前半17分の奇策。福岡県、笑顔の優勝。大阪府は「仲間がライバル」から「戦う相手が敵」へと変化し準優勝|いちご一会とちぎ国体 ラグビー少年男子・決勝

10月2日(日)から始まった第77回国民体育大会「いちご一会とちぎ国体」ラグビーフットボール競技会。

10月6日(木)には少年男子の決勝が行われ、福岡県代表が2大会連続7回目の優勝を決めた。

&rugbyを応援する

試合概要

「いちご一会とちぎ国体」第77回国民体育大会 ラグビーフットボール競技 少年男子決勝

【日時】
2022年10月6日(木)

【場所】
佐野市運動公園 清酒開華スタジアム

※1回戦の模様はこちら
※2回戦の模様はこちら
※準決勝の模様はこちら

スポンサーリンク

試合詳細

福岡県(選抜)×大阪府(選抜)

13℃に満たない外気温、そして冷たい雨が降り続ける中行われた決勝戦。

キックオフの笛が鳴るおよそ5分前、笑顔で円陣を組んだのはオール大阪の選手・コーチ陣たち。

テーマは笑顔。そして、コネクション。

このチームで戦う最後の試合、仕上がり具合を感じさせる。

一方の福岡県も、親指と人差し指で丸を作り、円陣を組む。

気持ちを爆発させよう、という想いを込めてつけられたスローガン『BURST』の『b』を象ったハンドサインを中心に、掛け声を合わせた。

所属するチームの円陣では大きな掛け声を出すことがあまりない、東福岡高校の選手が中心のオール福岡。

初戦ではスタッフが気付くまでなかなか輪に入れない選手もいた。

それが最終戦では、自然と全員が輪の中に入り、これまでで一番揃った声が発せられる。オール福岡もまた、ひとつのチームとしての完成形を描いていた。

スポンサーリンク

福岡県ボールのキックオフで試合が始まると、まず主導権を握ったのは大阪府だった。

素早いブレイクダウンへの寄りで、1つ目のジャッカルを成功させる。

勢いを加速させるは大阪府。福岡県ボールのスクラムで出されたサインプレーも完全に読み切り、9番・田中景翔バイスキャプテンががっつりとタックルに入った。

2本目のジャッカルも成功させれば、やや距離のある場所からPGを狙い、13番・ファイアラガ 義信ダビデ選手が沈める。

前半11分、大阪府が3点を先制した。

勢い止まらないオール大阪。福岡県ボールのラインアウトが展開された先でボールを捕ったのは大阪府8番・藤原蒼士選手。

勢いよくラインブレイクすれば、一気に敵陣深くまでビッグゲイン。ゴール目の前で一度ポイントを作ると、開いた先で10番・西川康士郎選手が小さくボールを蹴り上げた。

素早く反応したのは、9番・田中バイスキャプテン。内側を走り込み、インゴールでボールを押さえる。

「コールもサインも特になかったが、蹴るだろうな、という判断で飛び込んだ」とはSH田中選手。

SO西川選手も「アドバンテージを持っている中、相手は僕たちがパスで抜きに掛かる準備をしていた。その裏を狙って蹴った」と意図を語る。

コンバージョンゴールも成功し0-10。前半15分、勢いは完全に大阪府にあった。

対する福岡県代表は、ラインアウトを2連続で失敗。雨のためハイボールキャッチでもミスが続き、なかなか勢いを生み出せない。

だから前半17分、奇策を放つ。

なんとスタンドオフを10番・井上晴貴選手から、スタンドオフとしては約2年のブランクがある13番・永井大成選手に変更したのだ。

その意図について、松井監督は「大阪の圧力が強く、なかなか起点を作れていなかった。流れを変えるためにも、思い切ってディフェンスの良い永井をスタンドオフにした」と説明する。

代わりにアウトサイドセンターに投入した22番・吉良陸人選手も「アタックもディフェンスもともにキレる選手。流れを変えたかった」と、どうにか勢いを手繰り寄せようと試行錯誤した様をうかがわせる。


前半17分からスタンドオフを務めた永井選手(写真左)

監督から「永井スタンド」の声が掛かると、驚いた表情で「俺、できないです」と思わず返した永井選手。

それもそのはず。「スタンドオフは約2年ぶり。国体に入ってからサイン含めてスタンドオフの練習はしていなかったので、僕がスタンドオフをやったら負けると思った」と正直な気持ちを吐露した。

でも、やるしかない。仲間とコミュニケーションを取りながら、司令塔の位置についた。

もちろん、すぐさま流れを掴むことはできない。

前半21分、両LOがファイトしようやくブレイクダウンでジャッカルに成功したが、しかし攻めあぐねる。攻撃に転じても、どうやって崩せばいいのか全員が同じ絵姿を描けていない雰囲気が漂っていた。

スポンサーリンク

そんな重たい空気を突き破ることができたのは前半終了間際。

前半29分、大阪府のダイレクトタッチから敵陣22m手前でマイボールラインアウトを獲得すると、ラインアウトモールでペナルティを得る。もう一度ラインアウトからモールで前進し、そのままFW戦で我慢すれば、最後はゴール左隅に5番・舛尾緑選手が押し込んだ。

1トライを返して前半終了。

5-10と大阪府の5点リードで前半を折り返した。

スポンサーリンク