桐蔭学園
最も厳しい山組みを勝ち上がっての、ベスト4。
「4試合できて良かったです。一番強い近畿チャンピオンとできたことは、我々にとって有難いことでした。」
長崎北陽台、東海大大阪仰星、目黒学院、そして大阪桐蔭。
今年の全国選抜大会を振り返った藤原秀之監督は、そう切り出した。
この試合に関しては、収穫も反省も多かった。
収穫は、セットプレーでチャレンジしようという姿勢が見られたこと。
「多少なりともチャレンジしようと姿勢が見えたので。(モールでトライを)取れなかったですけど、良かったんじゃないですかね」といった。
反省点は、ゲームメイク力。
「点を取られるだろうな、という所で取られたので。PG2本の次はトライだろうな、と思ったら案の定、一番危ない時間帯に(トライを取られた)。ああいう所、分かってないな、って。(点数を)あげちゃいけない時間でしたね。」
「これだけやられてしまえば、勝つことはまずない」というスクラムも、大きな宿題。
今季のやるべきことリストが、できあがりつつある。
ゴールを目前にしたアタック時の判断も課題の一つ
基礎と個性の融合
関東新人大会ではスクラムハーフ。
2週間前にスタンドオフへとコンバートし、今大会は全試合で10番をつけ出場したのは、1年生の竹山史人選手だ。
藤原監督曰く「ボールは離れるし、スクラムハーフ的ないやらしさもある。飄々と先輩や我々スタッフ陣の言うことを流すこともできる。スタンドオフ向き」と勝ち気な性格を評しての抜擢だった。
桐蔭学園ではこれまでスクラムハーフを主ポジションとしてきたが、中学時代はワセダクラブでスタンドオフを務めた。
実はスクラムハーフ歴よりも、スタンドオフ歴の方が長い。
「桐蔭学園は基礎を徹底するチーム。基礎をプレーに出しながら、自分の持ち味と個性も出したい」と将来像を語る。
この日の対戦相手には、世代屈指のスタンドオフ・上田倭楓選手がいたが「そこまで意識しなかった。それよりも、自分たちはどういうラグビーをしたいか、をずっと考えていました。」
自分たちの軸を大切にするチームの一員らしい答えが返ってきた。
桐蔭学園で出場した、初めての全国大会。
「今日は個の差が出た。基礎に立ち返って、秋までに修正していきたいと思います。」
何を強くしなければならないか
風下だった前半を終え、6点のビハインド。
15番・古賀龍人選手はハーフタイム、バイスキャプテンとして仲間に声を掛けた。
「風下の中この点差で折り返せたんだから、後半は自分たちで陣地を取って、相手陣で体を当てていこう。」
その言葉どおり、後半は敵陣で戦うことも増えた。ボールを持ち、攻撃機会も多く得た。
だが、仕留め切ることはできなかった。
「神奈川県大会新人戦、そして関東新人大会からの課題が『取り切れない決定力のなさ』です。この大会でも、ゴール前に行った時、そして自分たちに流れが来た時にトライを取り切れないと強く感じました。これから、そういう場面でどうするのか、そのためには何を強くしなければならないか、と深くミーティングで話し合って、花園までに決定力を上げていきたいです。」
話し合い、納得し、何を行動に起こすべきか。
問い続ける道のりは、まだ始まったばかりだ。
去年のチームでできたことを、今年のチームでもできると思っていた
1ヵ月前、関東新人大会決勝で國學院栃木に敗れた。
この悔しさは、必ずや全国大会で晴らす。公式戦で勝ち切りたい、と全国選抜大会に乗り込んだのは、No.8新里堅志選手。今季のリーダー陣の1人でもある。
しかし、結果はベスト4。頂点には届かなかった。
「自分たちの力のなさを感じました。自分個人の力のなさも大きく実感しました。去年できていたことを、自分たちもできると思い込んでしまっていた。去年のチームでできたことを、今年のチームでもできると思っていたんだな、って。」
試合後、誰よりも大粒の涙をとめどなく零し続けた。
「自分も、(キャプテンの申)驥世も、古賀も。去年は周りに活かしてもらっていたのだと、実感しました。」
新チームがスタートして3か月。
昨年から主力だった「軸の選手」がチームを引っ張らなければいけない、と感じている。
だが、まだまだ足りない。
「驥世だったらボールキャリー、僕だったら運動量。古賀はトライを取り切る能力。一つひとつをそれぞれが見直して、どんなところでも、どんな状態でも発揮できる能力を身に着けていきたい」と言った。
スキルフルな申キャプテン。この日もいつもどおり、何度も体を当てた
スクラムでは大きな課題をもらう。
「練習でも、マイボールスクラムの時に1.5m押し切って自分たちが余裕のある状態でボールを出せていません。自分たちで考えることはもちろんですが、去年の先輩たちに頼ることも必要になってくると思います。去年のフロントローの先輩たちにしっかりと聞いて、1か月後のサニックスワールドユースにむけてより良いスクラムが組めるようにチャレンジしていきます。」
去年できていたことを、自分たちの形でもう一回、しっかりとできるように。
「1日1日、自分の限界を突破して。より自分の殻を大きく破っていきたいです。」
チャレンジの日々は、続いていく。