オール大阪
試合後、膝から崩れ落ちたオール大阪の選手たち。
「楽しかったです」と話す松岡キャプテンの目にも、涙で濡れた痕が残っていた。
「このチームで戦う最後の試合。優勝できなかった悔しさと、自分がもっとできたのではないかという想いと。もう一歩チームを引っ張りたかった」とキャプテンシーをのぞかせた。
梶村監督も「この1点差の理由を、各チームに戻ってそれぞれのチームに還元して欲しい」と話す。
強さと巧さ、そして突き抜けた明るさを兼ね備えたオール大阪のチャレンジは、準優勝で幕を閉じた。
大阪府・梶村真也監督(関西大学北陽高校)
1点差での敗戦。選手たちは60分間自分たちの良さを出して戦ってくれました。
スタッフも楽しむことができましたし、僕も楽しかったです。特に最後の3分間は面白かったですね。
だからこそ勝たせてあげたかった。生徒たちに申し訳ないです。
――監督にとっての今大会の『いちご一会』とは
日に日に変化するチームの姿です。「こんな選手がいる」「こんなこともできるのか」と良い意味で予想を裏切ってくれました。いろんな人が集まってラグビーをすること、みんなで協力しながら人のためにプレーすること。凄いものが作れるのだと改めて感じました。
ラグビーというスポーツの楽しさを感じることができたこと、選手たちの様々な面を知れたことが『いちご一会』です。
どんな状況でも、誰に対しても笑顔を見せることのできる松岡キャプテン
大阪府・松岡風翔キャプテン(大阪桐蔭高校)
これでそれぞれのチームに戻りますが、試合会場で会ったらこの1点差のゲームを絶対に思い出すと思う。この1点をバネに、みんなで頑張っていきたいと思います。
涙の理由は、悔しさと自分がもっとできたのではないかという、もう一歩チームを引っ張りたかったという想いから。
決勝という舞台を味わえたので、僕自身も大阪桐蔭に帰ってキャプテンとして、この経験を活かしていきたいと思います。
最後まで楽しめました。
――松岡キャプテンにとっての今大会の『いちご一会』とは
いろんなライバルとの出会いです。
最初はチームの仲間が敵でした。ですが日を重ねるごとにワンチームへと変化していって、「戦う相手が敵」という考え方に変わっていった。
チーム一丸となって楽しく、ラグビーを23人全員ができたのではないかなと思います。
田中景翔バイスキャプテン(常翔学園高校)
ラグビーの技術や戦術面を松沼と2人で担当してきました。良いチームになったな、と思います。
常翔学園ではキャプテンを務めているので、チームに帰ってもこの経験を活かして、花園では日本一を狙っていきます。
西川康士郎選手(東海大大阪仰星高校)
僕たちはコンバインドチームで、相手は東福岡中心。勝ちたかったです。
今日でオール大阪のメンバーとラグビーできるのも最後。まずは大阪府内でみんなで切磋琢磨して、それぞれのチームで東福岡にリベンジできるよう、頑張りたいと思います。
オール福岡
大会2連覇。しかしこの2年間、国体自体が開催されることはなかった。
松井監督が同役職に就いたのは2年前。1年前は「さあこれから合宿に出発するぞ、というタイミングで三重国体中止の連絡が入った」という。
オール福岡の監督3年目、しかし初めての国体。
「やっとです。2年間、準備しては中止、準備しては中止。やっとできました。だからノーサイドの瞬間は、放心状態で(笑)色んな想いも込み上げて、安堵という言葉が一番近いかもしれません」と時折言葉を詰まらせながら、心境を語った。
「周りの人がいてくれたから、ここまでこれた。感謝しかありません。」
熱い監督と、その想いに引き上げられるように熱量を上げていった選手たち。チームスローガン『BURST』の『b』を象ったポーズで、笑顔で写真に納まった。
福岡県・松井裕平監督(福岡工業高校)
試合の入り、大阪府の圧力で10点差をつけられた時には不安もありました。それでも前半最後にトライを取り切ってくれた所は、栃木に来てマインドセットの話をずっとしていたことが活きたのではないかなと思います。
思い切ったスタンドオフ変更で永井くんもプレッシャーが大きかったと思いますが、冷静に、気持ちに波を打たずにやり切ってくれたことは凄いなと思います。
――永井選手からは「出来ないです」という言葉もあったが
聞かないようにしていました(笑)もう強引に、託しました。スタンドオフが出来ないことはないはずなんです。ただ国体に入ってから準備していた起用方法ではなかったので、本人も驚いたと思います。よくやり切ってくれました。
――2年間中止を挟んでの2連覇。大会を総評して
今年の3年生は、いろんなものを我慢してきた代です。今まで(中止となり)できなかったことを全て出そう、ということでキックオフしたオール福岡でした。だからそんな気持ちを爆発させるためにも掲げたテーマが「BURST」です。
1日1日と、それが浸透していく様を感じることもできました。この決勝という舞台でキツいシーンもたくさんありましたが、最後まで集中力を切らさずに立ち返る場所を作り上げてくれた結果、素晴らしい結果に繋がったのだと思います。
栃木県さんも直近2年間の国体がなかったので、いろんなことが分からない中での準備・運営だったと思います。自分たちがラグビーをさせてもらえる環境を作ってもらえたことに感謝しています。
「対戦相手にもレフリーにもリスペクトをして、応援してくれる周りの方々がいるから自分たちもラグビーができる。もう一度初心にかえって決勝戦に挑もう」と話をしていました。
ここに辿り着けなかったメンバーもいます。「このメンバーで試合ができるのも、これが一生で最後。60分間、噛みしめてバーストし続けよう」と送り出しました。
選手たちが頑張った結果、こういう結果を得られて本当に感謝しかありません。
大川虎拓郎キャプテン(東福岡高校)
福岡として頂点を取れたことが良かったです。
ただし、勝てたことはよかったのですが、内容は100点ではありません。セットプレーでも負けていて、花園では肝となる部分。しっかり修正して、残りの日々も頑張っていきたいと思います。
――大川キャプテンにとっての今大会の『いちご一会』とは
大会を準備してくださる方々が、元気よく挨拶してくださった。「今日もあの人いるんだな」と思うこともありました。
試合には出場しない地元の高校生たちも、運営補助や後片付け、アナウンスなどしてくださっていた。本当に感謝しています。
様々な高校生たちと出会い話せたことが、いちご一会です。
上嶋友也選手(東福岡高校)
雨の中で難しいゲームでしたが、しっかりエリアを(14番・馬田)琳平がとってくれた。得点を取って帰ってこれたことが勝因だと思います。
高木城治選手(東福岡高校)
高校に入って初めての優勝。嬉しいです。このまま良い調整をして、花園に向け調子を上げていきたいと思います。
永井大成選手(東福岡高校)
2年ぐらいスタンドオフはやっていなくて、いきなりの指名。サインも完全には分からず、しかも交代したのが前半17分。僕がスタンドオフになったら負けるな、と思いました。それでもアタックがダメでも、ディフェンスで頑張ろうとチャレンジしました。
最後までチームに迷惑をかけてしまったのですが、勝てたので結果オーライで良かったです。足を引っ張ってしまいましたが、周りのみんながカバーしてくれて、FWも体を張ってくれた。チームの勝利だと思います。
決勝戦の相手はいろんな高校から強い選手たちが集まっている大阪。僕たちは東福岡が主体となったチーム。この優勝は相当な自信になったと思うので、あと3ヵ月、チームに戻って鼓舞し合って、最高の、最強のチームを作っていきたいと思います。