トイメンはラグビー部に誘ってくれた憧れの先輩。そして、勝ちたい相手。|帝京×同志社|第59回全国大学ラグビーフットボール選手権大会 準々決勝

遡ること6年前。

大阪府枚方市立楠葉中学校で、2人のナンバーエイトは出会った。

きっかけは、よくある「部活動の勧誘」だった。

中学校に入学したばかりの林慶音選手(現・同志社大1年、No.8)は、2歳年上のラグビー部の先輩から誘いを受ける。

「一緒にラグビーしてみないか?」

声の主は、奥井章仁選手(現・帝京大3年、No.8)。

小学生まではサッカー少年で、体も大きかった林選手を、奥井選手は迷わずに誘った。

ひとたび楕円球を握れば、その魅力に引き込まれるまで時間は掛からなかった。

「中学ではラグビーをしたい。」

サッカーのコーチをしていた父に、林選手はそう打ち明けた。

快く送り出してもらった。

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高校も、奥井先輩を追って大阪桐蔭へ進学した林選手。

だから、お互い別のジャージを着て試合をするのはこの日が初めて。

初めての対戦が、大学選手権の準々決勝。

奥井選手は、先輩として、そして帝京大学として「『差』を見せつけたかった」と打ち明けた。

そんな『差』が現れたのは、前半、帝京がゴールラインを背負った時。

同志社がアタックを継続すると、ボールは林選手の手に渡った。

対面に立っていたのは、赤いジャージの8番をつけた奥井選手。

「8番対決で(奥井)章仁くんにしっかり勝ちたい、と思った。前に出よう、と思って当たった」と、林選手は迷わず力強く体を当てる。

しかし、圧倒したのは奥井選手。「ちょうど対面に立ったので、相手(林選手)も僕のことを意識してファイトしてくれると思った。自分もしっかりと受け取って、返してあげないと」と、重量のあるタックルで前進を許さない。

「一発目の重たさ。まだまだだな、と感じました。(林選手)」

良い所を出し切れず、完封負けを喫した。


左手首には、『Battle』の文字が。「前日ミーティングで、監督から『最後はバトルやぞ』との言葉があって。今日のキーワードだな、と思って腕にしたためました。(林選手)」

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林選手には、この一戦を経て変わったことがある。

これまでは、尊敬し、背中を追う存在だった『憧れ』の章仁くん。

だがここ秩父宮で「背中を追うのではなく、同じ土俵に立ちたい。それよりも上に行きたい」と願うようになった。

『尊敬する先輩』から、『勝ちたい相手』へと変わった目線。

奥井選手は言う。

「No.8はフォワードの要であり、難しいポジション。1年生で試合に出続けたのは、すごいと思います。

だけどきっと彼自身、今日の試合で学んだこともきっと多いと思う。今日の経験を活かしてお互いに頑張って、また対戦できたら嬉しいです。」

林選手にとって初めての秩父宮は、苦い思い出と、涙と。そして、新たな覚悟が決まった舞台となった。

目指すは「チームにはこいつがおらなあかんな」というNo.8。

今秋全ての試合で8番をつけたが、しかしまだ道半ば。「もっと求めていきたい。」

来年も、大学選手権の舞台に。そして、帝京大学にリベンジを。

強くなって帰ってくる。


高校ラグビーと大学ラグビーの差をとにかく感じた1年だった。「高校では通用していたフィジカルが、まだまだでした。」

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