試合内容
強かった。
インゴール手前まで攻められても、守りきる強さがあった。どれだけフェーズを重ねても、反則せずにトライを取り切る強さもあった。
全国高等学校選抜ラグビーフットボール大会の開催県枠を勝ち取った、熊谷工業高校のことである。
キックオフの笛が鳴ると、先に仕掛けたのは昌平高校。得意のモールで、インゴールまで勢いよく攻め立てる。しかしヘッドダウンの反則で、あと数センチが届かず。開始2分、昌平は先制の好機を逃す。
対する熊谷工業は、ブレイクダウンで強さを発揮。幾度もノットリリースザボールを奪うと、プレーイングエリアを敵陣深くに移した。
前半7分から続いた熊谷工業の攻撃は、およそ7分間に及んだ。両チームともペナルティせず、ただひたすらにフェーズが重ねられていく。
右に左に、機を伺う熊谷工業。
昌平陣からは「今我慢の時間だから!」と声が飛んだ。
均衡が破られたのは、前半も14分を過ぎた時。
右隅で何度もフォワードたちが体を当てる中、DFラインの人数が薄くなったタイミングをみて熊谷工業は左に展開。ポール前で13番・橋本ゲームキャプテンがボールを手にすると、そのままインゴールに飛び込んだ。
7-0、欲しかった先制点を、熊谷工業が手にする。
ハーフタイム、熊谷工業陣はしきりに声を掛け合っていた。
「俺たちが粘り勝ったんだ」「後半はイーブンの気持ちで入ろう」「昌平、絶対切り替えてくるぞ」「楽しもう」
勝負の後半、全国への切符を掛けた15分に向け、もう一段ギアを上げる。