國學院栃木
「ナイスゲームをしないことには勝てない相手。20点取られれば、あれだけ反則が多くなってしまったら、負けます。それでも風下でよく守ってくれた。男らしいプレーを見せられたのではないでしょうか。」
吉岡肇監督は、敗因に「規律とディフェンス」を挙げた。
先制トライを奪ったのは國學院栃木だった。
15番・青栁潤之介選手が体を回転させながら上手くDFをかわしゲインを切ると、次の相手が体を当てる直前にボールを離し、11番・島﨑聖弥選手へと繋ぐ。最後は13番・山田壮選手がボールを押さえた。
10番・伊藤龍之介キャプテンも難しい位置からのコンバージョンを成功させれば、前半24分、7点をリードする。
しかし、簡単には流れに乗せてくれないのが東海大大阪仰星。
後半10分、逆転を許す。
試合時間残り10分には、8点差をつけられた。
少しずつ戦況が苦しくなると、頭を下げる選手たちも増える。
そんな時、やはりもう一度前を向かせる声を掛けられるのは伊藤キャプテン。
「まだ終わってないよ!FW行くよ、ここ!」
「國栃上げろ!エナジー!」と仲間を鼓舞すれば、自らも相手FWを1人で止める気迫のタックルを見せた。
試合中は常に仲間とコミュニケーションを取り続けた伊藤キャプテン
だが、気持ちの焦りはペナルティへと繋がり、ボールを持ちながらも陣地を下げられる。
猛攻を仕掛けたが、東海大大阪仰星の高い壁に阻まれ、ノーサイドの笛が鳴った。
13番・山田選手は言う。
「僕たちには伸びしろしかなかった。負けたことで、成長が止まってしまうことが悔しい。」
1年間チームの先頭に立ち、どんな時も道標で在り続けた伊藤キャプテンも続ける。
「優勝を目標に走り始めたこのチーム。選抜大会や関東大会で悔しい思いをした時期もあったけど、最後の花園で優勝を獲ることだけを見てやってきた。とても悔しいです。」
涙は見せず。だけどしっかりと、自らの感情を言葉にした。
「試合を重ねる毎に強くなっていきました。このチームに自信があった。だから今は、悔しい、では表せない想いでいます。チームを、監督を勝たせてあげたかったし、もっとこのチームで試合がしたかった。」
溢れる想いを抑えるかのように、机の上に載せた両手を、ずっと合わせ続けた。