026年1月11日。
第62回全国大学ラグビーフットボール選手権大会決勝で明治大学と対戦した早稲田大学は、10対22で敗れた。
決勝戦。足りなかったもの
「選手たちが本来持っているアグレッシブさを出させてあげられなかったことは、僕の責任だと強く思います」
試合後の記者会見でのこと。早稲田大学の大田尾竜彦監督は、自らの責任を口にした。
決勝戦の相手は、1ヵ月前に行われた対抗戦で黒星を喫した明治大学。
序盤からコンタクトエリアで主導権を握られ、早稲田は思うように流れを掴めなかった。

「想定していた」苦しい展開、それでも
大田尾監督は、ビハインドを背負う展開自体は「想定内だった」と語る。
追い上げる時間帯が来ることも、ミーティングでは共有していた。しかし実際の決勝のピッチ上では、その想定を上回る圧力が。
「明治さんのコンタクトの圧力が、想定よりやっぱり来ていた。その中で、どうしても“攻め急ぎ”が出てしまった」
後半、点差を詰めにいく中で生まれた細かなミス。肌で感じたプレッシャーが、選手たちの判断をわずかに狂わせた結果だった。

この試合で早稲田が選択したのは、キックを多用してエリアを取る戦い方だった。
敵陣でのセットプレーを増やし、我慢強く試合を進める。それが、事前に描いていた青写真だった。
「ボールを手放してでも、エリアを取って、敵陣で戦い続ける。その意図自体はミスではなかった」
そう振り返ったのは、CTB野中健吾キャプテン。敵陣に入ってからもキックを選択した場面については「エリアを重視した判断」と説明した。

ただ、その戦術は同時に別の難しさも生む。
「ボールを持つ時間が短くなったことで、前半は少し受け身になってしまった部分がありました」
キックとボール保持のバランスの難しさ。そう大田尾監督は分析した。
マイボールラインアウトの数自体は想定よりも多かった。しかし、それを獲得した位置は、攻めたいと設定していた場所よりも深い場所だった。
その“わずかなズレ”が、アグレッシブさを削いでいった。

「我慢する」と決めていた。それでも
明治のディフェンスについては事前から警戒していた。
「簡単にはいかない」「我慢すべきところを我慢しよう」
それが、チーム内で共有していた共通認識だった。
それでも実際に対峙すれば、我慢が効かなくなる瞬間はある。
「我慢しきれず球際のミスなどが出てしまったのはマイナス面だったと思います。明治さんのプレッシャーを感じながら、自分たちのミスもあったという印象です」(野中キャプテン)
準備していたメンタルと、フィールドで感じた現実。その差が、少しずつプレーに影を落とした。

数的不利でも、崩れなかったもの
前半、イエローカードによって数的不利になる時間帯があった。だがこの場面について野中キャプテンは「全く問題なかった」と言う。
「それも想定していましたし、14人でどう繋がるかはチームで統一できていました。焦りはなかったです」
準備が機能した場面も、確かにある。だからこそ、敗戦の悔しさはより大きい。

「胸を張って」
大田尾監督は言う。
「負けはしましたが、野中キャプテンを中心に4年生がチームに素晴らしいものを残してくれた。彼らに本当に感謝しています」
野中キャプテンも返す。
「前半のアグレッシブさで明治さんに上回られていた。それを引き出せなかった自分のリーダーシップ不足を、チームのみんなに申し訳なく思います。ただ、ここまで全員で成長したチームを作り上げられたことには胸を張って終わりたいです」

2年連続、決勝戦で味わった重圧と悔しさを来年へ、後輩たちへと繋げていくために。
「この経験は、無駄じゃない。2年連続でこの悔しさを味わっているチームは他にない。必ず、次に繋がると思います」と野中キャプテンは言葉をのこした。
敗北を受け止め、言葉にし、次世代へと渡す。
早稲田大学が、新たな出発点を迎えた。

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