帝京サイド
帝京がこの日一番会場を沸かせたのは、何といっても前半最後のスクラムだろう。
敵陣5mでのマイボールスクラムを、何度も組みなおした。アーリーエンゲージにアーリープッシュ、そして何度目のコールの後だっただろうか。レフリーが長く笛を吹くと、ポールの真下で手を高く伸ばした。
スクラムでペナルティトライ。帝京は、しっかりと自分たちの強みを発揮した。
帝京のノンメンバーが見守るスタンドの目の前でペナルティトライを奪う
世代トップクラスのタレントが揃う帝京において、この試合それぞれの選手たちが才能を遺憾なく発揮した。
特に、スタンドオフの高本幹也選手、2年生。キックを蹴り合う時間帯には精度高く人がいない所へ蹴り込み、チャンスエリアではDF裏への絶妙なショートパントで2本目のペナルティゴールの起点となった。
これまでいくつものトライを量産してきた13番・尾﨑泰雅選手は、これがラストシーズン。帝京での最後のトライは、後半38分。スクラムから出たボールを左サイドで受け取ると、タッチライン際の強さを見せつけてグラウンディングした。
一時15点差まで離されるも、ラストワンプレーで逆転圏内まで持って行った帝京。対抗戦4位からの大学選手権優勝を本気で目指したからこそ、最後まで誰も諦めなかった。
しかし無常にも吹かれた、ノーサイドの笛。膝をついて顔を覆った3番・細木康太郎選手。2番江良、10番高本、13番尾﨑選手も、スタンドを前に挨拶すると涙が止まらなくなった。
大阪桐蔭高の先輩後輩。左:10番・高本選手(2年)、右:江良選手(1年)
奥村翔ゲームキャプテンは、試合後の記者会見で冒頭「ふぅ」と大きく息を吐くと、涙を堪えるかのように少しずつ言葉を紡いだ。「監督のおっしゃった通り、自分たちに足りない所があった。練習してきたことを自分たちは出し切った。悔いはない。」
負傷した松本キャプテンに代わってシーズン最終盤グラウンドでまとめ上げたその想いは、ファンにはきっと、届いているはずだ。
奥村ゲームキャプテン
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