桐蔭学園
「全国選抜大会の時には単純なサインプレーが多かったのですが、最近はフォワードとバックスの境目を狙うようなプレーを増やしています。それが少し良い結果で表れた試合かな、と思います。」
充実感を漂わせながら話したのは、桐蔭学園のNo.8城央祐キャプテンだ。
自身のラインブレイクは、この日2本。
チームとして狙っていたエリアでの切り裂くような走りに、観客からも歓声が上がった。
今から1か月前の、全国7人制大会でのこと。藤原秀之監督は言っていた。
「冬、やりたいラグビーがある。そのためにチャレンジする夏にしたい。」
果たしてその完成度は如何程か、と城キャプテンに問えば「まだ全然完璧ではなくて、この菅平でチャレンジしようという段階です」と現状を語る。
しかし少しずつ形を表しはじめた『やりたいラグビーの形』。あらかた60%程度の完成度だと城キャプテンは言った。
一方、課題もある。
ディフェンス面でのコミュニケーションに、まだ納得がいかない。
「点で追ってしまうことも多くて視野が狭い。人数が合っているのに、合っていないと思い込んで流してしまう。アンストラクチャーでのギャップの埋め方もそう。修正しなければいけない所だな、と感じています。」
試合中、たとえペナルティを取ろうともうまく連携できなかった箇所があれば逐一グラウンド上の15人で突き詰める姿が印象的だった。
修正力は、高校ラグビー界でも群を抜く。
桐蔭学園が設定した、合宿のテーマがある。
生活基準を、コロナ前の花園2連覇時代に合わせること。
ここ数年は従来通りの合宿を完遂させることができず、今年の3年生は「ほぼ初めての合宿」真っ只中だ。
日本一になるために最低限必要な生活の質を、受け継がれたものではなく、自分たちで一から作り直していかなければならない。
そのためには基準をいかに示せるか、そして今後の練習の質を上げられるか。
文字通り、ラグビー漬けの日々を送る。
「優勝に相応しいチームになるための基準作りが、夏合宿のテーマです。」
先立って行われた8月上旬の一次合宿では、出来てきた部分がある一方で帰属意識の甘さも露呈した。
「キャプテンである自分含め、チーム全体でやっていかなければならないと思っています。」
試合を終え、荷物を持ちバスに引き上げる選手たちからも「帰属意識」という言葉が飛び交った。
城選手が桐蔭学園の主将として過ごす時間も、折り返し地点を過ぎた。
「みんな頑張ってくれるから、自分が頑張らなくても大丈夫。だから特に苦しいことはないです。」
もしかしたら自分が気付いていないだけかも、と笑ったが、それも一つの大切な才能だろう。
充実感漂う桐蔭学園、定めたターゲットに徹する夏を送っている。