60分の物語
京都成章
底抜けに明るいチーム。
きっと、誰もが好きになる。
攻め込まれた時には
「グラウンドゼロ!」
「FW諦めんな!」
「我慢だよ成章!」
と、ベンチに控えるメンバーたちから声が飛ぶ。
ゴール前でペナルティを与えてしまうと、全員で円陣を組み、気合いを入れた。
前半ラストプレー。
10番・大島泰真キャプテンが敵陣深くにグラバーを蹴り込むと、堪らず相手が蹴り出し5mマイボールラインアウトを獲得。
一度はパイルアップになるも、相手の反則からアドバンテージを持ち続けながらFW戦で前進し、最後は3番・森山飛翔選手押し込んだ。
前半を7-3で折り返す。
飛び跳ねて喜びを表した大島キャプテン
京都成章は、あえて前半風下となるエリアを選んでいた。
「後半勝負だと思っていた(湯浅監督)」との言葉通り、ハーフタイム明けには「こっからや成章!」「FWこっから!!」との声がピッチから飛ぶ。
ラインアウトから展開された先でジャッカルされても「コウタ、ナイススロー!」「FW落ちんな!」
モールでオブストラクションの判定を取られようとも「FWありがとう!」
バックスから掛かる言葉は、ずっと優しかった。
だからこそ奮起出来る FW。
引き離した2トライ目も、ラインアウトモールから2番・長島幸汰選手が押し込んだ。
勝利の瞬間、涙を流して喜びを表した選手たち。
「花園なので、勝つことは当たり前なんですけど。
2回戦でLOの南川が負傷して、今日の試合に出ることが出来なかった。準々決勝では暴れてくれると信じて、彼のためにも勝てて良かった。」
先制トライを奪った3番・森山選手は、涙ながらに話した。
京都成章の校訓は『自学・自成・自立』
だからこそ緊迫したハーフタイムであっても、監督が声を掛けることはなかった。
「子どもたちに任せているので、ハーフタイムには特に話していない。生徒たちが誇らしいです」と、湯浅監督は顔を綻ばせる。
組み合わせが決まった1ヵ月前から、この日に焦点を当て準備をしてきた。
サイズでは敵わない。小さいチームが勝つための武器は、何か。
「ブレイクダウンにタックル、相当行きましたね(湯浅監督)」
準々決勝の相手は、春の王者・東福岡高校。
大島キャプテンは一言「楽しみです」と答える。
「東福岡は、1本取られたら2本取る、3本取られたら4本取るチーム。僕たちは守って守って守り抜く、真逆の文化。今日も良い成長が出来たので、チャレンジャーらしく、良い挑戦をしていきたい。」