「このメンバーでラグビーが出来て良かった」初出場の読谷が花園で躍動。昌平は接戦を制し、桐蔭戦へ|第101回全国高等学校ラグビーフットボール大会|1回戦 昌平×読谷

60分の物語

昌平:緑ジャージ、読谷:紺ジャージ

試合前。

コイントスが終わると、読谷・島袋世良キャプテンは昌平・北川拓来キャプテンのもとへ行き、笑顔で胸をあわせた。

試合後。

挨拶を終えると、同じく屈託のない表情でキャプテンの2人は互いの健闘を称え合った。

Side Story ~昌平高校~

「昌平はディフェンスのチーム」

しかし一丁目一番地であるはずのディフェンスが、この試合振るわなかった。

昌平は常に、キックオフボールを奥深くに蹴り込む。

敵陣で仕留め、敵陣からゲームをスタートさせることを狙うからだ。

しかしこの日、自慢の出足が遅い。

緊張か恐怖心か、体を当てにいくことを躊躇っているようにも映る。

 

前半7分、欲しかった先制トライを許すと、キックオフボールがダイレクトタッチになってしまう。前半16分には裏のスペースを突かれ、50:22で陣地を広げられた。

ボールを持っても落ち着かない。バチッと決まるはずのタックルも影を潜める。

どこか、浮足立った時間が続く。

7点を追いかける前半最終盤。

自陣インゴール前でのプレーが続くと、ベンチから「我慢の時間だよ!」と声が飛ぶ。

すると前半29分、読谷が外に展開した所にプレッシャーを掛ければ、ボールがこぼれた。

すかさず拾い上げたのは、15番の北川キャプテン。

そのまま相手ディフェンスの網を掻い潜り、振り切れば70mを超える独走トライ。

「あのトライがなかったら負けていたと思う」と御代田監督が言う通り、起死回生のトライで前半を7-7で折り返す。

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後半序盤も、得点を奪えない時間が続く。

前半より幾分落ち着いたものの、それでもまだ、本来の昌平ラグビーは影を潜めていた。

御代田監督は決断する。

「ウイングを替えよう。」

 

後方にいた控えメンバーにふと目をやると、23番・平塚和選手は自ら手を挙げ、ベンチコートのチャックに手を掛けていた。

まだ、誰と交代するか決めていなかった。

だからこそ『自らが出る』覚悟を表した平塚選手の投入を決めた、という御代田監督。

「あれには驚きました。」


埼玉県予選ではスターティングメンバーに名を連ねていた平塚選手。だが、全国大会を前に外れていた

すると後半20分、敵陣深くでボールを回すと左サイドでボールを手にした北川キャプテンは、外側にいる選手からの「裏!」というコールに反応しグラバーキックを転がした。

そのボールを、インゴールとタッチラインが交差するギリギリで手にしたのは平塚選手。

一瞬の間の後に吹かれた、トライを認定する笛。

選手起用が、当たった。

スコアボードを12-7にすると、本来のディフェンスを取り戻し始める。

素早い出足。

前に出るタックル。

相手をまくりながら、インゴールラインを割らせまいと、全員で体を当てた。

試合最終盤にこの日一番のスクラムが組まれれば、相手は堪らずコラプシング。

 

残り時間と場所を冷静に選手たちで判断し、ペナルティショットを選択した昌平陣。

それを9番・鈴木悠真選手が決め入れ、ノーサイド。

15-7で2回戦進出を決めた。

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「やっぱり北川。」

試合後、御代田監督は繰り返した。

花園期間中の定宿に到着したクリスマスイブのミーティングで、この大会を最後に監督から退くことを発表した。

部員一人ひとりに手渡した直筆の手紙には、それぞれへの想いが綴られていた。

北川拓来キャプテン充てのものには「昌平に来て良かったか?」と一言。

北川キャプテンは、一点の曇りなく答える。

「昌平が大好き」

だから、昌平高校で1日でも長くラグビーをしたい。

2回戦は昌平高校史上初めての花園ラグビー場第1グラウンド。

12月30日、9時30分にディフェンディングチャンピオンの桐蔭学園と相対する。

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