60分の物語
報徳学園
朝日差し込む、まだ静けさの残るグラウンドに現れた報徳学園の選手たち。
揃ってバックスタンドへ挨拶に行くと、その帰り道、植浦慎仁キャプテンは泉光太郎ヘッドコーチと大きくハイタッチを交わした。
観客席まで響く程の大きな音に、一戦へ込められた想いを推し量る。
序盤はラストパスの繋がり切らないアタックが続いた。
それでもテンポ良くボールを動かし続け、11番・海老澤琥珀選手の自由自在なステップで相手をかく乱すれば、チャンスは訪れる。
13番・炭竃柚斗選手が、掴まれながらもボールを押し込んだ。
「本当はラックを作ろうとしたんですけど、足を掻いたら行けそうだったので頑張りました。」
ボールを持ったら、必ずゲインを切り続けた炭竃選手。海老澤選手も「報徳には欠かせない選手」と評する大型センターが、新年最初のトライを奪った。
「バックスでデカいのが僕しかいない。僕がゲインを切らないと、報徳のラグビーができないと思った。できるだけ頑張りました。(炭竃選手)」
174㎝、体重95㎏。破壊力は抜群だ。
この試合、人一倍気を吐いた選手がいる。
4番・吉田健十選手。
仲間のエナジーが足りないと見るや、「お前ら、上げろ!」「動け!」と声をあげた。
すると自らもブレイクダウンでファイトする。
相手ボールのラックからボールが出たタイミングを見逃さず、すかさず拾い上げればターンオーバー。エリアを前に進めた。
光るフォワード陣の躍動。
後半28分には、3番・木谷光バイスキャプテンが大きくゲインすると、オフロードで8番・石橋チューカ選手にボールを渡す。サポートについた6番・三羽了選手が、仕留め切った。
フォワードバックス関係なく、誰もがボールを動かすことができる今年の報徳ラグビー。
「フォワードサンキュー!」の声が、ベンチから飛んだ。
前後半で奪ったトライは4つ。しかしそれ以上に、國學院久我山の猛攻を0点に抑えたディフェンスに、チームの成長を垣間見る。
「今日はバックスが足を引っ張った。準々決勝ではバックスが引っ張っていけるように、攻撃力を上げたい」と話した海老澤バイスキャプテン。
次戦・準々決勝の相手は、ディフェンディングチャンピオンの東海大大阪仰星。
夏のセブンズで東海大大阪仰星を破り優勝したあの勢いを、ここ花園でもう一度。