佐賀工業
「この試合で絶対に東福岡さんに勝つ、って決めていたんですけど。東福岡さんの壁はものすごく高くて。もっとやれたかな、って思います。出し切れなかった。」
チームを率いた13番・大和哲将キャプテンは、時折言葉を詰まらせながら涙を流した。
9番・井上達木選手は今大会、左手首に『聖』と記し試合にのぞんだ。
昨年は毎回異なる四字熟語を書いていたが、ここ最後の花園では、ずっと同じ漢字一文字を選び続けている。
聖は、父の名前からとった。
父を超えるため。そして、近くにお父さんがいる、と感じるため。
「スタンドからはもちろん、近くにも父の存在を感じました。」
父は佐賀工業高校時代、3回戦敗退。優勝を託された。
「試合前、父は泣きながら送り出してくれました。そこで気合いが入った。」
目標としていた父超えは叶った。だが、優勝は果たせず「申し訳ない」と一言。
「3年間、佐賀でラグビーをさせてくれて本当にありがとう。これからも上を目指して頑張ります。」
父に感謝した。
スタンドオフを務めたのは服部亮太選手。
東福岡
花園で成長速度を加速させる選手たちがいる。
そのうちの1人が、13番・村上有志選手。
高いワークレートで、この試合何度もゲインラインを切った。
「佐賀工業さんに勝てるよう準備をしっかりとしてきたので、良い結果が出ていると思います。」
勝因を説明した。
村上選手自身、佐賀工業には特別な思い入れがあった。
オール福岡として出場した、今年の佐賀国体。決勝戦で佐賀工業と対戦すると、自らのミスで失点を喫した。
「今日はその借りを返そう。」
奮闘ぶりは、しかとプレーに表れる。
前半3分、自らのトライでチームに流れを呼び込んだ。
佐賀工業とは、国体含め今季これが4度目の対戦。
毎回タイトなゲームになっていただけに、1番・沢田海盛選手は試合終盤まで相手をノートライに抑えられたことに安堵した。
「昨年も花園の舞台に立った人間として、ひたむきなタックルでチームを引っ張っていくことを意識しています。」
優勝して、母に金メダルをかけてあげたい。だから決勝戦では出し切ります、と宣言した。
No.8高比良恭介キャプテンは言う。
「目標の日本一、という所まできた。全員が日本一に向かって、同じ絵を見れている。メンバー30人だけでなく、サポートメンバー、メンバー外の応援が力になっています。選ばれた30人だけでなく、全員が日本一に向かっている。本当に良い雰囲気で、やりやすいです。」
スタンドには、メンバーに入れなかった多くの仲間が詰めかけ声援を送る。
「自分たちは東福岡の代表。しっかりと体を張って、きつい時にはスタンドを見て、力を借りよう。」
苦しい時、高比良キャプテンは仲間に声を掛けた。
残すは決勝戦、ただ一つ。
ジャージーを着る25人は、部員総数146名の代表。
全員の力で、頂上を掴み獲りにいく。
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