2月11日に幕を開けた、2022(令和4)年度 第23回関東高等学校ラグビーフットボール新人大会。
大会4日目となった19日には決勝戦と3位決定戦が行われ、桐蔭学園が47-0で國學院栃木を圧倒。コロナ禍での中止を挟み、関東新人大会5連覇を果たした。
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決勝戦 桐蔭学園×國學院栃木
時折雨あし強まる中行われた決勝戦。
先制は桐蔭学園だった。
前半8分、13番・諸田章彦選手のトライで勢いに乗ると、強いFWを活かした密集戦で2つのトライを取り切る。
前半18分には田中健心選手が、その7分後には3番・前田麟太朗選手が押し込み、前半を19-0で折り返した。
後半も勢いの衰えない桐蔭学園。
マイボールスクラムから左に展開すると、13番・諸田選手が左端を駆け抜け後半最初のトライを決めた。
CTB諸田選手からは「桐蔭、ここだぞここ!FW低く!」とスクラム前に声が飛ぶ
圧巻はセットピース。スクラムで圧力をかけクリーンアウトさせず、またラインアウトでも多くスティールした。
この日も変わらず、相手ボールスクラムの時には、ボールが投入される度にバックスから『GO!』の掛け声が掛かる。
12番・白井瑛人バイスキャプテンは言う。
「僕たちはフォワードを信頼しています。僕たちのフォワードならやってくれるだろう、という気持ちを込めて、毎回スクラムに『GO!』と声を掛けています。」
信頼を見える形で伝える、それもまたチームが強くある秘訣なのかもしれない。
後半最後の10分間でみせた、桐蔭学園怒涛の3連続トライ。
一つ目は後半20分。CTB白井バイスキャプテンが蹴り込んだロングキックで陣地を獲得すると、敵陣22m手前での相手ボールラインアウトにプレッシャーを掛けノットストレートを誘う。
組まれたマイボールスクラム、前半から何度も「絶対、央祐」とマークされていたNo.8城央祐キャプテンが左サイドへ持ち出すと、オフロードパスを放った。受け取ったのは10番・萩井耀司選手。掴まれながらも力強くボールを運び、トライを決めた。
後半26分には1年生ウイングの古賀龍人選手がインターセプトを決め、およそ80mを独走。
最後は後半29分、SO萩井選手が蹴り込んだキックパスにインゴールで追いついた12番・白井バイスキャプテンがグラウンディングし、ゲームを締め括った。
決勝戦でもセットプレーで圧倒し、ブレイクダウンにもこだわりを見せた桐蔭学園が、國學院栃木を47-0と圧倒。
見事5大会連続12回目の関東新人大会優勝を果たした。
桐蔭学園
「まだ、キャッチとパス、繋ぎのところしかやっていない。お粗末な所もたくさんありましたけど、それはこれから。幸いにしてこの1月から練習時間を30分伸ばしてもらうことができたので、もう少しやり込めるかな、と。やっと桐蔭学園らしい練習ができるようになってきたなと思います。」
そう話すは、桐蔭学園・藤原秀之監督だ。
藤原監督が幾度も繰り返したのは、「桐蔭学園らしい」という言葉。
様々な制約があり、桐蔭学園が強みとする『細部を掘り下げた奥深い練習』をすることができなかったこの3年間。
ようやく本来の、桐蔭学園らしい練習ができるようになったその喜びは、選手たちの表情からも溢れた。
「今年はタイトルも実績も何もない。だから『すべて(タイトルを)つけていこう』と部員たちと話をしました。自分たちで築き上げなさいよ、と。(藤原監督)」
試合中、選手たちからは大きな声が絶え間なく飛んだ。コミュニケーションはもちろん、仲間を鼓舞する言葉も聞こえる。
「去年本当に不甲斐ない試合をしてしまって。桐蔭学園の歴史を崩してしまった、という大きな責任感を感じているところはあるのだと思います。」
声一つとっても、昨年の反省が起因しているのだと藤原監督は説明する。
「3日、3週間、3か月で何が変えられるのか。まず声を出すことはできるだろう、ということです。」
不甲斐ない試合をしてしまったという責任は、ものすごく強いと思う。そう、2度繰り返した。
「いま、本当に自分たちで何かを掴もうとしています。ミーティングだって、まだまだこれから本気でやれると思う。今ここで優勝したからと言って、どうなることではない。11月19日の神奈川県大会決勝をしっかり見据えてやる、そこだけです。それまでにどれだけ勝とうが何しようが、11月19日にターゲットを置いてやろうな、という話をしています。」
奇しくもこの日は、11月19日まで残りちょうど9か月。9か月後から逆算した日々を、積み重ねていく。
そのためにまず行っているのが、「直球を磨く」ということ。「直球を磨かないと、良い変化球を持ったからって通用しない。だからまずは直球を磨け、と。(藤原監督)」
シンプルに体を当て、前に出る。ボールを繋ぎ、セットプレーにも全力でコミットする。鋭い直球は、唸るほどに強力だった。
桐蔭学園第ラグビー部 第58期のバイスキャプテンを担うは、12番・白井瑛人選手。
キックにトライにとプレーで引っ張る一方、トライを取った選手には駆け寄るキャプテンシーも数多く見せた。
「キャプテンよりキャプテンらしいことをしよう」が信条。
「キャプテンが1人で全てをこなすことは大変。自分がキャプテンと同じようなことができれば、ダブルキャプテンのような形にもなれる」と日々の練習から意識し取り組んでいる。
バイスキャプテンとして、声だけでなくプレー面でもしっかりと引っ張っていける存在になりたい。
この日2トライを決めた13番・諸田選手とも阿吽の呼吸を見せた。センターコンビを組むのは新チームになってからだが、中学時代には同じラグビースクール・神奈川DAGSで戦ってきたがゆえやり易さがあると話す。
「僕たちは昨年の11月20日に敗れ、悔しい思いをたくさんしてきました。自分たちに何が足りなかったか、と考えたら、基礎の部分が全然足りなかっただろう、と。だからあの日から基礎にこだわり、練習を重ねています。」
今大会、その『基礎』を誰よりも体現した選手の一人が白井バイスキャプテンだった。
藤原監督は、この日のゲーム内容について「スローガンである『徹』を体現していたと思う」と及第点を与えたが、しかし白井バイスキャプテンは満足しなかった。
「今日の課題はディフェンスです。何度もゲインされてしまった。選抜までにはディフェンス、組織をもっと詰めていきたい」と0点に抑えたディフェンスにも課題を見出す。
次の舞台は、4年ぶりの優勝を目指す全国選抜大会。
城央祐キャプテンは言う。「やるなら勝つだけ。どこが相手であっても構わない。」
関東1位として、春の全国王者を目指す。
國學院栃木
「大収穫です。」
吉岡肇監督は、1年間の始まりに「ものさしを手に入れた」と充足感を滲ませた。
國學院久我山、秋田工業の2校としか練習試合をせずに迎えた今大会。「決勝まで行きたい、でもきっと桐蔭に(勝つこと)は難しいだろう。50点差ぐらいかなと予想していたら、47点差。すべては予定通りです。」
マイボールラインアウトをほぼ全部取られ、マイボールスクラムからボールを供給することもままならない中、失点を47点に抑えたことは「ものすごく頑張った」と選手たちを称えた。
「9割ディフェンスのような試合を、大きな怪我なく乗り切ったんですから。一生懸命やったんですね。」
初戦・清真学園との試合では、前半相手の勢いに押される場面もあった。「あの悪い流れからどんどん自分たちで修正することができた大会でした」と、SH小倉光希矢キャプテンは今大会を振り返る。
準決勝では、昨年幾度となく熱戦を繰り広げた流経大柏を相手に完封勝ちを収めた。
だが、この決勝戦では桐蔭学園を相手にゴールラインを割れず。
「強いフォワードと強いバックスを擁する桐蔭学園さん。全国レベルの相手と対戦ができたこと、フィジカルの強さと展開力を選抜大会前に肌で感じられたことは良かったです」と話した。
決勝戦を除けば、許した失点は準々決勝・目黒学院戦での5点のみ。昨年掲げた『國栃プライド』で、ディフェンスの下地は整った。
だから今度は、攻撃力を身に着ける番だ。
「花園では東海大大阪仰星さんを相手に7点しか取れなかった。だから僕たちは、アタック力をつけないと全国で勝てない。選抜大会までに、もっとアタックを磨いていきたいです。(小倉キャプテン)」
目指すは、花園でのAシード獲得。昨季Bシードに留まった悔しさを胸に、全力でAシードを獲りにいきたいという。
根付くディフェンス力に加え、攻撃力を増した國學院栃木のラグビーが、選抜大会では見られそうだ。
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