ブレイクダウンへの判断も光る。
相手のパスの軌道が乱れると、一瞬で人が集まる東福岡の選手たち。一気にターンオーバーすれば、そこからアイデンティティとして根付いている東福岡の攻撃を繋げる。
2本目のトライは、そんなブレイクダウンでのターンオーバーから。
自陣5mでの相手ボールラインアウトから出たファーストフェーズに対し、一気に5人で仕掛けた。思いっきり相手選手を押し返せば、見えたボールに飛び込んだのは7番・中川選手。自陣ゴールラインからハーフウェーまで、14番・馬田琳平選手のタッチキックで戻した。
その相手ボールラインアウトをクリーンスティールすれば、そのまま逆サイドに振りきって大外で15番・石原幹士選手が走り切る。
12点差をつけた。
ゴール前でのFW戦へと突入すると、「頭上げろよ!」と声を掛け続けた石原選手
しかし前半23分にはキックチャージからトライを許し、後半1分にもゴール正面でのPGを与えると、あっという間に2点差まで詰め寄られる。
張り詰めた緊迫感。
そんな流れを変えたのは、一本のキックパスだった。
後半10分、SO高本選手が右足の甲で蹴り上げた、裏へのパントキック。
両ロック、両センターの計4名が追いかける中、12番・西柊太郎選手が追いつく。そのままゴールに飛び込んだ。
セブンズでの負傷から僅か5か月半。復帰戦が花園2回戦・開志国際戦だったとは思えないほど、チームメイトとの連携は完璧だった高本選手。藤田監督でさえ「菅平もいたんじゃないか」というほどの違和感のなさである。
タイミングも軌道も場所も全てが満点のトライアシストで、まずは9点差に広げた。
絶対に優勝してやる、という気持ちで挑んだ。それが達成できてうれしい。他の部員もいる中で、こんな状態の僕でも選んで頂いた。そこは責任と自覚をもって、絶対に勝利に導くという覚悟を持った
そこからの東福岡は強かった。
後半14分から15分にかけて、報徳学園の猛攻をいくつものタックルで凌ぎ切ったディフェンス。確立した『ボールを持っていない時がHappy』な文化を、ここ花園・決勝の舞台でも貫いた。
相手ボールラインアウト前には「グリーンウォール」の声が選手たちから響く。緑の壁が、このチームのプライドとなった。
すると相手のノットストレートを誘い、マイボールスクラムから13番・永井選手が左サイドで力強くゲインラインを突破すれば、最後は大外に控えし11番・上嶋選手がトライを取り切った。
ラストパスを放った永井選手は、その場で膝をつき右手でガッツポーズ。すぐさま駆け寄ってきたFB石原バイスキャプテンと、ハイタッチを交わした。
後半23分にはスクラムから2フェーズ目で5人をなぎ倒しながらトライを決めた藤井選手。
28分には12番・西選手から2人飛ばしのパスを受けた11番・上嶋選手が約80mの力強いランでハットトリックを決めた。
「外で待っていたら良いパスが来た。スタンドオフの(高本)とわ、センター2人に感謝です。(上嶋選手)」
記憶にも記録にも残る結果を残せて嬉しい。僕たち東福岡は、他のどの学校よりも感謝の気持ちを持って今大会に臨んだ。ラグビーを楽しんで、トライも取れて、試合にも勝てた。みんなのおかげで取れたトライです。