東海大仰星
湯浅大智監督は試合後、開口一番に話した。
「最も育てて頂いている学校。これまでのラグビーを育ててくれた、僕なんかは”工大”と思っていますけど、そういうリスペクトを込めて戦おう、と選手たちには話をしました。素晴らしい相手とゲームが出来たことを誇りに思います。」
相手のフォワードをしっかりと前で止め、バックスが仕留める。
仰星のやりたかったラグビーが体現された60分間だった。
「相手との真向勝負も大事。だけれども強力なFWを擁する相手にどう対抗するか考えた時、あのようなボールゲームでエリアをとっていこう、という判断になりました。(薄田周希キャプテン)」
今年の仰星のスローガンは、『TOUGH CHOICE』と『CRITICAL THINKING』。
昨年はALWAYS THINKINGだったが、それをひとつ上の階層に進化させたからこそ生まれた戦術だった。
仰星伝統の『相手を丸裸にするミーティング』は、対戦相手が決まってから計5時間程。
キーワードは「繋がり」だったという。
「アタックでもディフェンスでも15人が繋がり続けてやりきろう、という意味もありますが、グラウンドに立つ15人だけでなく部員全員で繋がり続ける、ということを意識しました。」というのは、No.8の薄田キャプテン。
「ここにきている観客の皆さんの中にも、大工大のファンは多くいらっしゃると思う。その人たちを引き込むくらいの、僕たちのプレーとひた向きさを持ってやり切ろう、と。」
リスペクトは随所で垣間見えた。
大阪府予選から続いた無失点記録が止まった。
それでも「1年間磨いてきたディフェンスがこういう形で発揮されたことは嬉しい」と素直に喜びを語った薄田キャプテン。
逆を言えば、常翔の猛攻をよく1トライで抑えた、とも言える。
その原点は、春の選抜大会。
「選抜ではフィジカルで圧倒された試合がいくつかあった。このままじゃダメだ、と。仰星は展開ラグビーを伝統としていますが、その中でも1対1のフィジカルが大事になってくる。ウエイトトレーニングの意識をもう一段階上げました。」
個を磨き、そして築き上げた組織力が、今大会の最大の武器だ。
湯浅監督は「大会中に選手たちがどんどんチームになっていると感じる」という。
組織、チームであるということを忘れずにラグビーをする。
準決勝の相手は、昨年抽選の結果敗退となった東福岡高校。
「最大の準備をしたい。このままの勢いで勝ち抜いて、日本一になりたい。(薄田キャプテン)」
目線は高い。