僕たちは、60分間徹します|桐蔭学園高校ラグビー部

チームの始動は2022年11月まで遡る。

11月20日、神奈川県大会決勝で敗れると、その数時間後には学校のグラウンドに戻り選手たちは自主練習を始めた。

「もう終わったし、始まったから。」

言葉を発したのは、第58期主将を務めるNo.8城央祐選手。

全ては2024年1月7日に喜びの涙を流すため。自分たちで厳しい道のりを選択し、413日間を過ごしてきた。

無事今年の花園出場を決めると、藤原秀之監督は「花園初心者」という言葉を幾度も繰り返した。

そしてここ花園で、その言葉の意味を理解する。

スタンドに控えるノンメンバーたちの応援が、そこはかとないものだった。

コロナによって応援文化が途絶えた。

声を出しての応援が悪とされた時期を過ごした選手たち。桐蔭学園の応援は継承されず、今年の神奈川県大会決勝、スタンドは静かなままだった。

決して応援を禁止していたわけではない。

ただ、応援するという文化が今の選手たちにないだけ。

伊藤大祐(現・早稲田大学ラグビー蹴球部4年)が主将を務めた54期までは通常通りの応援ができていた。

だが佐藤健次(現・早稲田大学ラグビー蹴球部3年)が主将となった55期は、コロナ禍により無観客。じきに桐蔭学園の応援スタイルは引き継がれなくなり、今年の花園を迎える。

「白紙に戻った」と話すは福本剛コーチ。

生徒たちに、過去の映像を見返すよう声を掛けた。

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初戦となった12月30日の松山聖陵戦。第3グラウンドで行われたゲームで、初めて声を出して応援した。

初めては、やはり慣れない。恐る恐る響く声。

これでは、グラウンドで戦う選手たちの背中を押すことはできぬまい。

登録メンバーとは別行動をしているノンメンバーたちは、ここ花園での期間中、コーチ陣に直訴して応援練習の時間を作り出す。

試合を重ねるごとに大きくなり、そしてまとまりのある、こだまするような張りのある声が響くようになった。

「ようやく声が枯れてきたようです」と、福本コーチはかつて目にしてきたスタンドの姿と重ね合わせ、目を細める。

「これが桐蔭学園だよね。」

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桐蔭学園のスタイルを徹するのは、グラウンドに立つ15人だけではない。

スタンドから送る声援にも、決勝戦を目前に、徹する桐蔭学園らしさが宿った。


準決勝・大阪桐蔭戦、勝利した瞬間の桐蔭学園スタンドの姿

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