試合概要
第103回全国高等学校ラグビーフットボール大会埼玉県予選 決勝
【対戦カード】
川越東高校×昌平高校
【日時】
2023年11月18日(土)12:35キックオフ
【場所】
熊谷ラグビー場Aグラウンド
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試合内容
川越東高校 27 – 5 昌平高校
最初のスコアは川越東。
自陣でのカウンターラックから一気に逆サイドへ展開すると、15番・南雲優佑選手(2年生)が左サイドを駆け抜ける。
前半2分、川越東が5点を先制した。
前半10分には14番・石本瑛選手(3年生)のビッグゲインから陣地を広げ、敵陣でのラインアウトから逆サイドに開けば再びFB南雲選手のトライ。
12番・五十嵐舜悟選手(3年生)のコンバージョンゴールも決まり、12-0と川越東がリードを広げた。
対する昌平は、前半風上でのプレーを選択。
相手のペナルティから敵陣5mでのラインアウトモールを組むと、ショートサイドに抜けだした11番・山口廉太選手(2年生)が右手一本でグラウンディングした。
川越東にとって、これが今大会初の被トライ。
昌平が5点を巻き返し、12-5で前半を折り返した。
後半風上に立ったのは川越東。
敵陣中央で幾度かペナルティを獲得したが、ペナルティゴールは選択せず。
ベンチからショットコールが出るも、トライを狙った。
「ここで1本確実にトライを取り切ろう、という選手たちの判断でした」と話すは、五十嵐バイスキャプテン。
トライにこだわり、スクラムとラインアウトで5点を狙った。
功を奏したのは7分後。
5mラインアウトからショートサイドに5番・松本青大選手(3年生)が飛び込む。
17-5、川越東がリードを広げた。
望月雅之監督曰く「この時に(勝利の)自信がもてた」という
その後、敵陣でのペナルティではPGを選択した川越東。
15番・南雲選手がゴールポスト真ん中を通せば、20-5。後半22分、2トライ2ゴール以上の差に広げた。
一方昌平は、敵陣に入ると今年の武器である13人モールを幾度となく組み前進を図った。
しかしその度に川越東は守り切る。
なかなかゲインが切れない。
後半17分、敵陣中央でリモールを組んだ昌平だったが、FW8人で止め切ったのは川越東。
ペナルティを獲得し、雄叫びをあげた。
後半29分には、1年次から活躍する川越東・WTB石本選手がダメ押しのトライを決めれば勝負あり。
27-5、川越東が3年ぶり2度目の頂点に立った。
同校史上初となる埼玉県内負けなし。4冠を手に、2度目の花園でまずは悲願の1勝、そして年越しを目指す。
最後のノーサイド ~昌平
2月の新人戦。
5月の関東大会予選。
6月のセブンズ予選。
全て決勝戦まで進むも、川越東に3戦3敗。シルバーコレクターの1年を過ごしてきた。
だから、最後は。最後こそは、必ずや頂点の景色を。
覚悟を決めた昌平は、ひとつの賭けに出た。
川越東のバックスラインは強烈。だから勝負を挑む場所を変えよう。
FW、しかもモールで。
たとえ22m内に入っていなくとも、ハーフウェーからだったとしても。
50mを押し切る絶対的な武器を身に着けよう。
始まりは、関東大会予選が終わった頃だったか。
モールを強みとする学校に練習を申し込み、ノウハウを溜める。
そして夏、菅平。
御所実業や大阪朝鮮などが行う、朝6時からのFW早朝セッションに参加を申し入れた。
組み込んだモール。仰いだ指導。
強い一本鎗を手に入れた。
準決勝までは通用した。
幾度も訪れたピンチを救ってくれたのが、13人モールだった。
だが決勝戦は、別次元。
敵陣22m付近中央でリモールを組み、13人が入ったが、押し込みきれずユーズイットを掛けられてしまった。
13番・横山健人キャプテンが持ち出したが、相手のダブルキャプテンに捕まる。
トライを取り切れなかった。
2年前の決勝を目前にして、横山キャプテンは母を亡くした。
コロナ禍の闘病生活。病原菌を持ち込まないように、と横山キャプテンは1年次、昌平高校の寮に入った。
「最後に掛けた言葉は『花園に出るから、絶対に見ててね』でした。」
決勝の60分を終えた後、表彰式の最中、空を見上げ伝える。
「申し訳ない。」
「もっと努力して。母親が最後背中を押してくれるような努力を、もっとできた。」
涙に暮れた。
だが準々決勝、そして準決勝と試合を決定づけたのは、横山キャプテンのトライだった。
決勝の舞台まで導いてくれたこと。そして自身も腎臓に病を患い、服薬しながらも競技生活を続けられたことは、母の大きな愛が見守ってくれていたからに違いない。
これでラグビープレイヤーとしては第一線から退く予定の横山キャプテン。
「悔いのない、最高な8年間のラグビー人生でした。」
描いた花園年越しの日々は、ライバルであり仲間でもある川越東に託す。「自信をもって暴れてきてほしいです。」
夢の舞台は、いつの日か、違う形で。
SIDE STORY ~試合を終えて