『VROOM!!』を支える4つの柱。筑波、春3連勝。立正は「蹴らない」という挑戦。|立正×筑波|第12回関東大学ラグビー春季交流大会

立正大学

この日、背番号10番をつけたのは武田凱選手。

開幕から2戦は15番、直近2試合は15番に名前が並んだ。

だが「時と場合によってポジションを入れ替えています」という通り、フレキシブルに配置につけることが強みでもあるプレイヤーだ。

武田選手がラグビーを始めたのは、小学1年生の時。

ラグビーをしていた父の影響もあり、地元の新潟市ジュニアラグビースクールで楕円球を持った。

小学校最後の3年間は、並行してサッカーにも興じる。

小・中学生はスクラムハーフ、高校はスタンドオフやセンター。様々なポジションを経験したが、「今やっているスタンドオフが一番楽しい」と笑った。

広告

フルバックで出場していた慶應義塾大学戦は、サッカー経験を活かしたキック力で会場を沸かせた。

だがこの日は、ボールを持つと自らでも仕掛ける。

僅かなタメを作りながらボールを離す、そのセンスで存在感を発揮した。

「トップチームの司令塔として、ゲームメイクを任されているなと感じます。」

試合序盤、立正が組んだ円陣の中では「蹴るな」という言葉も飛び交ったが、その理由について武田選手はこう説明する。

「格上の筑波さんを相手に、しっかりチャレンジしていこう、と。キックばかりではなく、自分たちのどういう部分が通用するのか試したかった。」

堀越正己監督も補足する。

「春は特に蹴らないでいきたい、と選手たちが言っています。彼らは一生懸命やっているので、我々もしっかりと見ながら、その上で勝つためにどうしなければいけないか、を考えていきたいと思います。」

この日チームが手にした収穫は、外国人選手たちの強さ。そして、外に振ればゲインを切れたこと。

だが一方で、ミスも少なからず目立った。

「しっかりと固める所は固めて、挑戦する所は挑戦する、というメリハリがこれからの課題になっていきます。」

高校は、新潟県立巻高校出身。

「県内ベスト8ぐらい」と、花園には届かない学校からやってきて3年目で、立正のファーストジャージをまとう日々はチャレンジの連続でもある。

「春シーズンにしっかりと経験を積んで、秋に良いプレーができるように頑張っていきたいです。」

挑戦は続く。


目標は、オールブラックスのSOリッチー・モウンガ。「ゲーム支配力に憧れています。」

広告

***

春季大会でこれまで4戦続けてゲームキャプテンを担うのは、キニ・ヴェイタタ選手。

4人いるリーダー陣のうちの1人である。

「状況判断をして、選手たちに伝えることが僕の役目。1・2年生が試合に出場することも多く、先頭に立って若い選手たちを引っ張ることが重要だと感じています。」

フィジー出身のヴェイタタ選手は、現在25歳。

11歳でラグビーを始め、U20代表やセブンズ代表にも絡んだ経験を持つ。

19歳でニュージーランドへ渡ると、現地の高校・セントアンドリュースに通う。ファーストフィフティーン(一軍)にも選ばれた。

その後、ちょうど2019年のワールドカップで日本の活躍を目にした頃、立正から声が掛かり日本行きを決意する。

「将来は日本でプレーを続けたいと思っています。」

コーチ陣が「真面目です」と評するその性格で、プレーでも精神面でも、今季チームの先頭に立つ。

広告

試合後コメント

堀越正己監督

今日はスクラムとラインアウトが良くなかったです。

前半は一次攻撃でトライを取られてしまう場面もあり、筑波さんのショートサイドを使った攻撃に上手さを感じました。

あのようなアタックもしっかりとディフェンスしていかないと、抜かれても次がいるようなディフェンスを構築していかないといけない、と感じました。

勉強になりました。

広告

筑波

アタックの幅を広くする、幹を太くする、春。

全てを固めたプレーではなく、自分たちの理想のラグビーに近づけるよう、筑波のアタックには実践の中で調整できる『幅』を持たせている。

この日奪ったトライは5つ。その中で最も理想的な形は「1トライ目」と話すのは、この日ゲームキャプテンを担った梁川賢吉バイスキャプテン。

ラインアウトから逆サイドに開いた後、大外でFB増山将選手が粘り、5番・白丸智乃祐選手や2番・平石颯選手らフォワードがスペースを使ってゲインしながら、最後は6番・横溝昂大ショーン選手が持ち込んだトライだ。

「しっかりとオプションを使うこと、しっかり前を見てアタックすること。意思疎通をして繋ぐ、その過程も良かった」と評価した。


自身のこの日の出来は「ダメダメやった」という梁川選手。ディフェンスで体を張る中心にならないといけない、と自覚する。写真は、横溝選手のトライシーン

広告

昨季の『バチバチ』に続き、今年は『VROOM!!』というアイコニックなスローガンを打ち立てた筑波。

と同時に4年生たちは話し合いを重ね、その下に4つの柱を据えた。

結束、準備、始動、ブースト。

「抽象的、概念的な『VROOM!!』を、しっかりと行動に落とし込むための柱です。」

その完成度は、まだ「4割くらい(SO楢本選手)」というが、「注力しているファーストプレーに、まだまだ改善の余地がある。残りの春季大会、夏合宿を過ごす中で10割にすることができる。楽しみにしていてほしいです。(SO楢本選手)」と自信をのぞかせた。


「まだまだエンジン全開でいきたいですね!」大阪出身らしい明るさと、副将としての確からしさを併せ持つ梁川選手(写真左)

広告

この日、先発には2名、控えから1名の1年生プレイヤーが登場した。

これが2試合目の先発となったのは、ルーキー・白丸智乃祐選手。ロックとして出場した。

「まだシステムも覚えきれてなくて、難しいです」と大学ラグビーへ適応する苦労を口にしたが、「でも、やっていて楽しい」と充実感も滲ませる。

自炊し、授業に出て、ラグビー。そのサイクルにも、既に慣れたという白丸選手。

「1年生みんな頑張っています」と団結力を口にするのは、この学年がとりわけ少数ということにも起因する。

「色んな人が、生活面も含めた色んなポジションで引っ張っているので助かっています。」

その中でも特にリーダーシップを発揮しているという話も、漏れ伝わる。


「フィジカル含め、持っているものは抜群。チームにもフィットしてきている」とはこの日LOでコンビを組んだ梁川バイスキャプテン評

広告

この日はボールをもらって当たる、そのボールキャリーで強さを発揮した一方で、ディフェンス面での課題も露呈した。

「大学レベルでも強みのディフェンスを発揮できるように、もう1回、一から頑張っていこうと思います。」

そのためにまずは、大学ラグビーのスピード感の中でも、低いタックルをしたい。

まだ、一歩目を踏み出したばかりだ。


「元々DFに強みを持っているプレイヤー。まだバチンと行けていないので、プレータイムを少しずつ上げながら大学レベルに慣れていってほしい。(嶋崎監督)」

広告

試合後コメント

嶋崎達也監督

成長が見れた試合になったかな、と思います。

昨年の対抗戦ではアタックで噛み合わないことが多く、大学選手権に入ってから上手くいっていた部分がありました。そのイメージを踏襲して、多少のエラーはあっても目指す所はブラさずにやっていこう、と3月から時間の量としてはアタックに重きを置いて取り組んでいます。

ーー今一番重要視していることは

攻撃面ではしっかりとコンタクトエリアで仕事をできるか、そしてそこにつくサポーターがきちんと仕事をできているか。繋ぎの判断も含めて見ています。

ディフェンスでは、シンプルにタックルとコンタクトエリアでの仕事量。これは去年から引き続きです。

――集散のスピードで相手を上回りました

ディフェンスに時間をかけていない分まだまだ良くなかったので、先週のミーティングでは昨季の帝京戦の映像を見ました。

やられている中でも、チームがやろうとしていることは徹底できていた試合だったんです。そこを再確認しました。

だから、出来る出来ないではなく、やろうとしよう、と。もう一回、痛いプレー含めてやろうと確認をしました。なのでコンタクトエリアでは少し変化が見られたかなと思います。

――1年生も3人起用しています

完ぺきではないにせよ、練習の中でAチームとの連動もそつなくやれている。プレータイムを少しずつ伸ばしながら、実践の中で見ていきたいと考えています。

増山(将、FB)も良いプレーはたくさんありますが、その分エラーもある。試合に出ながら周りのメンバーとの経験を積んでくれたらな、と思っています。

広告