準決勝直前に流した涙。いざ、彩の60分へ|東福岡高校ラグビー部

優勝したい理由

1番・沢田海盛

沢田海盛。

セブンズではトライ後のコンバージョンゴールをドロップキックで蹴り込んだ、器用なプロップ。2年次には頭角を現し、試合に出場することも増えた。

いつも笑顔でピッチに立つ沢田選手。

今大会では、スタンドから声援を送ってくれる家族を見つけ、試合前に藤田監督と2人手を振っている。

「頑張って」といつも気遣ってくれるお母さんのため。

「優勝して、金メダルをお母さんにかけてあげたいです。」

必ずや、母に優勝メダルを捧げる。

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3番・茨木海斗

茨木海斗。

チーム随一の明るさを誇る、ムードメーカー。昨年3年生が主体だったチームの中で、スタートの3番を務めることも多かった。

だが最上級生になった今年、ある時期からメンバー表に名前が載らなくなる。

6月の全九州大会から、秋の福岡県予選まで。ラグビーをすることができなかった。

「今年はラグビーできない期間が長かった。花園の舞台に立てているだけで、僕は今とても嬉しいです。」

だから最後は、みんなと楽しんで。

ここまで戻ってくることのできた感謝の気持ちを伝えられるような60分間にしたい、と前を向いた。

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9番・利守晴

利守晴。

東福岡高校ラグビー部において、数少ない一般入試組。

福岡県屈指の公立進学校・福岡県立修猷館高校を目指したが、不合格。

修猷館に進むことができれば勉強を、東福岡に行くことになったらラグビーを頑張ろう、と決めていた。

だから3年間、東福岡でラグビーをとことん頑張った。

最初に手にしたチャンスは、2年生になったばかりの春。ゴールデンウィークに行われたサニックスワールドラグビーユース交流大会で、初めて公式戦出場を果たす。

21番をつけ、途中出場した2022年4月28日の石見智翠館戦。

No.8のポジションに入ったスクラムから自らでボールを持ち出し、ショートサイドをついてトライを挙げた。


初めてのグリーン(ファーストジャージーを与えられた者のこと)


公式戦初トライを決め、先輩たちから祝福を受ける利守選手(当時2年生)

今年の3年生は55人。そのうち一般入試組は5人。

「過去を振り返っても一般生で試合に出ている先輩はほとんどおらず、スタメンやリーダーを務める選手もあまりいませんでした」というが、利守選手が担う役職はバックスリーダー。

今では試合前ミーティングのほとんどを、自らがリードするまでになった。

相手のプレーを分析し、どこを攻めるか。オプションをA、B、Cと用意し、AがダメだったらB、と頭を回転させる。そしてそれを、仲間にへと共有する。

「意識していることは、理由を具体化すること。U17日本代表活動の中で学んだことでした。」

加えて『感覚の言語化』にも務める。パス1本、キック1本の違いを言語化することで、根拠をもった話し方ができるようになり、周囲も自身の話に耳を傾けてくれるようになった、と自信を持った。

東福岡のジャージーを着て戦う、最後の60分間。

目指すは日本一のスクラムハーフ。

相手は、ずっと意識してきた桐蔭学園。『ずっと』に力を込めた。

「(桐蔭学園のスクラムハーフ)渡邊晃樹くんも本当に上手い。最後戦えることを嬉しく思います。」

決勝戦を前に、憧れていた6代上の先輩たちからも連絡が入った。

丸山凜太朗選手(現・トヨタヴェルブリッツ)からは「決勝戦、観に行けないけど頑張れよ」とエールが届き、スクラムハーフの先輩・平尾剛士さんからは決勝戦を見に行くとメールが届いた。

「決勝戦舞台に立てること、そしてヒガシの9番をつけられることを誇りに思います。最後は自分たちがやってきたことに自信を持って、ヒガシの9番にプライドを持って、日本一を目指します。」

そして。

「監督が藤田先生になってから、連覇したことがありません。だから優勝して、2連覇を達成して、お世話になっている藤田先生を胴上げしたい。」

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12番・神拓実

神拓実。

昨年はスタンドオフでプレー。今年もスタンドオフとセンターを繰り返しながら、今大会ではセンターとしてグラウンドを走り回る。

「すごく楽しいです」と現在の心境を語った。

1年前の花園の舞台にも立ったが、僅か1試合の出場に留まる。

「もっと出たいと思いました。最後の花園優勝の笛を、グラウンドで聞きたいと思った。」

そのために努力した1年間。

60分間、楽しんでプレーします、と誓った。

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15番・隅田誠太郎

隅田誠太郎。

人工芝のグラウンドに枯葉が落ちていると、そっと拾ってグラウンドの外に持って行く選手。

選手たちでのミーティング中、全員が解像度を高められるような言葉をさりげなく補足する、今年のバイスキャプテンでもある。

毎日当たり前のように学校へ行って、寮に帰って、練習をして寮に戻って、を繰り返した3年間。それがあと1日しか残されていない、と考えたらすごく寂しいです、と紡いだ。

1・2年生の頃には「よく先生たちに怒られていました」と、やんちゃな一面をのぞかせる。「正直、監督・コーチのことが嫌いな時期もありました」と笑った。

だが3年生になり、ようやく「あの時言われたことの意味が分かるようになった」と話す。

「先生たちはずっと間違ったことを言っていなかった。だから、怒ってくれてありがとうと伝えたいです。」

日本一を獲るため、大阪から福岡にやってきた。

東福岡でラグビーができる、残された時間は60分間。

「日本一が手の届く所までやってきた。最後、やり切るしかない。東福岡で優勝したい。最後、みんなで笑って、全力で喜びたい。」

今年の夏は怪我のためラグビーができない日々が続いた。復帰したのは、秋口に差しかかった頃。

怪我でプレーできなかった3ヶ月の分まで。

「残りの1日を濃く。あと少しだけでも楽しみたい、充実した時間にしたい」と誓った。

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