日本ラグビー界のレベルアップを、ともに。Honda HEAT×PEARLS

同じ競技をしていても、カテゴリーが異なればなかなか相見えないのがラグビー。

そんなラグビー界において、ある新しい取り組みが14日、三重県で行われた。Honda HEATによるMie Women’s Rugby Football Club PEARLS、通称PEARLSへのコーチングだ。

 

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今回の出稽古は、女子ラグビーの切実な競技環境から生まれた。

新型コロナウイルスの影響で、女子セブンズの主力大会である太陽生命カップが中止に。今シーズン残された大会は、冬に開催予定の15人制全国女子選手権のみとなった。普段セブンズをメインに練習しているPEARLSの選手たちにとっては、強化の方向性が異なる事態。さあ、どうしようか。

そこで白羽の矢が立ったのが、同じ三重県に本拠地を構えるHonda HEAT。15人制の達人に、指導を乞うことにした。

(画像提供:Honda HEAT)

練習は、「基本的なスキルを15人制のレベルにアジャストする」ことを目標に、およそ1時間半に渡って行われた。

ハンドリングスキル(パス、走るなどの基本的な動作練習)に始まり、スペースにボールを運ぶアタックスキル、タックルなどのディフェンススキルに、ブレイクダウンとよばれる接点・ラック周辺スキルの練習。そして最後にポジション毎に分かれたユニット練習、と、一通り「正しいトレーニングの仕方」をHonda HEATのコーチ陣が指導した。

セブンズと15人制では、ブレイクダウンの激しさはもちろん、人数の掛け方やサポートのスピードが異なる。そこでHonda HEATの選手たちが練習台となり、PEARLSの選手たちは感覚を習得する。

こんなに良い練習台はない。

実はこの日、Honda HEATの練習はオフ。リカバリーデーに自ら協力を申し出てくれた選手・コーチ陣は、こう話す。「日本ラグビー界全体のレベルを上げるためにも、協力したかった。」

自らが練習台となり、気付いたことはその場で個別にフィードバックする。Honda HEATの選手たちも、教えることで学ぶことがあった。

(画像提供:Honda HEAT)

今回の取り組みが実現したきっかけは、「15人制のスクラムを学びたい」というPEARLSからのオファーだった。

「だったら、スクラムだけじゃなくて丸一日、僕たちが指導をするよ。」と返事をしたのがHonda HEATダニー・リーHC。練習冒頭メニューの確認を両HC同士で行い、みっちりと1時間半、15人制のエキスを注入した。

当初の目的だったスクラム指導は、今シーズンからHonda HEATのスクラムコーチを務める具東春氏が担当。昨年のラグビーワールドカップでも大活躍をみせた具智元選手の父によって築きあげられたスクラムのノウハウは、PEARLSの選手たちにとっては全てが新鮮。スクラムの姿勢を徹底的に教えることで、「トップリーガーはこういうことを考えてスクラムを組むのか」と気付きを与えた。

スクラムの練習台となったHonda HEATの呉季依典選手(フッカー)は、「学ぼうとする意欲と積極性を持って向き合ってくれたので、もっと教えてあげたいという気持ちになった。三重県内で同じ競技している者同士、高め合えた。」と話す。

 

まだ具体的な次回日程は決まっていないが、ダニー・リーHCは「これからもこのような交流を大事にしていきたい」という。今回のHonda HEAT×PEARLSを皮切りに、全国でも同様の取り組みが派生展開することを期待したい。

(画像提供:Honda HEAT)



練習後コメント(Honda HEAT)

ダニー・リー ヘッドコーチ
女子ラグビーと交流する機会をいただけて光栄です。
パールズの中にはいい選手がたくさんいたので、彼女たちのこれからに期待しています。
このような男子ラグビーと女子ラグビーが交流をもって取り組んでいくことは、三重県だけではなく日本ラグビーの発展に繋がっていくものと思っています。
これからもこのような交流を大事にしていきたいです。

呉 季依典選手(フッカー)
女子ラグビーのトップチームが来てくれるということで、僕たちもそれなりの準備をしてきたのですが、パールズの皆さんはこちらが準備していた以上のことができて驚きました。
特にスクラムのところでは、学ぼうとする意欲と積極性を持って向き合ってくれたので、もっと教えてあげたいなという気持ちになりました。
選手の皆さんと話をする中で、三重県内に女子ラグビーと男子ラグビーがあり、同じ競技している者同士で高め合えているなと感じました。

藤浪 輝人選手(バイスキャプテン、フッカー)
普段から出前授業などラグビー普及活動には積極的に参加させていただいていますが、いつもとは全く違う雰囲気で楽しかったです。
みなさん学ぶことに対して積極的で、交流ができたことを嬉しく思います。
最近はチーム活動の中でもイベント事の制限が多く、そういった意味でもいい刺激になりました。

吉岡 大貴選手(プロップ)
純粋にいい機会だったと思います。
女子ラグビーとの交流は新しい取り組みとして楽しかったです。
パールズさんはなかなかメンバーが揃わず、実戦形式での練習が難しいという状況を聞き、自分たちが練習台をできたのはよかったのかなと感じました。
個人的にはラグビーに対するマインドセットの部分で真摯に向き合う姿が刺激になりました。


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