春の現在地。関東7校、それぞれの“選抜への道”

第27回全国高等学校選抜ラグビーフットボール大会が開幕した。

全国9地区から32チームが集い、春の王者を決める戦いが始まる。

その9地区のひとつ、関東から出場権をつかんだのは6チーム。さらに開催権枠として川越東と、実行委員会推薦枠として熊谷が加わり、計8チームが今大会に挑む。

彼らはどのような歩みで、この舞台へとたどり着いたのか。関東新人大会で見せた戦いぶりを振り返る。

優勝・桐蔭学園(國學院栃木との両校優勝)

ボールを持ち、前へ出る。

春の桐蔭学園らしい、シンプル且つ実直なラグビーで関東新人の頂点に立った。

無理に詰め込まず、できるプレーだけで60分を組み立てる。その戦いぶりを見た藤原秀之監督は言う。

「まだチームの強みは全然ありません。ここからです。強くなってほしいですね」

61期の主将を務めるのはフランカーの堺史道選手。フィールドでは鬼気迫るタックルを見せる一方、グラウンドを離れれば柔らかな笑顔が印象的だ。

「話すことはまだ得意ではないのですが、藤原先生から『花園までに話せるようになればいい』と言っていただきました」

一つ目の大会を終え、肩の力が抜けたかと思いきや、堺キャプテンは首を振る。

「逆です(笑)キャプテンとして足りない部分や課題が、むしろ増えました。自分の理想のキャプテン像を深めて、それに近づけるよう、練習からしっかり取り組んでいきたいです」と口にした。

花園4連覇を目指す、大きな重圧を背負うことになる主将。まずは全国選抜2連覇へ。

「体の大きい相手にも低く当たり、当たり負けしないことを意識したい」とチャレンジに向かった。

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優勝・國學院栃木(桐蔭学園との両校優勝)

「この時期としては、関東新人大会の3試合とも褒めるべきナイスゲームでした」

吉岡肇監督は、選手たちの成長を喜んだ。

迫る早稲田実業を突き放し、2年ぶりの優勝をつかんだ國學院栃木。絶対的エースだった福田恒秀道選手の卒業後、その役割を担う存在として躍動したのが、1年生の15番・白谷怜大選手だった。

何度もボールを持ってディフェンスを切り裂き、ゲインラインを押し上げた。

「ラインブレイクが何度かできて、ほっとしています」と口にした。

とりわけバックスは昨季から大幅にメンバーが入れ替わり、全国大会経験の少ない選手が多い。だからこそ白谷選手は言う。

「先輩方が当たり前にできていたことが、まだできていない。まずは基礎から、一つひとつ丁寧に積み上げていきたいです」

関東新人王者として臨む全国選抜大会。「次はラインブレイクをトライに結びつけたい」と誓った。

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3位・流経大柏

桐蔭学園との決勝戦。ラインアウト起点のワイドアタックでトライを奪ったものの、10トライを許し大差で敗れた。

「現時点で40点ほどの実力差はある。その差をどう埋めるのかを探っていきたい」と、相亮太監督は冷静に現状を見つめた。

新チーム発足後、十分な準備ができないまま臨んだ大会だった。だからこそ、関東新人大会を通じて「何を目指すチームなのか」を選手とともに模索したかったという。

初戦の日川戦は6点差の辛勝。

「いろんなものが重なった、そういう時期ではあったのですが、でもみんな日川が伝統校だってことを忘れちゃってたんじゃないかな。1人ひとりがすごく強かったし、うちはそこでふんわり入っちゃったんです。ハーフタイムでの一言目が『日川が伝統校だってことを知ってるか』でした。『これが伝統校のタックルで、アタックだよ』って。やっぱり、知らなきゃいけないですよね」と大きな学びを得た、春の初めだった。

今年は3番・小川聡真選手と、12番・佐藤晴太選手のダブルキャプテン制を敷く。

ゲームキャプテンを務めたCTB佐藤キャプテンは語る。

「聡真は話を進めるのが上手いので、そこは任せています。自分は試合の中でチームを引っ張りたい」

今年のスローガンは『前進』。

「一人ひとりが前に出て、確実にキャッチし、当たり勝ち、走り勝つ。1歩ずつ試合を勝っていきます」

敗戦もまた、次の一歩になる。

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3位・早稲田実業

強烈な存在感を放ったのは、ナンバーエイトの金子昂生選手。スクラムからのエイタンでは、会場がどよめいた。

だが國學院栃木に12-29で敗れると、金子選手は淡々と言う。

「チームが勝たなければ意味がありません」

このスクラムからの持ち出しは、試合前にハーフ団と細かく確認していたプレーだった。

「この状況なら行こう、と話し合っていました。練習してきたことが出せたのは良かったです」

金子選手がラグビーを始めたのは4歳のころ。多摩R&Bジュニアラグビークラブで楕円球に触れたが、その後野球に転向した。早稲田実業中等部には、硬式野球部に入るつもりで進学した。

だが「フランカーの塩野(世志生)君から『一緒にやろうよ』って熱血に勧誘を受けて」ラグビーへの復帰を決める。

年度が変わる3月いっぱいまでは、1、2年生だけで戦わなければならない高校ラグビー。早稲田実業のメンバー表には、25番まで揃わないことも多い。

それでも勝ち獲った関東3位の座。

15人対15人の練習ができない中でも、13対13を作ったり、12対12だったり。「人数をなんとか合わせながら」練習を工夫する日々だ。

「本当にコーチ陣の指導のおかげです。少数精鋭の中でも、しっかりと成長させてくれるこの環境がやっぱり早実一番の魅力。人数が少なくても勝てる理由なんじゃないかな、と思います」と感謝した。

早稲田実業が掲げる今年のテーマは「強豪校を倒すこと」。

「少数精鋭でも強豪を倒せるんだ、と示して、他校にも勇気を与えたい」と言った金子選手。

東京都新人大会で初優勝を果たした今年。「僕たちが歴史を作りました。だからこれをスタンダードにしていきます」
力強く、パイオニアになると誓った。
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5位・茗溪学園

山梨学院との順位決定戦。勝者が全国選抜大会への切符を手にする運命の一戦だった。

「選抜を意識しすぎず、目の前の試合に集中しよう」と挑んだ茗溪学園。

その言葉どおり、前半からエリアとポゼッションを支配。モールと連続フェーズで12点を先行し、守っては前半を無失点。圧巻のゲーム運びだった。

後半もディフェンスは崩れない。接点で前に出てからボールを動かし、相手の前進を許さない。50:22から流れをつかみ、連続トライで突き放した。

実は直前の練習試合では敗れていた相手。だから「こんなにうまくいくとは思っていませんでした」と、10番で主将の山本啓人選手は安堵の表情を見せる。

「接点でも前に出られていたし、みんなが気持ちを出して戦えたところが大きい」と手応えを口にした。

山本キャプテンは埼玉県出身。浦和ラグビースクールで学び、茗溪学園へと入学した。学業成績も非常に優秀で、成績はなんとオール5。芥川俊英監督は「 すごく穏やかな子なので、ナチュラルにチームをまとめてくれています。率先してキャプテンシーがあるか、というとそうではなくて。本当に『優しくチームを見守ってくれるキャプテン』という感じです」と形容する。

「今年はポテンシャルがすごくあるチーム。なので全国選抜大会でなんとかベスト8以上を目指したい」と口にした芥川監督。いざ、チャレンジへ。

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5位・目黒学院

ラインアウトにスクラム。セットピースから一発でトライを取り切る強さを見せれば、ディフェンスでプレッシャーをかけカウンターラックからも仕留めた目黒学院。

新チームになり「ディフェンスしかやってこなかった」と話したのは竹内圭介監督。「いまの時点でハンドリングエラーをしてしまうのはしかたがない。ボールを使って練習していないので」と笑った。
川越東と対戦した順位決定戦では、ディフェンスからリズムを作った。試合終盤には「自分たちでパスをしないで取り切ろうとチャレンジしていた」と評価する。
高校日本代表のキャプテンにも任命されたロケティ・ブルースネオル選手が卒業し、大きな攻撃の核を失うことになったが「誰かに頼る、誰かに任せる、みたいなこともなく、いい形でチームができている」という。
今年はなんと、トリプルキャプテン制を採用。フッカー、スタンドオフ、センターと三羽烏でチームをまとめる1年が、スタートした。
共同キャプテン 13番・伊藤琉真選手
ディフェンスが目黒のベース。ディフェンスでしっかり自分たちの流れを作れば「そこからアタックもついてくる」という話をチームにはしています。ペナルティが重なってしまったり、技術や体力面での課題だったりもまだありますが、今日はそこを全員が意識し続けられたと思います。
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7位・川越東

「負けに来たわけじゃないだろ?」

目黒学院にトライを奪われた直後のハドルで、PR竹山暖和キャプテンが声を張り上げた。

フォワードでモールを起点に流れをつくり、外へ展開する。そんなプランだったが、ミスが重なり前進できない。

全国選抜大会出場を懸けた戦いは、降雪による日程変更の影響も受けた。試合が1週延び、その間に2年生は修学旅行へ。十分な準備ができないまま、終盤戦のキーゲームを迎えた。

「言い訳はしたくないですが、今週は1日しか練習できませんでした」

それでも竹山キャプテンは前を向く。

「強豪校と戦う前のマインドでも、コンタクトでも、今日は負けていたと感じました。まずは弱気にならないこと。全国選抜では1勝でもできるよう修正していきたいです」

未来への宿題を手にした。

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