長野県上田市菅平高原・サニアパークにて行われた、第10回全国高等学校7人制ラグビーフットボール大会。
福岡県代表・東福岡高等学校は、プレートトーナメント2位で大会を終えた。
大会2日目
「負けずしての、負け。すごく悔しかったです。」
大会1日目、激闘だった予選Pプールを振り返れば、そう切り出したのは西浦岳優選手だった。
茗溪学園と同点に終わり、続く四日市工業戦では8トライを奪って無失点。54点差をつけた。
だが茗溪学園も同じく54点差で四日市工業に勝利する。ただし、トライ数は茗溪学園が2つほど上回った。
結果、東福岡は予選プール2位。
第1回目から続く、連続カップトーナメント進出記録は途絶えた。
負けてはいない。だけど勝てなかった。
その事実を、東福岡の選手たちは自分たちに矢印を向けることで受け入れ、次に進もうとした。
神拓実セブンズチームキャプテンは言う。
「自分たちに、まだまだできることがあるんじゃないか、って。」
まずは自分たちのミスを減らすこと。トライに結び付けるプレーをすること。
そう意思を統一し、2日目を迎えた。
1試合目、京都工学院戦ではブレイクダウンでのペナルティ、そしてキックオフでミスが出る。
しかし第2試合・川越東戦には改善し、前半だけで4トライ。
一切の手を緩めない、圧倒的なプレーが随所で見られた。
その立役者となったのが、冒頭の言葉を発した西浦選手。京都工学院戦ではハットトリックを決めた。
「自分の役割はトライを取ること。持ち味であるスピードを活かしたプレーを、常に心の中に留めています。」
全国選抜大会のトライ王として、遺憾なく実力を発揮した。
西浦選手は関西学院中学出身。
中学2年次に出場した太陽生命カップでは全国7位になるも、優勝できなかったことが心に残る。
「めちゃくちゃ悔しくて、自分たちの代になったら全国優勝を目指して頑張ろうと思っていたんです。だけどコロナで大会自体がなくなってしまい、やりきれない思いがありました。」
だからこそ、高校では全国制覇を目指したい。
一人親元を離れ、東福岡高校への進学を決意した。成績は常に学年トップ10をキープし続け、ラグビーと勉強を両立している。
「今大会、カップトーナメントに行けなかったことは悔しい。2位トーナメントに入ったからには優勝を目指したいと思います。」
全国優勝の次に、今できることを。
気持ちを新たに、大会最終日へと向かった。
大会3日目
神キャプテンは言った。
「(大会最終日)強い気持ちで、みんなで挑みます。」
言葉通り、まず迎えた長崎南山との準決勝では7トライを重ね圧倒。
プレートトーナメント決勝戦へと駒を進めた。
次なる相手は、日頃から練習試合を重ねる石見智翠館。
強く、勝ち切りたかった。
だが、決勝戦では得意だったはずのキックオフでミスが重なる。
先制トライを許すと、2度逆転したが、最後は突き放されてしまった。
26-28。プレートトーナメント準優勝に終わった。
決勝戦では、セブンズにおける一番のセットプレーであるキックオフがかみ合わなかった。
「どうキックオフを確保して、ポゼッションを高めるかがセブンズのセオリー。でも今日はそれができなかった。キックオフがすべてでした。(稗田新セブンズ監督)」
その理由は、ボールにあった。
プレートトーナメント決勝戦で使われたのは「クアンタムセブンズ」と呼ばれるギルバートのセブンズ用ラグビーボール。セブンズゲームのユニークなスタイルに合わせて開発されており、15人制のそれとは使用感が異なるのだという。
その特殊なセブンズ用ボールを、東福岡は菅平に持ってきていなかった。
加えて、それまで行われた5試合はカンタベリーとセプターが試合球として指定されており、東福岡にとってはプレートトーナメント決勝戦だけがギルバートだったのだ。
ラグビーとは、ダイナミックでありながらも、細かな戦略の積み上げの上に成り立つ競技であることを物語る。
「ちゃんとボールを準備して練習させていたら、こういうことは起きていなかったかな、って。こっちの責任です。選手たちは、悪くない。」
稗田監督は、責任の所在を自らに向けた。
前日には「良い準備をして、良いコンディションで選手たちを送り出してあげたい」と話していたからこそ、一層の無念だった。
「優勝しよう、という気持ちで臨みました。だけど自分のミスが多く重なって負けてしまった。とても悔しいです。」
そう話したのは、キックオフボールを蹴り上げる役割を担った神キャプテン。言葉少なに悔しさを滲ませた。
「だから、菅平の合宿では勝ちたいなと思います。」
セブンズが終われば、本格的な夏がやってくる。
これから先は、まっすぐに1月7日だけを見据えた各チームの積み上げが、スピードを増す。
「気持ちを15人制に切り替えていきます。(稗田監督)」
春、全国選抜大会で2位。
ゴールデンウイーク、サニックスワールドユースでシルバーメダル。
夏、7人制でプレート2位。
冬こそは、一番大きなトロフィーを。チーム東福岡で、掴み取りにいく。
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決勝戦、後半はじめから出場したのは1年生の半田悦翔選手。
入学間もないが、すでに15人制で公式戦デビュー済み。
6月に行われた全九州高校大会では3トライ。そして何より、佐賀工業との決勝戦では1点差に迫るトライを回り込んで真ん中に決め、コンバージョンゴールで逆転するシナリオを作った優勝の立役者でもある。
だが「7人制ではディフェンスの時に何本か抜かれてしまっています。もう少し頑張らないと」と課題を見つけた。
福岡県糸島市出身。地元の高校で戦いたい、と東福岡を選んだ
自身の持ち味は、ボールを前に運んでトライを奪うこと。
「強いプレイヤーになりたいです。」
ポジションは異なるが、日本代表のNo.8姫野和樹が憧れだ。
「めちゃくちゃ格好良いな、って思っています。」
強く、格好良く。そして憧れを超えるべく。
一歩一歩を踏みしめながら、階段を駆け上がる。