Episode of 東福岡
「昨日良いミーティングが出来てね。こちらから(戦い方の)マニュアルを提示して、それに選手たち自身で味付けしていくプロセスを踏めた。今年はその部分が強いと思います。より、自分たちの形にしていくことが出来る。」
それが面白いよね、とは藤田雄一郎監督。
60分間、公式戦のような集中力を見せ続けた選手たちを讃えた。
急遽決まった東海大大阪仰星との第1戦。そこでは互いに4トライずつと互角の戦いを演じた。
今年はディフェンスのチーム、を自負する東福岡にとって、被4トライは決して喜べる結果ではない。
「次は完封で勝ちたい。」そう口にする選手もいた。
だから前回の試合をビデオで振り返ると、自分たちで課題を明確にする。
今年は痛いことをするチーム。パスで逃げるのではなく、当たろう。自分たちもキツいが、その分相手もキツいはず。
エリアも変えなければならない。自陣でプレーしてしまう時間が多かったからこそ、キック主体のラグビーでエリアを確保しながら、ディフェンスでプレッシャーを掛けよう。
ウイングまでボールが回らなかった反省は、スクラムハーフから直接ボールを供給することに変更しよう。相手DFの穴を突くべく、ハーフとウイングのループも使った。
大川虎拓郎キャプテンは言う。「一番は意識です。この短期間で急激に技術が発達するわけではないですし、1日置きに試合があるのは花園と一緒。修正力が大事になってくると思うので、この2日間でもっと仲間と話すこと、色んなことを試すことにチャレンジしました。」
戦術も自分たちで最終決定をした。
「アナリストさんが提示してくれた案をたたき台として、自分たちがしっくりとくる戦い方にアレンジしました。それがハマったのかな、と思っています。(大川キャプテン)」
自分たちで納得し、自分たちがやり易い戦い方を求める重要性を理解した夏だった。
この日の圧巻は、何と言ってもディフェンス。ボールを持たない時ほど東福岡のオーラは色濃くなり、個々が連なる一枚の面となって圧力を与えた。
「モチーフは埼玉ワイルドナイツです」とは、スクラムハーフの高木城治選手。
敵陣に入ってからのディフェンスはまさしく、今季の東福岡のテーマである『ボールを持たない時がハッピー』を体現した。
試合前にもひたすら繰り返したのはディフェンス練習だった
無論、現状に満足をしているわけではない。
今夏の反省点は、プラン遂行力。
「点数が離れると、キックを使わず外に振ってしまうこともあった。60分間プランを追求し続けることが大事だと感じました。(上嶋友也選手)」
プロ選手のような言葉を発する選手たち。だからこそ監督もまた、より高いレベルを求める。
「ディフェンスの精度を上げること、そして一つひとつの細かい部分を大事にすること。パス一つとってもそうです。ノックオンにならなかったからオッケー、ではない。そこを完璧に出来るようになって、花園で仰星に勝てるようになる。ベスト4の壁はそこです。(藤田監督)」
5年連続の花園ベスト4。
越えなければならない壁の高さを、そして厚みを知っているからこそ、ディティールにこだわる重要性を認識する。
「花園はまだまだ先、なんで。」
この先4か月半の、そして大会に入ってからの成長曲線を最大限にするためのロードマップを、頭に描く夏を終えた。