7月28日（金）から30日（日）まで、長野県上田市菅平高原・サニアパークにて行われた、KOBELCO CUP 2023 第19回全国高等学校合同チームラグビーフットボール大会。
U17近畿ブロック代表は予選・決勝リーグともに全勝で、2018年以来6度目の優勝を果たした。
優勝を決めると、ベンチで待つキャプテンのもとへと駆け寄った選手たち。
そして、そのままピッチサイドで胴上げを始めた。
大概、胴上げは監督から行うもの。
だが一番最初に宙を舞ったのは、CTB名取凛之輔キャプテン（大阪桐蔭高校）だった。
大島淳史監督（京都工学院高校）は言う。「チームの中心は、名取キャプテンです」と。
実は名取キャプテン、大会前に足を負傷し予選リーグを欠場していた。満を持しての、決勝リーグからの登場。
そんな名取キャプテンの覚悟を見たからこそ、チームメイトの士気も上がる。
「リンを胴上げするぞ」が、チームの合言葉となった。
キャプテンを胴上げする。その気持ちが、チーム近畿をより強固にした。
U17九州ブロックを圧倒し、迎えた最終・U17関東ブロック戦。
互いにU17九州ブロックに勝利し、迎えた事実上の決勝戦だった。
相手は絶対にタフに来る。だからこっちも絶対に、タフに。
「近畿の代表として、誇りをもってプレーしよう。」
名取キャプテンは主将として、仲間に気持ちを伝え挑んだ。
真骨頂は、後半に訪れる。
自陣5m付近での相手ボールブレイクダウンに頭を突っ込み、ジャッカルに成功したのは名取キャプテン。
「ここ行けそうやな、と思って。狙ったろ！と行きました。」
気持ちの伝わる、だがスキルフルなプレーを見せた。
「仲の良い、いいチームになれたと思います（名取キャプテン）」
先制トライを奪うと、終始ゲームをリードし続けた近畿ブロック。
それでも相手の時間はやってくる。
自陣張り付けになった後半。
近畿ブロックは円陣を組むと、一つの声を響かせた。
「10分後、俺たちが日本一や！」
声の主は、CTB吉田琉生選手（東海大大阪仰星高校）。
1点差に迫られた後半18分、試合時間残り2分の場面でも再び気を吐く。
「この2分に、俺ら懸けなあかんねん！」
その行動の意図を、吉田選手はこう説明する。
「12番という背番号をもらっている以上、体も張らなあかんし、声でも引っ張っていかないといけない。キャプテンが怪我で出られるか出られないか分からない状況の中、誰が引っ張るのかといったら僕しかいないと思った。」
近畿の仲間とチームメイトとして戦えるのは、今日が最後。
悔いを残したくない、その想いを声で表した。
夢は「誰からでも応援されるプレイヤーになること」。写真右が吉田選手、左が名取キャプテン
チームの司令塔を務めたのは、大阪桐蔭高校の上田倭楓選手。
「スタンドオフとして意識したことは、短期間でチームを一つにまとめること、一つにまとまったゲームを作ること。」
1点でも多くの点数を取れるように、チームの勝利だけを考えてタクトを振るった。
試合後、上田選手のもとには仲間が「イブキのおかげや」と言いながら集まってきたその光景を「嬉しかったです」と振り返る。
「いろんな人が自分をフォローしてくれました。ほんまに助け合ってできた所が、良かったです。」
今年1月の花園から比べ、体重は5㎏増。たくましさを増した
「『優勝するんだ』という覚悟を、彼らは最初から持って大会に挑んでくれていました。そこに良いキャプテンシーが加わって。コンバインドチームらしさのある、良いチームになりました。」
集合写真に納まる選手たちを見ながら、大島監督は目を細めた。
吉田選手は言う。
「この経験を、学校に戻ってチームに還元することは大前提。これに満足せず、責任感を持って全うしていきたいと思います。」
上田選手も続けた。
「また花園や高いレベルで会えるように。お互い頑張ります。」
伸び盛りな高校2年生たちの、楽しみな夏が始まった。
