悔いはない、完全燃焼。昌平、シード校から初めて奪った2トライでベスト32|昌平×京都成章|第102回全国高等学校ラグビーフットボール大会 2回戦

最後の60分

京都成章の連続トライからスタートした、花園2回戦。

強くて厚い、巧みなプレイヤーを擁する京都成章が、2本の先制パンチを見舞った。

一方の昌平、序盤は後手に回ったものの、ひとつのタックルをきっかけにペースを掴む。

タックラーは、橋口博夢キャプテンに代わってゲームキャプテンを務めた15番・濱田匠バイスキャプテン。

前半15分、右の大外で抜けられそうな所、タックルに飛び付き京都成章11番・田中眞椰選手をタッチに押し出した。

そこから何度かのマイボールラインアウトでモールを形成し、連続ペナルティを得ると、昌平はエリアを大きく回復する。ゴールラインまで、あと5mと迫った。

だが仕留め切れない。一度ボールを手渡すと、グラウンドを広く使った京都成章のアタックに翻弄されてしまう。前半22分、京都成章10番・本橋尭也共同キャプテンのパスダミーから走り抜けられ、そのままトライを与えた。

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前半を3トライ差で折り返した後半、反撃に出たい昌平だったが、またしても序盤に2本連続でセットプレーからトライを許す。

前半と同じような展開か、と思われたが、違ったのは決め切る力。

後半12分。

7番・堀江凛選手と8番・西村泰士選手がダブルタックルで相手のボールキャリアを押し返すと、ペナルティを獲得。

敵陣5mでラインアウトモールを組み、そのまま押し込んだ。

グラウンディングしたのは、全国大会では初めてのトライとなる8番・西村選手。

磨いてきたモールでのトライに、全員が体いっぱいに喜びを表した。


「モールは昌平のプライド。気合いで取りました。(5番・石坂侑人選手)」

念願の1トライは、勢いをもたらした。

徐々に接点で前に出られるようになり、またしても7番・堀江選手が繰り出した粘り強いタックルで、相手のペナルティを誘った。

すると、続く攻撃で魅せる。

マイボールラインアウトから一気に逆サイドへ展開すると、大外でボールを受け取った1年生ウイングの14番・山口廉太選手が裏の空いたスペースへボールを蹴り上げる。

12番・井﨑克選手が追いつき、オフロードを放った先で再び14番・山口選手がボールを蹴り込めば、インゴールで追いつきグラウンディングした。

昌平高校史上初めて、花園2回戦での2トライ目。

選手も、ベンチも、みなが喜んだ。

しかしその後は、再び京都成章の圧力を受ける。試合終了間際に1トライを返され試合終了。

12-40。目標としていた花園での年越しには、届かなかった。

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風の影響を受け、パントキックがことごとく風に押し戻される苦しい時間帯もあった。

もちろん、京都成章の成熟した連携に崩される場面だってあった。

だが、モールで当たり負けしなかったこと。FWでトライが取れたこと。そして、バックスでも崩しトライを取り切れたこと。

やりたかったことは、できた。

「新チームになってからの1年間、これまでのどの試合よりも楽しかった」と話したのは、BKリーダーの平岡勝凱選手。

新人戦での悔しい逆転負けから始まったこのチーム。夏も、秋も、苦しい時間は続いた。

だがそんな日々を重ねたからこそ、最後の試合で「楽しい」と感じながらラグビーをすることができたのだろう。

昌平でラグビーがしたくて、花園に出たくて、PR植松選手を誘って昌平に入学した平岡選手。

1年次から3年間花園のピッチに立ち続けた、唯一の選手として。充実感を滲ませた晴れやかな表情で、花園を後にした。

夏からフロントローに挑戦したのは、元フランカーの2番・小山田ロマン選手。

「夏合宿で組んだ100本スクラムの経験が、ここ花園で活きた。何本組んでも疲れなかった」と成長を感じとった。

3番・植松選手は「負けたこと、これが引退試合となったこと、目標としていた花園での年越しが叶わなかったこと。それはもちろん悔しかった」と正直に話す。

だが「プレーに悔いはない。自分が関わったプレーで通用したこともあったし、自分がやってきたことも、コーチ陣から教わってきたことも出すことができた」と、自分たちがこれまで歩んできた道のりに自信を持って花園を終えることができた。

最終戦では、橋口博夢キャプテンに代わってゲームキャプテンを務めたFB濱田バイスキャプテン。

花園に入ってから、キックの精度に苦しんだ。

「なぜだかいつもよりボールが軽く感じてしまうようになった」のだという。練習中には「なんで当たらないんだ」と頭を抱え、膝をついたこともあった。

京都成章戦でも第3グラウンドの風の影響を受け、思うようなキックを蹴ることはできなかった。だが、高校から始めたラグビーの集大成として「やりきった。悔いはない」と話す。

実は濱田バイスキャプテン、第一線からはこの試合をもって退く予定だ。

「納得のいかないプレーも多々あったけど、それも含めて自分の中では完全燃焼できました。」

2年半のラグビー人生、やってきたことを全て出し切った。

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3年連続の埼玉チャンピオンとして挑んだ、4回目の花園。4度目のチャレンジにして初めて、2回戦で2トライを手にした。

昨年の2回戦では、桐蔭学園を相手に0対64。今年はその差を大きく縮めることができた。

何より過去3回戦ったどのシード校とのゲームよりも、最も少ない失点で、一番多くの得点を奪ったのだ。

これまで多くのOB・OGたちが闘ってきた道を踏み固め、埼玉の頂へと上り詰め続けたからこそ縮まった点差。

橋口博夢キャプテンを筆頭に挑んだ『零(ゼロ)』からの挑戦は、確実に大きく一歩、チームを前進させた。

2年生のマネージャー、栗原慶子さんは言う。

「FWがモールでトライを取ってくれた1本目は感動して涙が出ました。2トライ目、グラウンディングしたのは1年生。来年は1年生と2年生が仲良く協力してラグビーをしていこう、という次への切り替えができるようなトライをしてくれたと思っています。」

今年の集大成だった1本目のモールトライ。

そして、来年へと繋がる1年生による2本目のトライ。

「忘れたものを、取りに帰ってこなきゃいけない。(後藤慶悟監督)」

悲願の花園年越しは、後輩へと託された。

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