長野県上田市菅平高原・サニアパークにて行われた、第10回全国高等学校7人制ラグビーフットボール大会。
大会3日目となる7月17日(月)には決勝戦が行われ、第6回大会以来の優勝を目指した神奈川県代表・桐蔭学園は、準優勝に終わった。
準決勝 vs報徳学園
選手起用が当たった。
前年度王者にして優勝候補筆頭である報徳学園を相手に戦った準決勝。
それまで3トライを決めていた髙﨑大我選手を控えに回し、インパクトプレイヤーに。
先発には、ボールを動かす諸田章彦選手を入れた。
「相手が疲れてから高﨑を出した方が、パワープレーが効く。(藤原秀之監督)」
結果は予想的中。
2トライを先行された前半6分、桐蔭学園のファーストトライを決めたのが諸田選手だった。
5点ビハインドで折り返すと、後半最初のトライも諸田選手。
用意していたサインプレーを「自分の足を信じてやるしかない(諸田選手)」と思いっきり走り切った。
起死回生の同点トライ。藤原監督は「当たりましたね」と笑顔を見せる。
24-24の同点で迎えた後半7分。
決勝トライは、リザーブから出場を果たした草薙拓海選手だった。
またしても、ベンチワークが効く。
「今大会、あまり活躍できた場面がなかった。でもあの逆転トライの時には、ボールをもらうと『自分のやるべきことをしっかりと出せそうだな』と思えて。うまくボールを運べました(草薙選手)」と喜んだ。
自分のプレーで仲間が喜んでくれるのは嬉しかった(草薙選手)
29-24と逆転勝利を収め決勝進出を果たすと、2トライの活躍を見せた諸田選手は言った。
「ラグビーをやっていて初めての感覚でした。」
いわゆる、ゾーンに似た状態だったか。
「こんなプレーをしたことも、立て続けにトライを取れたこともなかった。それが、こういう大事な試合でチームに貢献できたので本当に良かったな、と思います。」
だが、この結果はあくまでも「過去の自分が頑張った分」と一線を引く。
「今年はFWのチームだと言われていますが、バックスも実力があるんだぞ、としっかり見せられたことは本当に良かったです。もう一回、決勝戦では驕らずにやっていきます。」
決勝 vs佐賀工業
セブンズは短時間勝負。
プレー時間わずか14分の中で、勢いや流れを一度手放すと、再び掴み戻すことの難しい競技だ。
加えて、決勝戦が3日間で6試合目。
「疲れていましたね」と藤原監督は言った。
佐賀工業に2トライを先行されると、反撃の狼煙をあげたのは前半5分。
吉田晃己選手が持ち込み、7-12。5点差まで戻した。
その後1トライを取られて前半を折り返すと、後半最初のトライを決めたのも吉田選手。
ペナルティからタップキックでスタートすると、真ん中で何度か当たり最後は吉田選手がサイドを走ってインゴールに持ち込んだ。
吉田選手自らでコンバージョンゴールも決め、14-19。再び5点差まで詰め寄った。
しかし、ラスト2分でトライを重ねたのは佐賀工業。
ベンチからは「ここ中森、しんどい時!」「諸田、行くよ!」「(福井)柊哉落ち着いて走れ!」と最後まで声が飛び続けたが、ボールの軌道は桐蔭学園に味方しなかった。
最終スコアは14-31。
4年ぶり2度目の優勝とはならなかった。
試合後、セブンズチームのキャプテンを務めた中森真翔選手は言った。
「悔しいという感情が一番に出てきます。ですが自分たちも、できることはやった。7人制では負けてしまいましたが、15人制で佐賀工業さんにリベンジできたらな、と思います。7人制で培った力、そして今までの自分たちの経験を、夏合宿にぶつけていきます。」
15人制でキャプテンを務めるは、城央祐選手。
キャプテンという役職を離れ、今大会はいちプレイヤーに徹した。
「いつも引っ張っている立場ですが、敢えてやらずに。みんなに任せて、『引っ張る』ということをしなかった大会でした。特に問題もなかったので、大丈夫かなと思います。」
一歩引いて、チームを俯瞰して見守る。
この経験が、チームとしてもキャプテンとしても、冬へと活きるはずだ。
「3冠が達成できなかったことは悔しいですが、夏は関西・九州の強豪校と試合をします。早く15人制に切り替えて、準備していきたいと思います。(城選手)」
今季これまで、公式戦で無敗だった桐蔭学園。
「負ける経験が大事」と藤原監督はどこか嬉しそうに呟き、言葉を続けた。
「冬、やりたいラグビーがある。少しチャレンジさせて、ちょっとじっくり行きたいな、と。」
そのために大切なのは、結果に捉われずチャレンジを恐れないこと。
「チャレンジする夏、にしていきます。(藤原監督)」
7人制が終われば、いよいよ15人制にどっぷりと打ち込む夏がやってくる。