一番やりたかったチームと、一番のゲームを。|佐賀工業×東福岡|第102回全国高等学校ラグビーフットボール大会 準々決勝

東福岡

ピッチインする選手たち一人ひとりと握手を交わし、送り出した藤田雄一郎監督。

笑顔で声を掛けた相手はNo.8藤井達哉バイスキャプテン。力強い音の響くハイタッチを交わしたのは、15番・石原幹士バイスキャプテン。

円陣を組み、いつも通り呼吸を合わせ、60分はスタートした。

試合開始1分で見せた、今年の東福岡らしいプレー。

接点で相手にプレッシャーを掛け、ボールをこぼさせると10番・高本とわ選手がダウンボールに飛び込んだ。

すると前半4分、早速チャンスは訪れる。

佐賀工業が自陣22mに入り込めば、FB石原選手が足に絡みついて出足を遅らせた。

一気にプレッシャーを掛け、ブレイクダウンでターンオーバー。12番・西柊太郎選手が大外にキックを蹴り上げ、14番・馬田琳平選手がキャッチし右サイドを駆け上がり、内側でサポートについた9番・髙木城治選手へ託せば先制のトライを決めた。

だが、次のリスタートキックオフで、直ぐに取り返される。

自陣深くでのオブストラクションから佐賀工業に5mラインアウトの機会を与えると、そのままモールを押し込まれた。

少し慌てる時間帯。

だからこそ、自分たちが1年間かけて積み上げてきたものに立ち返った。

SO高本選手らの好タックルでラックを作ると、またしてもブレイクダウンでターンオーバー。

一気に外へ展開すれば、12番・西選手、11番・上嶋友也選手、15番・石原選手と繋げてトライを奪った。

前半16分、この試合最大となる9点差をつける。

このまま波に乗るかと思われた。

しかし、嵩んだハンドリングエラーとペナルティ。ラインアウトも、2本連続で落とした。

前半19分・29分には2つのPGを許し、3点差に詰め寄られ前半を終えた。

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ハーフタイムを終えピッチに戻ると、6番・大川虎拓郎キャプテンは真っ先にレフリーのもとへ赴いた。

丁寧にプレーの確認をしていると、続いて近寄ったのは13番・永井大成選手。「すごい楽しいです!」と、ラグビーができる喜びを噛みしめた。

だが、後半も続いた佐賀工業の時間帯。

後半10分、佐賀工業にラインアウトからのサインプレーを完璧に決められ、逆転を許す。

4点のビハインド。

5番・舛尾緑選手は、両手で『落ち着いて』のポーズをとり、はやる気持ちを落ち着かせた。

「自分たちのミスで攻め込まれたので、精神的にきていた。自陣の時が一番辛かった」と、SH髙木選手は打ち明けた。

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後半20分まで、スコアをリードしていたのは佐賀工業。

少なからず、ピッチ上から焦りも感じた。

だが、自らの役割を遂行し続けることができたのは、これまで積み重ねてきた自信があるから。東福岡高校ラグビー部143人を代表して、グリーンのジャージを着ているから。

12番・西選手は何度もゲインラインを切った。

8番・藤井選手も、何フェーズも連続で体を当てる。

スクラムを組めばペナルティを奪い、序盤は苦戦したモールDFを止めきった。


ガッツポーズを決めた21番・生島拓海選手。両ロックもハイタッチを交わした

我慢を重ね、迎えた後半21分。その時はやってくる。

9番・髙木選手、5番・舛尾選手、12番・西選手と細かく繋ぎきると、7番・中川一星選手が右手を伸ばした。

再度の逆転となる、値千金のトライ。

中川選手は「最高の一言です」と笑みを浮かべた。

3点のリードに変わった、後半ロスタイム。

敵陣でペナルティを得ると、東福岡はペナルティショットを選択した。

残り時間を確認しながら、キッカーである9番・髙木選手のもとへ近寄り言葉を掛けるはSO高本選手。

外したら、相手にボールを確保されカウンター攻撃を受けるリスクもあった。

だから髙木選手は、思いっきり右足を振り抜く。

ボールは左側のポールに当たり、そのままポールの間へと吸い込まれていった。

振り向き、ベンチの方を向いて俯きながら見せた小さな、だけど力強いガッツポーズ。

「自分が足を引っ張った分、取り返さないとと思っていた。結果的にキッカーとして取り返せて良かった」と、SH髙木選手は安堵の表情を見せた。


初めての花園第1グラウンドは「やっぱり緊張しました」

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1月5日。

チームがスタートした当初から、監督・選手たちはこの日に特別な思いを抱き続けてきた。

5年連続ベスト4止まりという歴史を打ち破るには、絶対に乗り越えなければならない1月5日の壁。

「1月5日は特別な日です。この日を越えるために準備してきました。勝ちに来たので、どんなゲームでも自分が判断してやっていこうと思います。」

この1年間で最も引き締まった、そして少しばかりの緊張も交えた表情で、大川キャプテンは誓った。

藤田監督も、キャプテンと同じ言葉で選手たちに託す。

「ここを越えるために1年間準備してきた。勝ちに来た。この山を越えていきます。」

チーム東福岡、いざ、乗り越えるべき一戦へ。

京都成章との準決勝は、1月5日 14時30分にキックオフを迎える。

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