12月27日に開幕する、第103回全国高等学校ラグビーフットボール大会。
東京都第2地区代表として4年連続22度目の出場を決めた目黒学院高等学校は、12月上旬、激しい練習を積み重ねていた。
現在、実働の部員総数は60名。
3年生14名、2年生15名、1年生31名。
コロナ禍には、東京から地方に出向くことが悪とされた時代もあった。
試合も難しければ、中学生の勧誘にすら足を運べない。中学生側からしても「東京の学校へ練習見学に行った」ということさえ言えない環境だったという。
そんな時期を乗り越えて「目黒でラグビーがしたい、と言ってくれる子が増えて嬉しい」と竹内圭介監督はしみじみ語った。
花園は、一戦一戦の勝利を積み重ねる場。
初戦の相手は、福井県代表の若狭東・敦賀工業の合同チーム。大会初の合同チームであり、どうしたって、注目は集まる。
そして勝利を2つ掴んだ先に待ち受けるのは、Aシード・佐賀工業。
竹内監督が「一番の目標」と挙げるには、理由があった。
目黒学院の竹内監督と佐賀工業の枝吉巨樹監督は、東洋大学での先輩・後輩。枝吉監督が1学年上にあたる。
ポジションも同じスタンドオフ。寮の部屋も隣で「良く一緒に遊んでもらっていました」と笑った。
コロナ禍で対外試合が全く組めなかった2020年。
第100回の花園予選が始まる直前の9月、大分県で行われた九州中のチームが集まる場に、枝吉監督から声を掛けてもらった。「東京じゃ、どことも試合できないでしょ?」
先輩の、その優しさが嬉しかったです、と言った。
目黒学院の花園連続出場が始まったのは、その年に行われた100回大会から。先輩への恩を繋いでいる。
だからこそ、今年はAチームとして出場する佐賀工業に挑みたい。
全国大会の舞台では初対戦となる予定。
叶えるためにも、必ずや年内2勝を挙げる。
注目選手
キャプテン・中村つぐ希(LO/No.8)
今年のロック陣の中で、ひと際目を引く存在が、目黒学院のキャプテン・中村つぐ希選手。
2年生の頃からオール東京メンバー。もちろん、今年度の高校日本代表候補にも選出されている。
確かなマイクロスキルに、ダイナミックな選択。見ていて楽しいラグビープレイヤーだ。
目黒学院には、近年超えられていない『ベスト16』の壁がある。
だから今年のターゲットは、1月1日に勝つこと。最大の目標だ。
だがその前に2チームを倒さなければ、挑戦権を手に入れることはできない。「一戦必勝で60分を戦わなければいけないと思っています」と、来る勝負の日々を見つめた。
Bチーム対Cチームの試合では、真っ先にタッチジャッジを買って出る。Cチームの良いプレーには喜び、Bチームには厳しく規律を指摘する
このチームの好きな所は「家族みたいな所。」
分け隔てなく、誰にでも同じようにみんなが接している。一つのチームになれた、そこが一番大好きです、とはにかんだ。
仲間への声の掛け方に一つひとつに愛がこもる、その所以を知る。
3年目の花園は、ドキドキ、そして楽しみ。
磨いてきた目黒学院のラグビーを、花園の地で加速させたい。
「武器のモール、そしてディフェンスを見て欲しいです。トンガ人がいるチームの特性上、どうしてもロケティ(ロケティ・ブルースネオル、1年No.8)やラトゥ(ラトゥ・カヴェインガフォラウ、1年生CTB)に注目は集まります。最後トライを決めるのはその2人かもしれませんが、そこまでには自分たちの働きがある。今年のチームがこだわってきたディフェンスで、抜かれない、返すディフェンスに注目して欲しいなと思います。」
ザ・チームマン。
目標のベスト8に向け「引退が一つひとつの試合に懸かっている。自分たちの代を1日でも長く続けられるように、1試合に対してどれだけ全力を出していけるかが勝負」と気を引き締めた。
キャプテン・山本真也(プロップ)
竹内監督が選ぶ、今年最も成長した選手が山本真也キャプテン。
高校からラグビーを始めた選手だが、練習中、他の選手の前でお手本としてプレーするまでに成長した。
今季、中村選手とともに共同キャプテンを務める。
シーズン前半は中村キャプテンが怪我で離脱することも多く、キャプテンシーは一層磨かれた。
「3年生になってから責任感を持つようになりました」と自身でも認識し、中でも取り組む姿勢が最も変わった、と話す。
「最初はタックルも怖いと感じていました。だけど受け身の姿勢から前向きにタックルにいけるようになったことが、一番の成長だと感じています。」
ボディバランスに優れ、キックを蹴ることも。中村キャップテンは「器用な時と不器用な時がある」と笑った
このチームの好きな所は、上下関係がない所。「どの学年と話しても、仲が良い」と目黒らしさを語る。
だからこそ自身も、下級生と話すように日々心掛ける。心配りが、今年の目黒学院を作り上げた。
いよいよ迎える、花園の舞台。
「目黒であるならコンタクト力」と話す通り、ディフェンスでもアタックでも、コンタクトで勝っていれば強いチームで在ることができる。
だから最後の1秒までコンタクト力を上げ続けたい、と表情を引き締めた。
ロケティ・ブルースネオル(1年生、No.8)
全国高校ラグビー 東京都第2地区決勝戦。
2トライを決め、全国のラグビーファンに衝撃を与えたのが、ロケティ・ブルースネオル選手だ。
ラグビーを始めたのは3歳。
「夢だった」という日本でのプレー。テビタ・タタフに憧れた。
今年の3月に来日すると、それまでプレーしていたセンターからNo.8にコンバート。
それでも最初からAチーム。即戦力だった。
当の本人は、日本のラグビーを「難しい」と言う。
「トンガは1日の練習時間も短いし、シーズンも短い。シーズンの2か月ほどしかプレーしません。」
ユニオンのシーズンが終われば、リーグシーズンがやってくるトンガ。リーグラグビーも経験した、という。機動力はリーグラグビーで培った。
初めての練習で、目黒学院のチームワークの良さに心打たれた。今ではその一員であることが嬉しい。
まだまだ粗削りな所もあるが、初めての花園を経験することで見える景色も変わるだろう。
「たくさんの強いチームと戦うことが楽しみです。」
一生懸命にプレーするその姿を日本中のラグビーファンに見せたい、と誓った。
「アタックではボールキャリーを、ディフェンスではタックル。両方での力強さを見て欲しいです。」
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