笑顔と憧れと挑戦と。北洋建設 presents Nanairo CUP 北九州『KYUSHU WOMEN’S SEVENS 2026』大会、はじまる

女子ラグビーの未来を見据えた挑戦が、福岡県北九州市で幕を開けた。

「北洋建設 presents Nanairo CUP 北九州『KYUSHU WOMEN’S SEVENS 2026』」(以下、ナナイロカップ)が3月20日(金・祝)、ミクニワールドスタジアム北九州で開幕。セブンズならではのスピード感あふれる攻防が繰り広げられるなか、この大会が持つ“競技の枠を超えた存在意義”が随所に感じられる1日となった。

ナナイロカップが掲げる最大の目的は、女子選手の試合機会を創出することにある。

日本の女子ラグビー界は、競技人口や試合数の面でまだ十分な環境が整っているとは言い難い。そうした現状のなかで本大会は、トップレベルの選手たちが真剣勝負を重ねる舞台であると同時に、未来を担う世代にとっての“目標となる場所”として機能している。

実際に大会では、中学生が各チームに帯同してリエゾンの役割を担い、中学生によるエキシビションマッチも行われた。ボールパーソンを務めたのは、福岡レディースに所属する中学3年生たち。笑顔で、そして常に礼節を重んじ、大会運営に携わった。

憧れの選手と同じスタジアムに立つ経験は、単なる思い出では終わらないことだろう。競技を続けたいという意欲を生み出し、やがて次の世代を育てる循環へとつながっていく。その意味でナナイロカップは、目の前の勝敗だけでなく、“未来のラグビー界”を見据えた大会でもあるのだ。

大会を共催する一般社団法人Nanairo labのCEO・村上秀孝氏は、女子ラグビーの普及を「20年後への投資」と表現する。

女子選手や女性ファンが増えることで、将来的には子どもたちにラグビーを勧める存在も増えていく。こうした長期的な視点から、競技人口の拡大というラグビー界全体の課題に向き合おうとしている。

さらにナナイロカップは、国際交流の拠点としての可能性も秘める。すでに海外チームから来年の参加打診が寄せられるなど、アジアのトップ選手が集う大会へと発展していくことも期待されている。将来的には、この大会が女子ラグビーの国際的ネットワークを生み出す起点となる可能性もあるだろう。

また特徴的なのは、「観る大会」から「参加する大会」へという発想だ。ラグビーの精神を体現する社会貢献活動や地域文化との融合など、スポーツイベントの新たなあり方を提示している点も、この大会の大きな価値と言える。競技そのものの魅力を伝えるだけでなく、ラグビーが社会や地域とどのようにつながっていけるのかを示す場。こうした多角的な取り組みの積み重ねが、女子ラグビーという競技の存在感を少しずつ押し広げていく。

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大会1日目は、競技の熱量とともに、この大会が持つ意義や可能性を強く印象づける幕開けとなった。そして迎える大会2日目は、“参加する大会”というナナイロカップの価値が、さらに色濃く表れる1日となりそうだ。

会場ではラグビーの精神「ワン・フォー・オール」を体現する社会貢献企画として、献血活動が実施される予定だ。観客自身が競技の理念に触れ、行動を通じて大会に関わることができるこの取り組みは、大きな特徴の一つでもある。「お酒を飲む前に献血」という呼びかけのもと、試合観戦と社会貢献を同時に実現できる特別な機会となる。

さらに北九州という“アニメの街”の特色を生かし、本格的なコスプレイベントも開催予定。バックスタンド側には多くのコスプレイヤーが集まり、セブンズならではのフェスティバルのような空気がスタジアムを包み込む見込みである。ラグビー観戦とポップカルチャーが融合することで、これまでスタジアムに足を運んだことのない層にとっても、新たな入口が生まれる。

勝敗を懸けた戦いはもちろん、ラグビー文化を広げる仕掛けが詰まった大会2日目。

ナナイロカップが描くのは、優勝争いだけではない。競技の未来を、どのように育てていくのか。その問いに対する一つの答えが、福岡の地で示される。

大会1日目結果

予選プールA

1位:ながとブルーエンジェルス

2位:早稲田大学ラグビー蹴球部 女子部

3位:Ratana Wāhine Rugby (ニュージーランド)

予選プールB

1位:自衛隊体育学校 PTS

2位:日本経済大学女子ラグビー部 AMATERUS

3位:神戸ファストジャイロ

予選プールC

1位:ナナイロ プリズム福岡 

2位:YOKOHAMA TKM

3位:追手門学院大学女子ラグビー部 VENUS

予選プールD

1位:女子SDS/シニアアカデミー

2位:アザレア・セブン

3位:アジアンバーバリアンズ (オールスター)

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日本一での初凱旋

スタンドには、「美」「典」と書かれたうちわが並んでいた。

YOKOHAMA TKMの谷山美典選手は福岡県出身。大学進学を機に地元を離れたが、2月に第12回全国女子ラグビーフットボール選手権大会を制して日本一に輝き、今大会が初めての凱旋出場となった。

「家族や友だちが見に来てくれるなか、地元でプレーできることを素直に嬉しく思います。15人制で日本一になってから迎える初めての大きな大会でもありますし、自分自身もチームとしても、チャレンジの気持ちで臨んでいます」と語った。

大会初日はプールCを2位で通過。最終日に向け「太陽生命カップにつながる良いチャレンジができるよう、しっかり頑張りたい」と前を見据えた。


ヘッドキャップは谷山4兄弟お揃いのもの。埼玉パナソニックワイルドナイツでプレーしている弟・隼大から贈られたものだという

かつてプレーした場で、手にした笛

福岡県女子中学1年生が2チームに分かれ対戦したエキシビションマッチ。この試合のレフリーを担当したのは、早稲田佐賀高校2年の柴田心美さん。かつては自身も、このエキシビションマッチに出場する”プレイヤー側”だった経験を有する。

中学生時代は、福岡県の春日リリーズチームで3年間ラグビーに打ち込んだ柴田さん。高校でも当初は選手として入部したが、しかし男子部員を中心とするチームにおいて女子選手は柴田さん1人。試合に出る機会はなく、男子部員に混じって練習を続ける日々に次第に限界を感じるようになる。

1年生の夏、プレイヤーとしての道を一度手放す決断をした。

それでも、ラグビーへの想いは消えなかった。チームに残り、マネージャーとして関わり続ける決断をする。そんななか訪れた転機が、C級レフリー資格の取得だった。2025年6月、同級生からの誘いと監督の後押しを受け、笛を手にした。

「グラウンドの見え方が、めちゃくちゃ変わりました」

選手時代には、逆サイドで独走トライが生まれれば見送ることもあった。しかしレフリーは常に展開を追い続けなければならない。集中力と運動量は想像以上だった。さらに、反則の理由を選手に説明する責任も伴う。「コミュニケーションの難しさはまだ感じています」と率直に語るが、その表情には充実感もにじむ。

レフリーとしてのデビューは昨夏の菅平。そこからわずか半年で大きな大会の笛を任されるまでに成長した。中学生時代にエキシビションマッチで自身が選手としてプレーした思い出深い大会に「違う立場で戻ってこられてうれしい」と笑顔を見せた。

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現在の目標は、高校3年生の夏にB級レフリー資格試験を受験すること。そして早稲田大学への進学だ。

一方で、「もうちょっと選手をしたいという気持ちもある」と本音も明かす。女子チームの環境が整いつつある今、早稲田大学進学後はレフリーと選手の“二刀流”という可能性も視野に入れている。

「まだ女子ラグビーは発展途中だと思います。レフリーとして活動しながら、競技をもっと盛り上げていきたいです」

笑顔で、凛と、今日もグラウンドに立った。

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