兄の背中を追い、初めてのキャプテンマークを腕に巻いた。
東京農業大学第二高校の矢嶋蓮音主将は、群馬の地でチームを率いる覚悟を静かに育ててきた。埼玉出身。進学の決め手は、同校OBである兄の存在だった。
「同じ環境でラグビーをしてみたかった」。だから群馬でラグビーをすることを選んだ。

自身初めての主将生活が始まったばかり。「探り探りで、みんなに支えてもらいながら」だというが、それでも試合が苦しい局面に入るほど、矢嶋キャプテンの輪郭ははっきりとする。
トライを許した直後、トライゾーンに仲間を集める。膝をつく仲間の背を叩き、両腕で引き寄せれば、長い言葉はいらない。
「もう一回、始めよう」
端的で的確な指示が、ばらつきかけた視線を一つに束ねる。
ハドルを解く時には「粘るよ、粘る」と声をかけ、プレー中に自らがミスをすれば「ごめん」と言うこともできる。その姿は、長年キャプテンを務めているようでもあった。

憧れの存在は、クボタスピアーズ船橋・東京ベイの江良颯。映像を繰り返し見ては「同じような人になりたい」と自分に言い聞かせる。困難な状況でも周囲を見渡し、最短距離の言葉でまとめ上げる。その在り方を、矢嶋キャプテンはピッチで体現しようとしている。
プレーでも背中を見せる。ボールを持てば、複数人を弾いて前進する力強さがある。だが彼の魅力は、フィジカルだけではない。「ラグビーはもう、生活そのものですね。ラグビー、大好きなんで。今はラグビーをするために生きています」。続けて「楽しい」と笑った。
その純度の高い言葉は、仲間への鼓舞や粘り強いボールキャリーと同じ温度で、周囲に伝播する。
この日は國學院栃木を相手に完封負けを喫した。悔しくないわけがない。強豪相手に得点できなかったこの60分間は、次の一歩の燃料だ。
「もう一度、全国の強い相手と戦って、今度は勝ち切りたい」。
ラグビーを人生の一部として楽しみ尽くす主将が、再スタートの笛を鳴らす。
