キヤノン、チーム最多得点で勝利。NECは初勝利持ち越し|TL第7節<キヤノンvNEC>

HISTORY of NEC Green Rockets

「最初の40分で試合を決めるつもりで挑んだ試合だった。逆に相手に20分で試合を決められてしまった、残念です。」

中嶋大希キャプテンは開口一番、そう口にした。

前半22分で5トライ。苦しい出だしだった。

それでも諦めずに攻め続け、ようやくのトライは前半31分。長いTMOの後、敵陣5mでの相手ボールのラインアウトが流れた所をクリーンキャッチした2番・佐藤耀選手がボールを地面につけた。

その後1トライ返されたものの、前半終了直前、ホーンが鳴ってから敵陣深くでラインアウトモールを組むとインゴールまで迫った。が、モールが止まり、ユーズイットの声があったにも関わらずボールを出さなかったというレフリーの判定を受け、前半は終了する。

42-7。前半40分でのスコアだ。


前半終了間際のモール。ハーフタイム中にも、会場アナウンスで一連の流れについて説明が入った

後半8分。敵陣深くまで攻め込んだNEC陣営は、ハイタックルを受けペナルティを獲得。タッチに蹴り出してラインアウトか、とみなが気を抜いた瞬間、10番のアレックス・グッド選手がタップキックで瞬間的にインゴールへ飛び込んだ。イングランド代表21キャップを持つ司令塔の判断力で、トライを決める。

その4分後にも、7番ジャック・ラム選手が強いボールキャリーからチャンスを作ると、最後は自らでトライ。

49-17、2連続トライでチームに勢いをもたらす。


前半31分、NEC応援席前でトライを決めた2番・佐藤耀選手

しかし。80分間でキヤノンに許したトライは11。後半3トライで追い上げを図るも、前半の5連続失点が響いた。

2年ぶりの勝ち星は、プレーオフトーナメントに持ち越された。

***

昨年度からSNSに力を入れ、情報発信を続けるNEC。SNSを通じて、新たにファンになった人も多いはずだ。

良い時も悪い時も支えるファンに向けて、中嶋大希キャプテンが記者会見で語った言葉をお伝えする。

「元々ファンで居てくださった方々、加えてSNSを通じてファンになってくださったファンの方々。多くの方々が応援してくださっていることを選手全員、身に染みて感じています。

今日のような地方での試合も、ホームゲームでないにもかかわらず多くの方が足を運んでくださっていることに感謝しています。幸せに思います。

そういった中で、未だ1勝もできていない事実があります。自分たちも悔しいです。ファンの皆様も悔しい中、1勝目指してトップリーグ戦ってきましたが、リーグ戦で1勝もできずに終わってしまったことをファンの皆様と一緒に残念に思っています。

NEC PRIDEを掲げて今シーズン戦ってきました。それを今になって、曲げるつもりもありません。次、トーナメントで1勝することがファンの皆様への感謝にもなるでしょうし、自分たちの存在意義を示せるものになってくると思います。

次のトーナメントでNEC PRIDEをしっかりと体現できるように。準備期間は1週間と短いですが、常に練習中も自分たちだけでなくファンの皆様がいると感じています。それを力にして、トーナメントでは生まれ変わったチームで挑みたいと思います。」

His story of Sunao Takizawa

試合後。

観客席への挨拶を終えると、スパイクを脱いで一人、ゆっくりと息をしながらグラウンドの端で空を見上げた。

瀧澤直、34歳。

千種高校を卒業後、早稲田大学に進学。アカクロを脱いだ後、一度は一般企業に勤めたが、ラグビーをするためにNECへ加入した。

試合中は、バックス顔負けのスキルフルなステップで会場を沸かせるプロップ。

この日1番で先発し、62分間ピッチに立つ間も、主将経験者としてリーダーシップを発揮する。

前半15分、4本目のトライを奪われた後のハドル(円陣)では、「しっかり前に出よう」と声を掛けた。

接点でペナルティを取られ、密集ではオーバーされ。なかなか苦しい最前線での戦いとなった、ファーストステージ最終戦。

試合後、考えることは多かったのだろう。

キヤノンベンチへの挨拶後、大学の先輩でもある佐々木隆道FWコーチと言葉を交わした瀧澤選手。

最後に2つ、肩を叩かれてNECベンチに戻った。

そしてロッカールームへ引き上げる直前。

キヤノンの主将であり、元チームメイトの田村優選手が声を掛ける。

二言三言ではない程、しばらく話し込んだ。運営スタッフに早くロッカーへ戻るよう促された程である。

なにか、チームを立て直すきっかけを元同僚が、敵の主将目線でアドバイスを送っていたのだろうか。

どのような会話がなされていたのかは想像でしかないが、プレーオフトーナメントは負けたら終わりのノックアウト方式。

2年ぶりの勝利を、最前線で奪い取るのみである。

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