ラグビータウン熊谷、新章幕開け

2020年、リスタートの年

ーー熊谷市では、ワールドカップ後に「ラグビータウン推進課」が誕生しました。スポーツを包括的に担当する「スポーツ観光課」がある中で、ラグビーだけが独立した背景を教えてください。

鯨井「長年目標と位置付けていたワールドカップが終わり、いよいよ次はラグビーを文化として根付かせようと考える中で、ラグビーに特化したセクションができた。熊谷市にとってあくまで自然な流れでした。パナソニック ワイルドナイツが熊谷に移転することもあり、ラグビータウンとしてもう一度リスタートしよう、という意志を込めています。」

ーーリスタートする上での課題はありますか。

鯨井「熊谷という土地柄、圧倒的に車社会なんですね。熊谷ラグビー場は最寄り駅から3.5km離れていることもあり、車でラグビー場までお越しになる観客の方が多い。そうすると周辺道路が大渋滞してしまって、観客どころか選手が乗ったバスすら動かない、ということがこれまでにありました。

ただワールドカップでそんなことを起こすわけにはいかないぞ、ということで、ワールドカップ時にはもてうる限りの資源をかけて対策を講じました。おかげで渋滞が発生することなく選手は難なく移動でき、観客も駅(もしくはファンゾーン)からノンストップでストレスなくバス移動できた。ただし、トップリーグでは同じような対策を講じることは出来ません。ワールドカップで大成功した輸送交通が、同時に今後の大きな課題だと捉えています。」

ーー世界大会用の輸送交通を知ってしまったからこそ、やればできるじゃないか、トップリーグでも同じようにやってくれ、という声も多そうです。

鯨井「確かにそういう声もありますが、ない袖は振れません。ワールドカップの時の輸送方法が理想という前提の下、現実に沿った最適な観客輸送を、埼玉県ラグビーフットボール協会やパナソニック ワイルドナイツと協力して作り上げていきたいと思います。できないことを嘆くのではなく、熊谷らしく出来ることを生み出す。例えばラグビー場周辺での飲食出店やイベントなど、輸送以外の部分でラグビータウンらしい価値提供をしていければと考えています。」

世界に誇るスタジアムとチームがある。ラグビーが自然と会話に出てくる街にしたい。(鯨井)

ーーワールドカップ後に行われたパナソニックv東芝では、トップリーグにおける熊谷ラグビー場の最多入場者数(22,705人)を更新しました。ラグビーが熊谷に根付いた感覚はありますか?

山﨑「2020年のトップリーグは、根付きというよりもワールドカップの余熱、という印象を受けましたね。でも先日、市民の方から『俺はラグビーが好きなんだよ、ラグビーがなくて寂しいんだよ。頑張ってくださいね!』ってお電話を頂いたんです。役所人生40年で初めて『頑張ってください』と言われました。ラグビーロスになっている市民の方は多くいるので、根付く兆しを感じています。」

木川「熊谷ラグビー場での根付き、という観点で言えば、ラグビーロードを歩いて帰宅する方が急増しました。これはワールドカップ時の施策でもあるんですけど、ラグビー場から熊谷駅まで平坦で一直線な3.5kmのラグビーロードを、バスを50分待つのではなく50分歩いて帰ってもらおうと。

そのために、歩きやすい仕掛けを散りばめたんですね。スクマム!クマガヤのマップを配ったり、話のきっかけになるカラーコーンを設置したり。トップリーグではパナソニックと協力して、歩いてくださった方への特典(日本代表メンバーのポストカード)を配ったんです。その結果、熊谷ラグビー場に行ったら、帰りは歩いて駅まで帰るという熊谷独自のルーティンを根付かせることができたと思います。」

パナソニック ワイルドナイツには、市民のヒーローになって欲しい。(木川)

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