第77回国民体育大会「いちご一会とちぎ国体」のラグビーフットボール競技会が、10月2日(日)から始まった。
第1日目は少年男子の1回戦が計7試合行われ、初日から熱戦が繰り広げられた。
試合概要
「いちご一会とちぎ国体」第77回国民体育大会 ラグビーフットボール競技 少年男子1日目
【日時】
2022年10月2日(日)
【場所】
佐野市運動公園
A:清酒開華スタジアム、Bハートフル保険フィールド
試合詳細
神奈川県(選抜)×愛知県(選抜)
両チームともに堅い滑り出し。前半最初のウォーターブレイクまで、ノースコアが続く。
最初の得点は神奈川県。ブレイクダウンで2連続ペナルティを得ると、ラインアウトからボールを供給された10番・野口柊選手がゴール中央からキックパス。15番・宮本寛隆選手が右外でキャッチし、グラウンディングした。
コンバージョンゴールも成功し、前半23分、神奈川県が7点を先制する。
続く25分にも8番・川口寛太選手が抜け出しウイニングロードを作れば、ラストパスを受け取った9番・石川裕大選手がトライ。
14-0と神奈川県のリードで前半を折り返した。
後半最初のトライも神奈川県。
後半1分、6番・恩田優一郎選手から14番・笠原悠真選手へ内に返し、更に内側に走り込んでいた9番・石川選手がノーホイッスルトライ。差を21点に広げる。
愛知県の反撃は後半6分。
キックゲームで陣地取りの様相を呈する中、9番・宮下劉牙選手がグラウンド中央部でインターセプト。そのまま走り切って、7点を返した。
しかし愛知県の反撃もここまで。
その後神奈川県が2つのトライと1つのPGを重ね、38-7で初戦を突破した。
神奈川県・浜倉裕也監督(湘南工科大学付属高等学校教諭)
試合の導入部は緊張からかミスも多かったが、エリアマネジメント含め頑張ってくれた。
特に合宿を組んだわけではなく、栃木に入ってからの2日間しか合わせることができていない。だからこそテーマは『いつもの自分たちの力を出す』こと。コンバインドチームで新しいことをするのは難しい。チームで普段やっている自分の仕事で、良いパフォーマンスを発揮すること、レベルを下げないこと、に注力した。
神奈川県・上村太陽キャプテン(東海大相模)
短い練習期間だったので、立ち上がりが良くない雰囲気だった。それでも試合中に修正出来たことが収穫。
相手は体格の大きい選手も多かったが、押し返した後のリアクションを早くしよう、と気を付けて挑んだ。目標は日本一です。
栃木県(國學院栃木高)×兵庫県(選抜)
劇的な逆転勝利。
栃木県代表・吉岡肇監督は「最後のモールは栃木県が押してくれた」と喜んだ。
春の選抜大会、夏のセブンズと今季2冠を達成している報徳学園から19人が選抜された兵庫県代表。
テンポ良くファーストトライを奪う。
前半4分、敵陣5m付近でのラインアウトからいくつかFWを当てた後、すぐに開いて最後は11番・海老澤琥珀選手が飛び込んでトライ。
5点を先制した。
一方、自らのペナルティをきっかけにトライを与えてしまった栃木県代表。
「ノーペナ徹底な、大丈夫」と10番・伊藤龍之介キャプテンが声を掛ければ、15番・青柳潤之介選手も「バックス一回集合しない?」とリーダーシップを見せる。
すると敵陣に入り攻撃を重ねた栃木県代表。
いくつも何度もフォワードを当てながら、機を伺う。
一度はターンオーバーされてしまうが、それでも再びポゼッションを得るとゴールライン目前まで迫った。
敵陣22m内でプレーを続けること、実に5分以上。
ゴール前でのマイボールスクラムから、最後は1番・木村陽太選手が押し込む。前半19分、ゴールも成功し7点を返した。
取り切った瞬間に、両手でガッツポーズを見せたのは伊藤キャプテン。
夏の菅平合宿で國學院栃木が報徳学園と対戦した時には「敵陣に行っても取り切ることができなかった。報徳はきちんと取り切っていた、そこがトップチーム」との学びを活かした。
しかし直後のキックオフリスタートからノーホイッスルトライを決めるは兵庫県。
14番・長谷川諒選手が右隅にグラウンディングすれば、10番・伊藤利江人選手のコンバージョンゴールも成功し7-12。再び逆転に成功し、前半を折り返した。
後半最初に魅せたのは栃木県。SO伊藤キャプテンが抜け出しトライを決めたかと思われたが、デッドボールラインを割りノートライに。
しかしゴール中央部でペナルティを得れば、すかさずPGを沈め3点を取り返した。
10-12、差は2点に縮まる。
3番・佐藤蒼選手が伊藤キャプテンの背に手を当てる
兵庫県代表の強さは、取られたらすぐにテンポ良くトライを取り切れる所。
後半14分、キックで陣地を押し上げると、ボールを左右に振ってスペースを生み出し、最後は13番・炭竃柚斗選手がトライ。
コンバージョンゴールも成功し、この日最大となる9点差をつけた。
しかし、勝負のラストクオーターで息を吹き返したのは栃木県だった。
後半29分に14番・大友佳介選手が右隅でトライを取り切ると、15-19。まずは1トライで逆転出来る位置につけた。
しかし直後のブレイクダウンでファイトしたのは兵庫県。ペナルティを与え、万事休すかと思われた。
だが諦めない栃木県。
ボールを奪い返し、自陣からバックスが駆け上がると、ペナルティを得て相手陣5mでのラインアウトを獲得した。
6番・櫻井瑛太バイスキャプテンは言う。
「スタンドオフである伊藤キャプテンは『フォワードに負担を掛けて申し訳ない』と言うけれど、僕たちFWは去年から出ているメンバーばかり。そこが強みでもあると思っているので、僕は逆に頼って欲しいな、と思っています。伊藤・青柳に負担をかけまくっているので、せめてものボールの繋ぎ目としてでもいいから、FWを頼って欲しいしその分FWは頑張らなきゃいけないと思っています。」
バックスがエリアを押し上げ、得たラインアウト。
だから今度は、フォワードの出番。
この日何度もダブルタックルに入り、ディフェンスでもアタックでもとにかくFWが当たり続け疲労が蓄積されている様子も見えたが、最後は仕留める。
ラインアウトからモールを組むと、ジリジリと前に出た。
「それまでのモールは、兵庫県が頭を入れて押し返してきた。でもこの最後のモールだけは、引いて倒そうとしてきたんです。だから『いける』と思って思いっきり押し込みました。僕たちの『勝つ気』が勝ったのかな、と思います。(櫻井バイスキャプテン)」
最後グラウンディングしたのは、2番・尾池政人選手。
トライを告げる笛が吹かれると、全員が抱き合って喜びあった。
試合終了間際の逆転勝ち。
1点差で勝ち切った栃木県が、2回戦進出を果たした。
栃木県・吉岡肇監督(國學院栃木)
「苦しくなったら、スクラムでもモールでも最後は地元・栃木がお前たちの背中を押してくれるから。大丈夫だから。」と声を掛け、試合に送り出した。
ラストワンプレーまで諦めない執念を感じた。よくやってくれました。
今年は僅差で敗れる試合も多かったが、そういう試合を経験したことが今日の試合に活きたと思う。
伊藤龍之介キャプテン(國學院栃木)
今年はずっと勝ちきることができなかった。最後の19点目を取られた時に「またダメなのかな」とよぎったこともあった。
それでも「このままじゃダメだ。ここで負けたら、今までの俺たちと変わらない」と奮い立たせることができたのは、対戦相手が兵庫県代表と決まってから積み重ねてきた、徹底した準備があったからこそ。
その準備してきたことを出さないで終わるのはもったいない、出せば絶対勝てる。ここで俺たちの勝てない流れを変えよう、と声を掛けた。
地元国体。これだけ応援に来てくれていて、地元開催で1回戦負けほど恥ずかしいものはない。絶対に負けられないという気持ちは、みんなにあったと思う。
櫻井瑛太バイスキャプテン(國學院栃木)
僕たちは今年、選抜では佐賀工業に、関東大会では流経大柏に敗れ、大事な試合で勝つことができなかった。
初戦が兵庫県代表だと決まってから、ここだけに照準を合わせてできる限りの準備をしてきた。
去年の花園準優勝は、去年の代。僕たちはまだ何も成し遂げていないという話を全員でしていた。流れが悪くなった時も全員が「ここで勝たなきゃ」と思えたので、最後まで走り切ることができたのだと思う。
兵庫県・村山太我監督(川西北稜)
相手のフォワードの圧力が強いことは分かっていた。受けに回らないように、と意識していたが、想定よりもその圧力が強かったと選手たちが感じたように思う。
長崎県(選抜)×島根県(石見智翠館高)
石見智翠館高校の単独チームで出場した島根県代表。対するは、コンバインドチームを編成した長崎県代表。
前半を長崎県の7点リードで折り返すと、後半最初のトライも長崎県。
9番・本多旺人選手が内に返した所、15番・堀田倭選手が走り切ってトライ。
その7分後には6番・亀井秋穂選手がトライを奪った。24-7、長崎が大きくリードする。
一方の島根県は、FW第1列が全員変わった直後のスクラムでペナルティを獲得する。
そのまま敵陣深くまで攻め込めば、最後は15番・田中稜也選手がトライを決めた。
しかし、トライを取られた直後の円陣で、肩を組みきつく一つにまとまったのは長崎県。
「上手くいかないことは当然ある。円陣の半径が狭いチームが絶対に結束力強い」と、今﨑克也監督は事前のミーティングで話をしていた。
7月から週に1度、水曜日にナイター練習を重ね、また幼い頃からともにラグビーに興じてきた仲間とだからこそ、自然と円陣は小さくなっていく。
最終スコアは29-14。
長崎が1回戦を突破した。
2回戦の相手は大阪府代表。「自分たちはチャレンジャー。しっかりとチャレンジすること、引かずに最初から爆発してブレイクダウンやコンタクトの部分で圧倒できるようにがんばりたいと思います。(白丸智乃祐キャプテン)」
島根県は悔しい1回戦負け。
大沢櫂キャプテンは「全て僕の責任です」と枯らした声で語り出した。
「アップの時からこんな声になってしまった。声で鼓舞するのが僕のスタイルなのに、それができなくなった。苦しい時に声を掛けられず、適切な判断を下せなかった」と悔やんだ。
それでも最後にジャッカルを決め、ボールを奪い返す見せ場も作った。
「あのジャッカルが僕の存在意義。」
だがそれ以外の部分では「この試合での僕の存在意義は最悪でした」とひたすらに矢印を自らに向けた。
花園開幕まで、残り3ヵ月弱。
「上げ切れない経験を、今することができた。この悔しさをプラスに捉えるしかない。だからこそ島根に帰って、また積み上げられるようにやっていきたいと思います。」
誠実に真っ直ぐに、力強く言葉を紡いだ。
島根県・安藤哲治 石見智翠館高校監督
相手のハーフ団が速く、どれだけディフェンスを頑張っても、あのテンポで出し続けられると我慢しきれなくなってしまう。
個々のタックルの高さ、早いテンポになった時に外され抜かれることが後半は増えてしまった。
ディフェンスでのコミュニケーションがうまく取り切れずに、トライを重ねられてしまった。相手の9番のテンポがとにかく速かったです。
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