「魂見せろって」花園ベスト8相手に1トライ|高校選抜ラグビー・1回戦<春日丘v熊谷工業>

1回戦 中部大学春日丘高等学校v埼玉県立熊谷工業高等学校

選抜出場を決めた県大会から、中3日。

15分ハーフの試合を1日2試合、2日連続で戦った熊谷工業に、疲労は残っていなかった。

ただ選手たちにとっては初めての、全国レベルのスピードとコンタクト強度だった。

前半2本、立て続けに春日丘がトライを奪う。

圧巻は2トライ目。

自陣深い位置での相手ボールラインアウトを春日丘がスティールすると、そのまま広いサイドに展開。グラウンド中央で待ち構えていた15番の小池陽翔キャプテンがボールを手にすれば、そのまま真っすぐ70m超の独走トライを決めた。

「ノミネートしっかり」「ディフェンスから、タックル高いよ」コンバージョンキック中に組まれた熊谷工業サイドのハドルでは、すぐに修正案が選手たちから発せられる。

すると直後のリスタートから、春日丘サイドに詰め寄る熊谷工業。インゴールまで残り1mもない程の距離で、何度もFWたちが体を当て続ける。

時間にして、およそ10分弱。

ラックからボールを拾い上げ、その真横に大きい男3人で突進。崩れたらまた、3人1組で真横に持ちだす。「コミュニケーション!」「気持ちだよ、まだ足りないって!」熱い言葉が響く。

なかなか崩れない春日丘のディフェンスに、こじ開けるきっかけを作ったのは13番・橋本颯太ゲームキャプテンだった。

ポール正面でボールを受け取ると、ディフェンスラインを後退させる突進を見せる。そのままインゴール間際まで迫り、即座に左にボールを放れば、ボールを手にした2番・金井優作選手がポールの際へ手を伸ばした。

念願のトライ。

14-7、差を7点まで縮める。


前半22分、熊谷工業2番・金井選手のトライシーン

しかし、対戦相手は今年の花園でベスト8を達成したチーム。

一度トライを許した後は、自分達の強みの方法で試合を組み立てた。インゴール間際におけるFW陣のオプション量も、熊谷工業を上回る。

春日丘が奪ったトライは、前後半合わせて6本。全国の常連は強かった。


相手チームからも「キーマン」と言われていた13番・橋本颯太ゲームキャプテン。いとこは東芝ブレイブルーパスの橋本大吾選手

「工業前見ろ!やることやろ!」「魂見せろ、魂!」「刺され!」

気持ちがいいほど真っすぐな言葉がグラウンドから聞こえる。声の主は、先ほどトライを決めた熊谷工業の金井選手。「気持ちで負けたらダメだと思って。みんなを和ませようと、ずっと言葉を発していました。」

どれだけ点差が離れようとも、気持ちを切らすことはなかった。

 

全国の場にブリリアントブルーのジャージが戻ってきたのは13年ぶり。

昭和の終わりから平成に掛けて、全国屈指の強豪校として名を馳せた熊谷工業は、ここから再び頂点を目指す。

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