自分たちのラグビーを信じること。言葉では簡単に言えるが、それを全員が理解し実践することは難しい。
試合最終盤。
帝京の7点リードで迎えた後半40分、慶應23番・髙武俊輔選手がゴールポストからおよそ10m左に離れた位置へトライを決めると、プレイスキッカーの15番・山田響選手は「普段の練習なら絶対外さない位置」のコンバージョンゴールを大きく右にそらす。25-27、帝京2点のリードに変わる。
時計の針も後半40分を過ぎた、ラストキックオフ。キックオフレシーブから果敢に攻めた慶應は、ハーフウェイから少し敵陣に入った所でペナルティを獲得する。
3点でも逆転できる点差。距離はあるが、角度はさほどない、おそらくこちらも「普段の練習なら絶対外さない」であろう絶好のPG位置。慶應の選手たちが集まると、一様に山田選手の顔を伺った。
そしてキャプテンによって下された判断は、「タッチに蹴り出してラインアウトからのトライを狙う」だった。
そして生まれた、逆転トライ。愚直に自分たちを信じたタイガージャージの選手たちが喜びの涙を見せた時には、後半も48分を過ぎていた。
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シーズンも深まり、ラグビーファンの皆様は様々なレベル感の試合を目にしていることだろう。
12月の第1日曜日である6日は、早明戦を優先して観戦された方。ぜひこの慶應ー帝京戦も、J SPORTSオンデマンドやJ SPORTSの再放送等でご覧になって欲しい。「わたしはいま、ラグビーを見ている」そんな気持ちにしてくれる試合を、見ることができる。