9月3日(日)に行われた、第27回熊谷ラグビーまつり。
埼玉県立熊谷工業高校ラグビー部の創部75周年を記念して、同じく創部75周年の山梨県立日川高校を招き、記念交流戦が行われた。
佐藤陽翔キャプテンは試合前、仲間に声を掛ける。「遠慮はいらない、先手を打とう」。
前後半25分ハーフで行われた一戦は、言葉通り、熊谷工業が最初の主導権を握る。
試合開始直後から敵陣深くでのプレーを続けると、ゴール前でのFW戦から取り切った。
ボールを地面につけたのは、FL佐藤キャプテン。コンバージョンゴールも成功し、前半17分、7点を先制した。
対する日川は、ベンチに控える選手たちから絶え間ない声が飛ぶ。
空いているスペースやボールを動かす向きなど、全員がチームとなってトライを目指せば、最大のチャンスは訪れる。
ラインアウトモルからサイドアタックで前進し、ペナルティをもらえば再びのラインアウトから攻撃を続けた。
最後は10番・佐藤瑛斗選手がステップを切りながらインゴールまで走り切ったかと思われたが、判定はノートライ。
仕留め切ることはできなかった。
前半残り時間5分。
熊谷工業のベンチから届いた指示は、シンプルだった。
「残り5分、敵陣に居続けよう。1本取ってこい。」
はい、と明るく佐藤キャプテンが返事をすれば、有言実行。
ラインアウトモールから、No.8澁澤歩夢選手が押し込んだ。
勢いに乗った熊谷工業は、もう1トライを重ねる。
センタースクラムから左サイドに開き、それぞれのボールキャリアーがゲインラインを突破すれば、ラストワンプレーで取り切った。
19-0と熊谷工業のリードで前半を折り返す。
前半は、熊谷工業が苦しかった序盤を耐え掴んだ3トライ。
後半は、出だしから勢いを掴んだ。
ラインアウトモールからまたしてもNo.8澁澤選手が押し込むと、続くラインアウトでは逆サイドへ大きく展開。14番・田島大輝選手が取り切る。
右サイドでステップを踏みながらディフェンダーを交わしたのは、15番・今井大和選手。
あっという間の3トライ。前半10分、38-0と日川を突き放した。
セーフティリードになると、熊谷工業はドロップゴールにもチャレンジ。
後半終盤には日川の時間帯もやってきたが、しかし耐え忍ぶと、15番・今井選手、そして9番・小久保翼選手が軽やかな身のこなしで2トライを立て続けに決め、ノーサイド。
55-0、熊谷工業が勝利を手にした。
熊本工業は、今夏を3つのクールに分け強化を図った。
第1クールは、熊谷工業のラグビーを全員が理解するための時間。熊谷高校などと合同練習を行い、今秋の戦い方を身に着けた。
第2クールは菅平。全国の高校との実践を通して、どこまで出来るかとチャレンジを続けた。
第3クールは、菅平明け。『勝ちにこだわる』を掲げ、押せるならモールを押す、狙えるならショットを狙う。セーフティリードになったら、チャレンジもしてみる。『勝利の仕方』を理解した。
そしてこの日川戦が、第3クールの集大成。「一番のターゲットだった試合。落ち着く所は落ち着いて、最後は勝って終わることができて良かった」と橋本大介監督は笑顔を見せた。
いよいよ迎える花園予選。
春は、公式戦のプレッシャーからか焦りが生じ、ゴール前で取り切れない展開が目立った。しかしこの夏、全員が熊谷工業のラグビーを理解し、地に足をつけたプレーを身に着ける。
もう同じ轍は踏まない。
「あとは細かなマイクロスキルを作り上げていくだけ。(佐藤キャプテン)」
第8シードからの逆襲が始まる。
一方の日川は、苦しい50分間だった。
伝統ある日川高校でさえ、ラグビー部員数は減少。Bチームの試合にAチームのメンバーが出場するなど苦しいメンバー繰りではあるが、山本諭史監督は「先輩たちが繋いできた伝統を引き継ぐこと、見て頂く方に『やっぱり日川のタックルだな』と思ってもらえるような日川の文化を体現する試合になっていれば」と語る。
この日力強いボールキャリーでチームを引っ張ったのは、No.8矢野巧真キャプテン。「伝統校としての負けられないプライドがある」と誇りを見せる。
「夏、強化してきたことが疲れた時間帯に発揮できなかった。花園予選に向けて修正しなければいけないと分かった試合だった(矢野キャプテン)」と来る花園予選を見据えた。
日川の選手たちにとっては初めての熊谷ラグビー場Aグラウンド。「ワールドカップで使われるようなスタジアムでプレーできて嬉しい」と喜んだ
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