大阪桐蔭
スクラムでコラプシングを獲得し、ダブルタックルでゲインを許さなかった前半。
同時に、幾度かのトライチャンスを取り切ることが出来なかった。
後半22分、12点差をつけられた次のキックオフ。
No.8 林慶音選手はハーフウェイラインに立ち、仲間の方を振り返って「落ち着け」とジェスチャーで合図する。
その表情は、笑顔だった。
AT・DF問わず、ゴール前スクラムではスクラムハーフの位置に入ることも多かった林選手
後半28分、ラックから21-10-22と繋ぐと、22番・長田壮平選手が希望を繋げるトライ。
7点差まで追い上げた。
しかし、反撃叶わず無常にも吹かれたノーサイドの笛。
グラウンドに突っ伏した仲間を一人ひとり抱え上げたのは、巧みなボディワークでタックルを交わし、ブレイクダウンで仕事をし続けた7番・利川桐生選手だった。
「お世話になった方、メンバーや仲間の前で涙は流されへん、と思った。全国に出たということを誇りに思って欲しかった。」
グラウンドでは涙を流さなかった。
だが3年間の思いを聞かれると、目いっぱいに涙を溜め、答える。
「3年間しんどいことの方が多かったけど、それよりもラグビーが楽しいという思いがあったから続けて来られた。チームメイトや保護者、サポートしてくださった方々には感謝の気持ちしかありません。」
蹴って蹴られて蹴って蹴られて。
冷静にゲームをコントロールし続けた河村ノエルキャプテンは、試合後、言葉少なに自責の念を繰り返した。
「することを統一させられなかった。チームをまとめ、引っ張る力がなかった。」
それでもチームメイトは誰よりも知っている。
キャプテンが、常にチームの先頭に立ち続けたことを。
「日本一の男にさせたかった。胴上げすることが出来なくて本当に悔しい。(7番・利川桐生選手)」
白い旋風は、確かに2年ぶりに花園に巻き起こった。