準々決勝 熊谷工業×正智深谷|令和3年度 埼玉県高等学校ラグビーフットボール新人大会

60分の物語

熊谷工業:青ジャージ、正智深谷:モスグリーンジャージ

熊谷工業高校

前半終わって、0-0。痺れる戦いが続いた。
スコアが動いたのは、後半10分過ぎ。
ゴール前でフォワード戦を選んだ熊谷工業が持ち出すと、1番・小林蓮選手がボールを地面に押さえた。
ようやく破れた均衡にも、橋本大介監督は「正智が大きくてFWが強いことは分かっていた。こういう苦しい展開になることは予想していた」と話す。
加えて、昨季から主力選手として活躍していたバックスの須藤大地選手、宮下丈選手はこの試合が復帰戦。
「先週の立教新座戦ではFW陣が『バックスの2人がいないからFWが頑張らないと!』と奮起していた。ところが今日は『あいつらに回そう』と少しおかしな展開になってしまった。でもそれもまた高校生、新チームらしいです」と笑った。
前半は苦戦したスクラムも、後半には修正。低く組んで、圧倒した。
「自分たちの自信になるプレーがいくつかあった。」
そう話すのは、右プロップの篠崎優元キャプテン。
「FWとして前で戦うので、チーム全体や裏のスペースを見ることは出来ないが、その分声を出しFW間でゲームをコントロール出来るよう心掛けています。」
人一倍声を出している姿は、一目で分かった。
次戦は、2か月前の花園予選で敗れた深谷高校との戦い。
「まずはFWでセットプレーに勝ち、バックスに楽をさせたい。次もスクラムから思いっきり前に出て、圧倒していきたいと思います。(篠崎キャプテン)」
新人戦を制した昨季同様、ここまで無失点で勝ち上がっている熊谷工業。
2連覇を目指し、準決勝に挑む。
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正智深谷高校

「あと一歩下がるだけで違うから」
「言い方悪いね、ごめんね」
「あと10分!10分あれば2本取れるよ!」
プレーが止まる度に前向きな言葉を発し続けたのは、正智深谷高校のキャプテン・望月琳太郎選手。
菅原悠佑監督も「凄く良いキャプテン」と太鼓判を押す。
ちょっとやんちゃな一面もある、と笑いながら付け加えたが、それもまたNo.8のキャプテンらしい。
1本目のトライを奪われると、望月キャプテンは仲間を集め声を掛けた。
正智、一本取り返そう!セルフジャッジやめよう、レフリーに誠意持って!
その意を問うと、高校生とは思えない答えが返ってきた。
「ラグビーは紳士のスポーツ。レフリーが居てこそ、試合が出来る。リスペクトを持ってプレーしよう、という意味で声を掛けました。」
今はまだ、体作りの真っ最中。「まだまだラグビーの練習はしていない」という中でも「これだけの試合が出来た。気持ち的には良い試合だったが、結果は満足いくものではない。」とキャプテンは前を見据え答える。
昨季の花園予選をベスト16で敗退して以降、菅原監督の元には各方面から心配の声が届いたという。
助けるよ、と声を掛けてくれた人たちも数多くいた。
「今、この場にいる人たちが『正智のために』と集まってくれた大人たちです。」
菅原監督は、生徒たちを見つめながら言った。
「正智深谷の文化を変える。」
一朝一夕では花は咲かない、改革1年目。
それでも菅原監督×望月キャプテンのタッグは、何かが変わりそうな予感を感じさせる。
まずは新人戦5位、そして関東大会出場を経て、11月の勝利を目指す。
新生・正智深谷の1年がスタートした。

試合後、トンガ国旗を掲げた。OBには多くのトンガ王国出身者がいる

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