「ENJOY RUGBY」目黒学院v大分東明(2回戦)【第100回全国高等学校ラグビーフットボール大会】

60分の物語

目黒学院:エンジジャージ、大分東明:ダークブルージャージ
変幻自在なパスワークやランから生み出されるフィジーのラグビースタイルは、時折『フィジアン・マジック』と例えられる。
そこに「ラグビーをする楽しさ」を加えたのが、大分東明のラグビーだ。

この試合、キャプテンがスクラムハーフ同士の対決となった
ピッチに立つ15人だけではなく、リザーブメンバーやサポートメンバーも含めたチーム全体で声を出し、拍手し、喜ぶ。
大分東明を見ていると「なんて楽しそうにラグビーをするんだろう」という言葉が一番に浮かぶ。
前半12分。14番・浦川直輝選手がおよそ50mの独走トライを決めれば、四方八方から「ふぅー!」と甲高い声が響いた。きっと、フィジーからの留学生たちがエッセンスを注入したのだろう。さながら海外の、アイランダー系のラグビーを見ているような雰囲気に、心が躍る。
8番ブル・セコナイア選手と11番ナコ・ジョアペ選手が先発を務めたこの試合。2人が奪ったトライは計3つ。仲間を手で煽る仕草も時折交えながら、チームの士気を上げるには充分な活躍を見せた。

浦川選手のトライシーン。春の選抜大会時には、熊谷まで多くの保護者が駆け付け大きな声で声援を送る
対する目黒学院は、3年ぶりの花園の地。
トンガ人留学生のパワーがどうしても目立ってしまうが、テンポよい球出しと献身的なディフェンス力も見応えがある。
後半苦しい場面で自陣深くまでボールを蹴り込まれると、必死で戻ったのは14番・竹本侑士選手。インゴール1m手前でボールをキャッチし外へ蹴り出した後、膝に手をつき、よろけた。全力で走った、全力で戻った選手たちの懸命な姿は、きっと画面の前で応援している全ての人に届いたはずだ。

後半19分には、ラックから展開されたボールをソロモネ・フナキ選手が50m以上走り抜けトライ
ノーサイドの笛が吹かれると、雄叫びをあげた大分東明の選手たち。
大分でラグビーといえば、漆黒の大分舞鶴高校を想像する人も少なくないだろう。だが、昨年大分東明が花園初出場を決めたのを機に、勢力図を変えつつある。今年の大分県予選決勝は、後半ロスタイムで大分舞鶴を逆転した。
なぜだろうか。東福岡高校が花園で初優勝してから3連覇を達成するくらいまでの雰囲気に、近しいものを感じた今大会。
『ENJOY RUGBY』をグラウンドで体いっぱいに表現する大分東明の選手たちが、これからどのような成長曲線を描くのか楽しみでならない。


リスタート時には全員で声を出し、意識的にチームを一つにする。高校生らしく感情をおもいっきり出すチームは楽しい

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