試合展開 ~昌平高校~
花園で年越しするために、まずは埼玉県予選を完封勝ちする。
そうチームで決めて、挑んだ準決勝だった。
だが、前半24分に今大会初の失点。
気落ちする仲間を前に、北川キャプテンは声を掛けた。
「いつも通り、昌平らしいラグビーをしよう」
試合の入りこそ昌平ペースでトライが取れたものの、段々と足止めをされるシーンが増える。
後半には3連続でペナルティを取られ、インゴール前に張り付けにされた時間帯もあった。
ラインアウトモールを組まれ押し込まれたのも、自分たちのオフサイドが起因。
後半30分間で取られたペナルティは、なんと6つ。試合通して、ペナルティ数は9つに上った。
チームが流れに乗り切れない中、頼りになったのは、やはりキャプテン。
50:22キックを1本と、「公式戦では初めて」というドロップゴールを1本、決めた。
チャンスがあればペナルティゴールを狙う予定だったが、「ここしかない」と思ってゴール中央でのドロップゴールに変更。
会場が、沸いた。
スコア的には24点差での勝利。
だが、決勝進出を決めた御代田監督の表情は硬いままだった。
「チームとして作り直さなきゃいけない。」
なぜならば、目指す頂きがここではないから。
5月に行われた関東大会の埼玉県予選・決勝では、熊谷工業を相手に完封勝ちし、涙を見せた北川キャプテン。
あの時は、キャプテン不在のままチームの力で決勝に勝ち上がっていた。
今は、キャプテンがチームの不調を助ける。
「バックスのトライが目立つのは、フォワードがスクラムで組み勝ってくれるから。例えノックオンをしてもスクラムに自信があるからこそ、バックスが躍動する。全てはフォワードの頑張り」と、御代田監督は話す。
持ちつ持たれつ。
今年も、昌平らしいチームが出来上がった。
当初目標としていた、全試合完封勝ちでの花園出場は出来なくなった。
だが、目線は下げない。
「今日は、いつも通りのプレーが出来ていなかったから崩れて自滅してしまった。とにかくノーペナルティ。一週間、ノーペナルティを意識して練習したいと思います。(北川キャプテン)」
11月13日、笑顔で2年連続の花園行きを決める。
最後のノーサイド ~川越東高校~
先発15人中、3年生は僅か2人。
3年生の選手数が少なかったわけではない。
1・2年生が、実力でスターティングを勝ち取っていた。
試合開始20分で3トライを許した川越東。
しかし誰の気も落ちない。
「こっから上げよう、ヒガシ!」
グラウンドから、下級生の声が聞こえる。
その声に反応したのは、昨年も先発メンバーとして試合に出ていた2年生の土居選手(15番)。
前半24分、相手のディフェンスラインをかいくぐると、ショートサイドに控える3年生の平田バイスキャプテン(14番)にボールを繋ぎ、トライを奪った。
キャプテンの福永選手(7番)は、至るブレイクダウンに顔を出し、体を張って仲間にキャプテン像を示す。
「1個上の江田先輩のようなキャプテンではなかったけど、プレーで示せたかな、って。」
後半10分に奪ったラインアウトモールでのトライは、キャプテンとして、フォワードとしての意地だった。
プレーで追うべき背中を示したキャプテンと、コミュニケーション力でチームをまとめたバイスキャプテン。
交代のためピッチを後にする1・2年生たちは、泣きながらベンチに戻ってきた。
それだけで福永組がどういうチームだったのか、窺い知ることが出来る。
福永キャプテンは言った。「来年は絶対に優勝して、花園に出場して欲しい。」
想いは、後輩に託された。
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