一生に一度の新人早明戦は、明治が12トライで圧倒。早稲田は「この負けをポジティブに捉えること」

早稲田大学

昨年の新人早明戦では、16年ぶりとなる勝利をあげていた早稲田新人。

この日の試合序盤も、昨年のそれを彷彿とさせる出足がいくつも見られた。

しかし、開始5分を過ぎた頃から明治のフィジカルが圧倒する。

個々のスキル、そして連携で崩されてしまう。

前半だけで9つのトライを許した。

転機は、6つ目のトライを取られた直後だった。

インゴールで組まれた円陣に、それまでゴール裏から見守っていた新任・佐々木隆道ヘッドコーチが近寄り声を掛ける。

「早稲田だろ!」

早稲田大学のラグビー部員として、グラウンド上で体現すべきこととは。早稲田大学ラグビー蹴球部歴2か月の選手たちに、かつての主将が在り方を説いた。

「熱い言葉を掛けてもらって、やらなければいけないという思いがどんどん強くなった。もっと走ろう、もっと体を当てよう、と思うことができました」と振り返るのは、2番・清水健伸選手。

後半の逆襲に向け、気持ちは整った。

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ハーフタイムには、選手たちから「後半の入りで絶対に気持ちを上げよう」と声が掛けられる。

だから、どれだけ攻め込まれてもゴール前で守り切った。

ゆえに訪れた、早稲田の時間帯。

ファーストトライの起点は、HO清水選手のブレイクダウンでのファイトからだった。

「絡みに行ったものの、体自体はキツい状態でした。なんとかチームのために、と頑張りました」という通り、ペナルティの笛が吹かれるとしばらく起き上がれなかった清水選手。

そこから、早稲田は攻め立てた。


少なくとも2度、ターンオーバーしボールを奪い返した清水選手

ペナルティの度にクイックスタートを選択する。

ボールを持つは、15人の中で最も強い人。ゲームキャプテンを務める6番・松沼寛治選手が、高校日本代表が並ぶディフェンスの壁に向かって突進し続けた。

一度はバックスにボールを託したが、もう一度松沼ゲームキャプテンの手にボールが渡ると、最後は斜めに切り込み何人ものDFをなぎ倒してトライ。

後半最初のトライを決めた。

「(松沼)寛治がキャプテンとして接点の所で頑張ってくれた。寛治がトライを取ってくれたことで、チームが『ここからもう一回行くぞ』という気持ちになって勢いに乗れた」と、13番・池本晴人選手は振り返る。

その後1トライを返されたが、早稲田もすぐに取り返した。

マイボールスクラムから13番・池本選手を当てると、少しずつ前へ。右への飛ばしパスから15番・池山昂佑選手、23番・足立慎太郎選手へと繋ぐ中でアドバンテージを獲得。

クイックスタートでリスタートを切れば、最後は13番・池本選手が縦に走り込んだ。

「自分の前が空いていたので、行こう、と思いました。」

気持ちの良い2トライ目が決まった。

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結果的に大差はついた。

だが、バイスキャプテンを務めた12番・森田倫太朗選手は言う。

「この負けをポジティブに捉えること。一日一日成長して、3年半後の大学選手権や対抗戦で勝てるように。毎日を大事に過ごしていきます。」

3年後の冬、果たしてどのような景色が待っているのだろうか。

***

2021年度の高校日本代表候補として、エキシビションマッチにも選出された杉本安伊朗選手。

國學院久我山高校を2022年3月に卒業すると、1年間の浪人生活を送った。

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早慶戦に憧れ、早稲田を目指した。

高校3年次にはキャプテンだったこともあり、勉強とラグビーの両立ができず浪人を決意。

念願叶って入学証書を手にしてから、早2か月。

フォーカスポイントにこだわりをもっている所に「良いチームだな」と感じるという。

「入ってよかったです。」

この試合に向け、鍛錬を積んだ。

高校日本大学候補に選ばれたからといって、簡単に試合に出られるものではない。

1年間の浪人期間中に、10㎏痩せた。加えての新人練、そして体調不良等が相まって、最大115㎏あった体重は30㎏も落ちた。

現在は91kgまで戻したというが、いまは何より体を鍛えることが最優先。別メニューで練習する日々が続く。

それでもこの日は、一生に一度の新人早明。

「出たいです」と大田尾竜彦監督に伝え、出場を叶えた。

およそ20分間の出場。ここから始まる、早稲田大学での4年間。

「1年生からレギュラーを目指す、という目標を立ててはいますが、あれもこれもと欲張るよりもまずは体作り。フィットネスを強化しないと、土台ができません。レギュラーを目指す上で、そこを重要視しています。」

強くて走れる、ベスト体重は110㎏。

まずは焦らず、戦う体を作り上げる。

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