後半、スタートダッシュを決めたのは慶應だった。
後半1分、ハーフウェイ付近でジャッカルを決めると、その更に1分後にも再びのジャッカル。
ハーフタイムで、どんな会話がなされたのか。どんな修正点が話し合われたのか。なんだか絵が浮かぶような、そんな出だしだった。
早稲田のペナルティも重なり、慶應がゴール前まで攻めると、たくさんのノンメンバーの選手たちがスタンドから声援を送った。この場に立てない、だけどこの苦しい1年をともに闘ってきた仲間の目の前で、なんとかトライを決めたい。
しかし立ちはだかるのは、アカクロを身にまとう永遠のライバル。簡単にはトライをさせてくれない。
インゴールまで迫っては離され、迫っては離されを繰り返しながら迎えた後半12分。12番イサコ ・エノサ選手がインゴールに飛び込んだ時には、スタンドの仲間たちは飛び跳ねて喜んだ。
14-24、10点差に迫る。
更に攻め立てたい慶應は、前半にトライを奪った7番・山本選手の魂のタックルが会場中に響く。
後半19分、早稲田が自陣22mで堪らずオフサイドをしてしまうと、慶應はルーキーの左足へ3点を託した。
右斜め45度の、比較的成功率が高い位置。だが「響はいい所で決めるし、いい所で外す」と栗原監督が帝京戦後に話したように、今回はいい所で外してしまう。流れを、引き寄せきれなかった。
後半39分、最後に早稲田の4年生でトライゲッター・古賀由教選手が左隅に飛び込んでノーサイド。
早稲田が3年連続の準決勝進出を決めた。
***
試合後、涙にくれる慶應の面々。15番の山田響選手も、憚らずに顔を覆った。
来年こそは、いいときに決められる選手に、なろう。