60分の物語
大阪桐蔭
激しくぶつかり、緊張感のある試合展開が続いた序盤。
先制のスコアを奪ったのは、大阪桐蔭だった。
前半11分、ラックからボールを出すと右に展開。
9番・須田龍之介選手から6番・新井瑛大選手、10番・上田倭楓選手、12番・上田倭士共同キャプテンへと繋ぎ、最後は11番・福永然選手が力強いキャリーで相手DFに掴まれながらも、トライへ持ち込んだ。
好プレーも目立った。
6番・新井選手のタックル。
10番・上田選手の裏に蹴り上げたキックで大きくエリアを前進させれば、ラインアウトをクリーンキャッチし4番・神野康生選手がこれまたキレイにラインブレイクした。
だが2つのトライと1つのコンバージョンゴール、1つのPGで逆転を許すと、後半5分には10点のビハインドに。
追いかける苦しい展開にも、大阪桐蔭陣からは力強い言葉が飛び続けた。
スクラムでペナルティを取られた時には「FWのミスや!取り返すぞ!」と掛けた5番・中村翔太選手。
共同主将の12番・上田選手からも「桐蔭、ここやぞここ!」と鼓舞する声が響く。
トライを取られると、真っ先に手を広げ、仲間を呼び寄せ口火を切った12番・上田共同キャプテン
すると後半15分、チャンスは訪れる。
ラックから右に展開すると、ライン際でキックパスを蹴ったのは7番・松岡風翔キャプテン。12番・上田共同キャプテンが拾い上げ、9番・須田選手がそのままゴール中央に走り込んでグラウンディングした。
3回戦に続き、足技でトライを演出した松岡キャプテン。
「パスが放れないことは分かっていた。足で蹴るしかない、裏に蹴れば内側に共同主将の12番・上田倭士が走り込んでいるのが分かっていた。」
だからキックという判断になった、と話す。
だが、届かなかったあと3点。
僅か1つのペナルティゴール差に泣いた。
「京都成章さんの方が我慢強かったのだと思います。」
ペナルティ数は京都成章の方が3つ多いが、その時間帯とエリア、様々な要素が『我慢強さ』として表現された。
チームを率いた松岡風翔キャプテンは、ノーサイドの笛を聞くと、膝を落とす仲間に駆け寄り、抱き寄せた。
毅然とした態度で14人を整列させながら、仲間の方を向き声を掛ける。
「下を向くような試合じゃなかった。だから、胸を張っていい。負けた責任は、キャプテンである自分が取る。」
みんなは良いプレーしてくれました、と、どこまでも主将で在り続けた。
だからこそ、続く世代に願うことはただ一つ。
「この舞台を経験できた後輩は多くいる。来年こそは強い大阪桐蔭を。」
インタビューを終えると、ともに出席していた11番・福永選手と笑顔で握手を交わしてからロッカーへ戻った松岡主将。目は赤かったが、涙は一切見せなかった。