<U18・関東ブロック>ひたむきなタックルで掴んだ日本一「3年生を勝たせるために」|KOBELCO CUP 2023 第19回全国高等学校合同チームラグビーフットボール大会

続くU18東海ブロックとの試合で、勝利を収めれば優勝が決定する。

大事な一戦を前に、飯塚淳平監督(西武文理高校)は選手たちに声を掛けた。

「関東に1冠目を獲って帰るぞ」

覚悟は決まった。

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最後の1ゲーム。対U18東海ブロック戦。

キックオフから、攻め込まれた。

U18東海ブロックが右に左にと何度も大きく展開し、ディフェンスを崩しにくる。

だが、その度ディフェンスに食らいついたU18関東ブロック。チームスローガンである『圧倒的ディフェンス』を体現した。

前半10分には相手に1トライを許し、5点のビハインドになったが、風下を1トライのみでしのいだことはポジティブ要素だった。

陣地を入れ替え臨んだ後半、待望のファーストトライは開始1分に訪れる。

ディフェンスで粘り、ブレイクダウンでペナルティを得ると、敵陣5mでのラインアウトを獲得した。

順に開けば、右サイドで飛び込んだのは11番・大平尚輝選手(関東学院高校)。

同点のトライを決めた。

コンバージョンゴールを蹴り込むは、SH佐々木大耀選手(関東学院高校)。

今大会なかなか決まらなかったコンバージョンゴールを成功させた瞬間、ベンチに控える選手も、そしてスタッフ陣も、全員が声を上げ拳を突き上げ、喜んだ。

7-5、2点のリードに変わる。

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試合を決定付けるトライが決まったのは、後半10分。

ラインアウトモールでコラプシングを誘うと、ゴール目前、タップキックからスタートを切ったのは頼れるキャプテン・鈴木心恩選手だった。

そのまま何人もの相手選手を押しのけ、手を伸ばす。

1人で状況を打開する技術と、心と。

力強く右手で押し込めば、12-7と引き離した。

残り時間5分。

1トライ1ゴールで逆転を許す可能性もある点差を、全員で体を張って守りきる。

そして、吹かれたノーサイドの笛。

ピッチに立つ選手たち15人全員が、ベンチに向かって両手を突き上げた。

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膝をつき、頭を抱えたのは鈴木キャプテン。「立てなかったです」と笑った。

優勝して嬉しい、「やったー」という感情。と同時に、このメンバーで試合ができるのはこれが最後という悲しさ。

複雑に絡み合った想いが「溢れました」と語った。

2試合目・U18東海ブロック戦の前には、既に声を枯らしていた飯塚監督は言う。

「体格と技術は、ほかのブロックさんに素晴らしいプレーヤーがたくさんいました。だけどひたむきなタックルは日本一だったんじゃないかな、って。」

流れを掴んだ2試合目前半冒頭のディフェンスを褒め称えた。

「ベースにある『圧倒的なディフェンス』の上に成り立った、セットプレーの安定と思い切ったアタック。ほんと、すごかったですね。」

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試合中、ベンチから絶え間なく聞こえた「グッドだ!」の声。

飯塚監督をはじめとするスタッフ陣がとびっきりポジティブだったからこそ、そのマインドセットは選手たちへと波及したのだろう。

選手も、スタッフ陣も、もれなく全員が前向きなエネルギーだけを発したチームU18関東ブロック。

選手22人全員にとって、これが初めての日本一。

通う高校では、15人の1チームを作ることが叶わない選手たちの濃い一夏が、笑顔で溢れた。

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***

大会期間中、U18関東ブロックに帯同したコベルコ神戸スティーラーズ・杉本崇馬選手は言った。

「試合を重ねるうちに、選手たちから自信を感じられるようになりました」と。

自分たちでモチベーションの高め方を身に着け、プレーに思い切りが出てきたのではないか、と喜んだ。

「僕の高校も部員数が少なかったので、境遇が似ています。だから『チーム一丸となって勝とう』というその姿に、高校時代を思い出しました。」

杉本選手自身にとっても、初心を思い返す時間となったようだ。

 

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