試合概要
第103回全国高等学校ラグビーフットボール大会 1回戦
【対戦カード】
倉敷高等学校(岡山・3大会連続3回目)× 川越東高等学校(埼玉・3大会ぶり2回目)
【日時】
2023年12月28日(木)10:00キックオフ
【場所】
花園第2グラウンド
試合結果
倉敷 13 – 22 川越東
この日第2グラウンドで行われた試合の中で、最多となる1,200名もの観客が訪れた一戦。
前半から埼玉県王者・川越東が確かな強さを見せた。
キックオフキャッチこそミスが出るも、続けて組んだファーストスクラムでは思いっきり押す。相手の球出しにプレッシャーを掛け、前進を許さない。
相手のペナルティからまずは敵陣22m内に入ると、7番・小泉諒人のスローイングに合わせてラインアウトモールを組んだ。
アドバンテージを得ると逆サイドに大きく開き、最後は1番・寺山公太キャプテンからの飛ばしパスを受け取った14番・石本瑛選手が体を翻しながらトライ。
前半4分、まずは川越東が5点を先制する。
前半9分、12分には相手のペナルティでPGを選択した川越東。
10番・五十嵐舜悟バイスキャプテンの右足に託せば、うち1本を沈め、0-8と差を広げた。
前半15分には、敵陣10m付近での川越東ボールスクラムからしっかりとボールを出すと、3番・柴田陽選手がグラウンド真ん中を駆け上がる。
テンポよく右に展開すれば、15番・南雲優佑選手がグラウンディングした。
コンバージョンゴールも決まり、0-15。
川越東が2トライ2ゴール差以上のリードを得て、前半を折り返す。
後半は倉敷のスコアからゲームが動く。
敵陣でペナルティを得ると、PGを選択。4番・伊藤然選手が落ち着いて蹴り上げ、後半6分、まずは3点を返した。
しかし落ち着いていた川越東。
後半13分にはスクラムコラプシングで得たラインアウトから、中央で抜けた8番・髙橋新大選手がおよそ30mを走り切り3トライ目を決めた。
3-22と、リードを19点に広げる。
その後は倉敷の素早い出足に、ボールを後ろに下げられる展開が続いた川越東。
後半18分にはFW戦から右隅に、後半29分にはこぼれ球を拾い上げ走り切ったトライで2つ続けてトライを奪われた。
だが、スクラムでは1つのペナルティを奪い、マイボールラインアウトも100%確保。
フロントロー陣の機動力と力強さは大きな武器となり、前回花園出場時には大きな課題であったFWで進化した姿を見せた川越東が、リードを守り切る。
13-22で見事花園初勝利を挙げた。
何度もタックルに入り、相手を吹き飛ばしながらのボールキャリーを見せた2番・渡部開選手
川越東
いよいよ迎えた、埼玉県王者・川越東の花園初戦。
前回の初出場時は、コロナ禍真っ只中の第100回大会。当時は無観客。空気の張り詰める、朝の冷え切った静かな空気の中でキックオフを迎えていた。
だが今年は違う。
全試合制限なしの有観客。
川越東サイドには保護者やOBだけでなく、埼玉県下の高校生も詰めかける。溢れんばかりの人に「熊谷のバックスタンドみたいだった」と口にする人がいた程だった。
ピッチインの時には、前夜21時にバスで学校を出発したという川越東高校野球部総勢75名から、大きなエールが送られる。
少し、驚いた表情の選手たち。
それもそのはず。
埼玉県予選では、学校からの団体応援はなかった。この3年間で初めての経験に「鳥肌が立ちました。期待に応えなきゃ、という気持ちが強くなった」と話すは、川越東でラグビーを始めた14番・石本瑛選手。
その想いが、この日のファーストトライへと繋がった。
青い上着姿が野球部。トライを取ると大きく喜んだ
埼玉県予選でともに頂を目指した仲間も、応援に駆け付ける。
熊谷ラグビー場で準々決勝を戦った熊谷工業に、準決勝・深谷。そして決勝の昌平に、今季埼玉で最も川越東を追い詰めた熊谷。
4校それぞれでキャプテンを務めた者たちが、夜行バスに乗って大阪までやってくる。
自分たちが立ちたかった、花園の舞台。肌を直接合わせたからこそわかる、川越東の強さ。心からのエールを、直接届けた。
オリジナルの応援ボード。男子高校生らしい仕上がり
埼玉県で花園を目指すということ。
平成3年、第70回大会では熊谷工業が全国優勝を果たしたが、直近で年越し叶ったのは第99回大会の浦和が最後だ。
「体をぶつけ合って戦ったライバルが、応援してくれること。花園まで来てくれること。本当に有難いことだと思います。」
そう話したのは、高尾将太キャプテン。開会式で埼玉県の優勝旗を掲げた意味を知った。
4人のキャプテンの来阪を事前に知らされておらず、客席を見て驚いたという石本選手も「激戦区埼玉で激しい戦いを繰り返してきたからこそ、通じるものがある。他校との関係はこれからも続けていきたい」と喜んだ。
大会中には、心強い助っ人も帯同する。
川越東が初めて花園に出場した第100回大会時のキャプテン、江田優太(現・立教大学ラグビー部3年)が、この花園では学生コーチとしてチームに携わる。
花園を知っている、少し上の先輩。細かなことでも相談できる良き相手であり、間違いなく花園初勝利の下支えとなった。
3代前の雪辱を晴らすような、セットプレー100%確保は見事だった
3年前は第3グラウンド。今年の1回戦は第2グラウンド。そしていよいよ2回戦で、初めて第1グラウンドで試合を行う。
「今日より観客も多いと思うし、緊張はしますが、とにかく自分たちが目指してきたラグビーをする、それだけです。相手どうこうではなく、自分たちがやりたいことをやる。それだけです。(高尾キャプテン)」
まずは初勝利。これで全国ベスト32。
だがここで終わるわけにはいかない。これが目標ではない。
悲願の年越し・ベスト16入りに向け、もう一度チームを作り上げる。
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「焦っていなかったし、(現役生にとっては)初めての花園とは思えない。いつも通りのカワトンで、強かったです。」
昌平、深谷、熊谷工業、熊谷の前キャプテンたちは、口を揃えエールを送ると、花園を後にした。
試合後コメント
望月雅之監督
全国は簡単じゃないな、と。リズムを掴んでゲームを支配していたにも関わらず、なかなか良いトライまで結びつかない、もどかしい時間が続いた。花園は簡単じゃない。
初勝利の嬉しさはあるが、でも彼らはここで満足するチームではない。選手たちと同じ気持ちだと思う。
(2回戦は)やるだけです。ここ(年越しを懸けた一戦)を目指してきたので、もう一回自分たちの課題を見つめて、それを実践できるようにしたい。
寺山公太キャプテン
3月末に『ネクストブレイク(山梨学院や大阪朝鮮らとの自主大会)』でこの地(花園第2グラウンド)で試合をして、自分たちの方が土地勘というアドバンテージがあると思っていたが、初めての花園でなかなかペースを掴みきれない所があった。
「なんかいけるかな」という空虚な自信もこの試合で取り除かれた。洗練された状態で練習に取り組める良い薬になった。終わってしまったことは仕方がない。目標である年越しまであと1勝、このチャンスをしっかり掴み獲りきりたい。
勝って反省できることは大きな意味がある。これまで培ってきた自信に、今日の反省点をしっかりと付け加えて修正して、光泉カトリックとの試合に臨みたい。