異例の夏2戦。引き分けからの2戦目で『痛いこと、キツいこと』にこだわった東福岡が勝利。仰星は「完敗です、有難い」|菅平合宿・練習試合 東海大大阪仰星×東福岡

Episode of 東海大大阪仰星

「ラグビーの根本であるコンタクトで後手を踏んだ60分。ブレイクダウンでの圧力が強く、自分たちのアタックでもミスが重なってしまった。完全に一歩先を行かれたな、と感じています。」

松沼寛治キャプテンは、冷静に振り返る。


第1戦で苦戦したキック処理。13日、14日午前と練習をし対策を講じたが、第2戦でも詰め切ることは出来なかった

ラインアウトが取れずスクラムでもペナルティを取られ、セットピースで後手を踏んだ責任を口にしたのは3番・石原捷聖選手だった。

「セットプレーは一番重要なアタックの起点。フォワードが要、自分たちの責任です。相手の方が、勝つ意識が上回っていた。自分たちの力、パワー不足からも層の薄さを感じました。」


この夏菅平で戦ったチームで、最も圧力を感じたスクラムは流経大柏。そこを100の基準点とすると、自分たちはおよそ65点。「花園ではどれだけ相手をリスペクトして、叩きのめせるかが重要。(石原選手)」

試合開始早々ペナルティが嵩み、3本立て続けに決められたPG。

「そこまではまだ逆転の範囲内だったのに、後半の入りでもミスが続いてしまった」と反省するはFB穴澤開選手。相手がDFで圧力を掛けてくることは分かっていた。けれどもそこに対して良い準備が出来ていなかった、と続ける。

「今日一番の反省点は、1対1のコンタクト、接点の部分で負けていたことです。アタックではFBとして『縦をとる』ことをテーマとしていましたが、接点の部分で東福岡さんに圧倒されてしまった。最後まで改善することが出来ませんでした。そしてもう一つ、外側からのコミュニケーションや要求が上手く内側に伝わっていなかった。伝えきれなかったこと、ポジショニングも含め悪かったな、と思っています。」


春はセンターを担ったが、夏からは昨年同様フルバックへ。クラブリーダーとして、『当たり前』を追求する

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想定外の交代もあった。キャプテン・松沼寛治選手が、前半終了間際に退く。

その影響もあってか、持ち前の修正力で流れを引き戻した第1戦とは真逆の展開に。後半は悔しいノースコアとなってしまった。

「怪我をしてハーフタイムのトークに入ることが出来なかった。外から見ていて、後半に修正する部分があまり見えてこなかった」と話したのは松沼キャプテン。

たとえ修正することがなかったとしても、一人ひとりの仕事を追求することは出来る。本来であれば自分がその姿をグラウンドで後半に見せたかった、とキャプテンとしての想いを吐露した。

それぞれに気持ちを新たにした、夏。

「試合や運営、周りでのコーチングの声含め、関わっている選手の少なさがこの合宿中に目についた。自分たちの試合が終わった3年生がグラウンドの外で座っていることもあり、クラブに対して関わる人の数が全然いなかった。クラブの未熟さを知りました。チャンピオンシップを取るためには、日本一のクラブになることが最低条件。そのためにも、同じくクラブリーダーを務める石原と密にコミュニケーションを取って、クラブの動かし方を話し合っていきたいです。(穴澤選手)」

「自分たちのパワーアップが必須。ラグビーIQを高めるための4か月にしたいと思います。圧倒したい。(石原選手)」

「この夏、ゲームを重ねることが出来ました。新チームになってから積み重ねてきたことを出せたこともあれば、まだまだ足りない所もある。出た課題を修正することはもちろんですが、1人ひとりのフィジカル強化は個人の責任として、チームのためにやるべきこと。僕も含めて、そこをもう一度突き詰めれば絶対4か月後に結果は出ます。(松沼キャプテン)」

リーダーたちの大きな背中は、道標となってチームを導いていく。

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「完敗です、有難い!」

清々しい声の主は、湯浅大智監督。試合後、東福岡・藤田雄一郎監督が握手を求めに近寄ると、湯浅監督は開口一番そう発した。


試合後、全員で大きな円陣を作った東海大大阪仰星

「やれるんちゃうん?って思っていた所が、いやダメでしょ、とはっきり分からせてもらえた。様々な場面での細かい、出来なかったことを見つけることが出来ました。」

『完敗です、有難い』の意味についてそう説明した湯浅監督は、しかしここ菅平に来てから気付くのでは遅い、とも話す。なぜならどのチームも花園の地方予選を目前に、ピッチを上げることは当たり前だからだ。

「振り絞っていない時に振り絞るチームが勝つんです。その原理で言えば、確実に足りていない。でも例えこちらから火を点けたとしても、その瞬間は燃えるかもしれませんが、点けてもらった火はすぐ消えます。今年の3年生は、今気づいて自分たちだけ頑張るのか。それとも、1・2年生たちに何か残して卒業するのか。」

一歩先の、クラブとしての在り方という視座が、このチームには求められている。

しかし、Never too late。何事も遅すぎることはない。

「種蒔きはしました。その種がしっかりと芽吹いて、花咲いて、実をつけて『美味しいね』となるのか、ならないのか。どちらかです。急激に育つ肥料を注入しまくるかは、これから判断しようと思います。」

湯浅監督が繰り返した『3年生』の6文字。

「絶対3年生です。」「3年生の責任です。」

残り4か月半で、3年生たちはどんなチームを作り上げるのだろうか。

答え合わせは、花園で。

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