大阪桐蔭
坊主にしたるわ
全国選抜大会の開幕前、CTB名取凛之輔キャプテンは仲間に宣言した。
「決勝まで行ったら、坊主にしたるわ」
そして、実際に決勝の舞台にたどり着くと、有言実行。
決勝前日、刈り上げる。
「日本一になりたかった。気合い入れたいな、と思って。」
バリカンは、SH川端隆馬選手が握った。
5試合を通して、一番良い試合の入りができたゲーム。
「ボールを大きく動かすこと、FWで走り勝つ、という僕たちがの強みを一番出せた」と笑顔を見せる名取キャプテン。
前半最終盤、相手に流れがいきそうな自陣22m付近では「ずっと狙っていた」というジャッカルを決めた。
「石見智翠館は良き仲間、良きライバルだからこそ、負けられない相手。止められてよかった」と狙いを定めたプレーに、ガッツポーズを見せた。
キャプテンとして心掛けていることは、コミュニケーション。
グラウンド外でのコミュニケーションだけでなく、プレー時の連携、繋がりを大切にする。
「(昨年のキャプテン・林田)力くんがそうでした。キャプテンとして、仲間の気持ちを上げるために鼓舞して、みんなの調子を上げたい。」
試合中、左腕に巻くは大阪桐蔭のキャプテンを務める証。
代々受け継がれているリストバンドはゴムが伸びすぎてしまったため、2季前の松岡風翔・上田倭士共同キャプテンが新調したものを身に着ける。
全国王者から始まる、新チーム。
追われる立場となるが「桐蔭グラウンドに戻って、一つひとつ積み上げていきたい」と過信せず、チャレンジャーとして歩みを進める覚悟を誓った。
悔しさを乗り越えた自信
綾部正史監督は言った。
「後半最初の川端のトライで、自分たちの形を表現していけば最終的にスコアになる、ということが分かったんじゃないか」と。
そのトライとは、後半2分。
12番・名取キャプテンからボールを受け取り、SH川端隆馬選手が走り切ったものだった。
川端選手には、大阪桐蔭のスクラムハーフとして意識していることがある。
「僕たちはフィジカルが強いチーム。FWがテンポを作り、外が余ったら10番の(上田)イブキと喋って、バックスに展開する。」
この日の2トライ目も、その真骨頂となるトライだった。
「FW任せにならず、バックスもすぐにセットして。スペースあったら展開してトライに繋げることを、9番・10番で意識しています。」
川端選手はU17日本代表。実力は、折り紙付き。
昨季の花園では桐蔭学園を前に敗れ去ったが、その悔しさも肥やしとした。
「ぼくも名取も上田も、その悔しさを知っているから。3人が一番声を出して、準決勝の桐蔭学園戦を全力で戦って、勝つことができた。自信がつきました。」
前年度王者に勝ち切っての優勝が、何よりもの自信となった。
大阪桐蔭の10番であるために
良いFWがいて、良いバックスがいる今年の大阪桐蔭。
だからこそ「前半のはじめ、後半のはじめに大崩れだけしないように。しっかりエリアを取ること」を意識するは、スタンドオフの上田倭楓選手。
兄・倭士選手は2代前に、大阪桐蔭の共同キャプテンを務めていた。
気難しくラグビーはしない。
勝つことだけを考えてラグビーをする。
公式戦は、内容ではなく「点数で勝つことだけ」が目標。
そして苦しい場面になればなるほど「キックや、FWを当てる」基本プレーに立ち返ることを心掛ける。
この日は自身の右足で何度もチームを前に押し出し、10番としての役目を果たした上田選手。
まずは、今季1つ目の日本一を、チームにもたらした。
大阪桐蔭のNo.8として
バイスキャプテンを務めるは、8番・大門一心選手。
「今日は絶対に、ぼくたちが試合の入りで勝って、ファーストトライを取りに行くと決めていました。だから最初にトライが取れて良かったです」とほほ笑んだ。
この日何度も見せたビッグゲイン。
大阪桐蔭の歴代No.8のように、力強さを発揮した。
「すごい先輩たちの背中を追って、僕も早く追いつけるように日々努力していきます。」
今季掴んだ1冠目。
「とりあえず、めちゃくちゃ嬉しい」と大きな笑顔を見せた。